赤マント 第15話
親しい友人
玲穏の家を出て1時間。
翼たちは現在ファミレスにいた。
玲穏の知り合いである、都市伝説に詳しいという人に会うためだ。
翼はアイスコーヒーを飲みながら携帯を弄っていた。
玲穏はイチゴパフェを食べながらそんな翼を見ていた。
翼「……あった。音無、これ」
音「?」
翼は玲穏にある画像を見せた。
音「前に俊介が中学時代にクラスメイトだったやつの結婚式に参加したんだけど、その時に撮った集合写真」
新郎の横には笑顔の俊介が写っていた。
その横には姫愛がいた。
翼「それでこれが須藤大樹」
大樹は小さく笑っていた。
翼「この写真には『赤マント』に殺された人たちが皆写ってる」
写真には井上利樹や相川美沙希、そしてその前の犠牲者2人も写っていた。
音「……先生いないけど、行かなかったんだ」
翼「……そもそも招待されてない。友達いなかったからな」
音「そういえば、友達は刑事さんと雪嶋先生だけって言ってたもんね」
翼「あぁ」
音「2人とはどうやって友達になったの?」
翼「俊介が教室の隅っこで静かにしてた俺に話しかけて来たんだ。そっからかな。仲良くなったのは。ずっと一緒だったなぁ。何度もお互いの家にも泊まったりして。それは中学でも変わらなかった。姫愛はいつの間にか俊介と仲良くしてて、それで俺とも話すようになった」
音「あの刑事さん人気者だったんだ。良く仲良くなれたもんだ。陰キャな先生が」
翼「人気者、か……」
音「……先生?」
翼「あいつが俺や姫愛以外の人と話してるの、あんまり見たことないんだよね」
音「え?」
翼「話しかけられたり告白されたりはあったけど、直ぐに話題を切ったり告白もぜんぶ断ってた。多分、あんまり人付き合いが得意じゃなかったんだと思う。俺や姫愛と仲良くなったのは、ある意味どっちも変わってたから」
音「……先生はあの2人のことが良く分かってるんだね」
翼「……だと思ってたんだけどね」
音「……」
翼「今じゃあんまり自信ないよ」
翼はそう言うとアイスコーヒーに口を付けた。
音「先生……」
コンコン。
翼「?」
音「あ、来た」
お店の窓を叩いた人物は、玲穏と目が合うと小さく手を振った。
玲穏はそれに軽く手をあげて返した。
次にその人は俺に視線を移した。
その人は慌てたように小さくお辞儀した。
ガンッ。
おでこを窓にぶつけた。
翼「……」
翼は無意識に自分の額を手で摩っていた。
?「すいません。お待たせしてしまったみたいで」
玲穏の知り合いである女性は小走りで店の中に入り、翼たちの前に着くとそう言って謝罪した。
音「大丈夫。私たちも今来たところだから」
翼「……」
玲穏の側には、ほぼ中身のないパフェが置かれていた。
女性もそれに気づいているようで、チラチラとパフェを見ている。
?「そ、そうですか……」
翼「(女性がめっちゃ気を遣ってる。……にしても、音無もあんな笑顔を見せることがあるんだな)」
玲穏は女性に微笑みかけていた。
それは翼が見たことのない玲穏の一面だった。
翼はそんな玲穏を見て少し嬉しくなった。
ふと、女性と目が合った。
?「あ、えと、は、初めまして……」
女性は緊張した面持ちで会釈した。
翼「ど、どうも……」
翼も会釈で返した。
音「先生、彼女が私の知り合い、渡辺緋梨(わたなべ あかり)さん。緋梨さん。彼が七咲翼先生」
渡「あ、渡辺緋梨です。よろしくお願いいたします」
翼「七咲です。こちらこそよろしくお願いします」
音「緋梨さん。何か頼む?」
渡「あ、いえ、余り時間もないですから。急いで向かいましょう」
翼「あの、一体何処に……」
音「私が幼稚園の頃まで住んでた家。今は誰も住んでなくて空き家だって聞いた。お兄ちゃん、あそこの家が大好きだったから。でも、お父さんの仕事の都合で引っ越すことになっちゃって……」
そう語る玲穏の顔は少し暗かった。
翼「……」
翼は車に乗り込んだ。
助手席には玲穏、後部座席には緋梨を乗せ、目的の場所へ車を発進させた。
翼「なぁ、音無」
音「ん?」
翼「渡辺さんとはどういう知り合いなんだ? まさか学校の外に友達がいたとは先生驚きだぞ」
音「……何かスゴい馬鹿にしてない?」
翼「いや、学校での君を見てるとな。とても進んで友達を作るようなタイプではないだろう? だからちょっと気になったんだ」
音「……赤マントについて調べてる時に、たまたま掲示板を見つけたんだ。怪談好きな人たちが都市伝説とか怪奇現象について書き込みするやつなんだけど、そこでの彼女の書き込みがスゴい面白かったんだ。熱意がスゴい伝わるっていうか。説明も分かりやすかったし。『この人なら何か分かるかもしれない』。それで思いきって彼女の書き込みに返信したんだ。そっからかな。1週間くらい毎日やり取りして、初めて会ったのは2ヶ月くらい前。最初は会おうかどうか迷ったんだけど。どうしても真実を知りたかったから……」
翼「……」
音「でも、実際に会って驚いた。何か先生に似てたから」
翼「俺に?」
音「緋梨さんも異性と話すの苦手なんだ。先生もでしょ?」
翼「……何で知ってんだ」
音「倉野が言ってた。『女の人苦手なのに、毎回私の話を目を見て聞いてくれるんだ。あんな先生初めて』だって」
翼「……他には? 何処が似てるんだ?」
音「自分のことより人のことばっかり心配してる。お兄ちゃんのこと話したとき、泣きながら『私で良ければ力になります』って言ってくれたんだ」
翼「へぇ~……」
翼はバックミラー越しに緋梨を見た。
緋梨は話を聞いていないようで、地図を見ながら玲穏の家を探していた。
翼「……」
翼はそんな緋梨を見て微笑んだ。
