おもちゃ箱 第12話
記者、安藤満
深堂家に箱が送られてから2週間が経った。
奏と美琴は、ぎこちないながらも徐々に目を見て話が出来るようになってきた。
美琴は少しずつだが、事件についても話をしてくれるようになった。
美琴の話によると、家に突然帽子を目深に被った人が現れ、体にスタンガンのようなものを当てられたという。
そして気付いたら箱に全裸で入れられ、男がニヤリと笑っていた。
顔は暗かった上に帽子を被っており、口元しか見えなかったそうだ。
美琴には彩月同行のもと犯人の似顔絵作成に協力してもらったが、特に大した特徴もないため、捜査の役に立つのかどうかは微妙のようだ。
秀明からこの話を聞いたかなえは落胆していたが、それと同時に嬉しくもあった。
何故なら、美琴が少しずつだが人に心を開くようになったからだ。
最初会ったときは目すら合わせてくれなかったが、最近は徐々に笑顔を見せてくれるようになった。
か「(やっぱりあの子の影響かな)」
かなえはこの変化の原因に心当たりがあった。
美琴は彩月だけでなく、奏の側にいることが多くなった。
と言っても、机一つ分くらいの距離はあるのだが。
それでも毎日のように2人でよく話をしている。
奏はバイト先や大学での出来事を話し、美琴はそれを聞いている。
彩月はそんな美琴を見て驚いていた。
それはかなえも同じだった。
普段の奏なら、女性に優しくすることはあっても自分から話しかけることはなかった。
美琴という存在が、確実に奏に影響を与えていた。
それがかなえにはとても嬉しかった。
その日、かなえは1日中ニヤニヤが止まらなかったようで、職場の人間から不思議な目で見られていた。
ウーッ、ウーッ……。
その日、町中に警察のサイレンの音が鳴り響いた。
事件の現場は住宅街にある一軒家だった。
現場に来た秀明は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
秀明の目の前には、頭がぐちゃぐちゃになった女性の死体があった。
死体の入っていた木箱は血にまみれ、肉片が散らばっていた。
部屋にも血や肉片が飛び散っており、ことの異様さを物語っていた。
亡くなったのは嘉山葉子。
都内の高校に通っている。
木箱が送られたのは彼女の恋人の家だった。
しかし、本当の恋人ではない。
彼女は人の恋人を横取りしては体の関係をもち、それを周りに吹聴していたという。
他の捜査員が彼女の恋人から聞いた話では、恋人の自宅に宅配業者が来たという。
差出人は山田鈴木。
深堂家、そして今まで3件の家に木箱を送ってきたのと同じ人物である。
恋人が箱を開けると、全裸の嘉山葉子が箱に入っていた。
恋人は彼女を助けようと思い彼女を縛っている結束バンドを取ろうとして釣り糸のトラップに引っ掛かった。
日「(これで5件目か……)」
秀明は頭を抱えていた。
このままではさらに犠牲者が増える可能性がある。
いっそのこと事件を公表して、住民に注意喚起を促した方が良いのではないだろうか。
しかし、上の人間が了承してくれるとは思えない。
日「(と言っても、これ以上隠し続けるのは難しい)」
人の口に戸は立てられない。
これだけの異常な犯罪だ。
事件が明るみに出るのも時間の問題だろう。
日「……ハァ」
秀明は深いため息をついた。
