赤マント 第40話

小久貫邸

 その頃、小久貫邸にはマスコミが押し寄せていた。

 同級生でいじめっ子仲間だった繁が亡くなったことで、一真に注目が集まったのだ。

「この一連の事件の犯人は小久貫一真ではないか」

そんな噂が立っていた。


宗「おい、あのマスコミどもを何とかしろ!!」

秘「は、はい!! かしこまりました!!」

宗一郎の秘書は慌てて部屋を出ていった。

宗「全く!!」

宗一郎は乱暴に部屋のカーテンを閉めた。

小久貫宗一郎は苛立っていた。

自分のことだけならまだ我慢できた。

 しかし、息子の起こしたことまで世間に知られてしまった。

 優太の自殺の件では、早急に学校に圧力をかけたことで事なきを得た。

 しかし、その件が原因で殺人が起き、またこうして騒がれることとなった。

 さらには商店街の放火事件のことまで調べられている。

宗一郎はある意味崖っぷちだった。


宗「ハァ……」

宗一郎は頭を抱えた。

 今まで、息子の起こした問題は全て揉み消してきた。

いじめのことも、商店街の放火のことも。

全ては息子を立派な官僚にするためだ。

 だが、当の息子はそんな気持ちも露知らず、傍若無人に振る舞っていた。

今は『赤マント』に怯え部屋に籠っている。

宗「息子の育て方を間違えたかもしれんな……」

 宗一郎は締め切ったカーテンを見つめながらそう言った。

外ではマスコミの声がまだ聞こえていた。


『赤マント』は宗一郎に向け思い切り鎌を振り下ろした。


一「ふぁぁ~……」

一真は大きく欠伸をした。

部屋の中に籠って1週間。

やりたいことは全てやりきってしまった。

一真はこの生活に飽きていた。

 最初の頃は『赤マント』に怯え籠っていたが、今では『赤マント』に対する恐怖よりマスコミへ見つかるのが面倒だった。

一「誰かに変装道具でも買ってきてもらおうかなぁ」


一真は小さい頃から、父親からのプレッシャーを感じていた。

立派な官僚になること。

父の頭にはそれしかなかった。

 成長するにつれ、一真はそんな宗一郎の思いが邪魔になった。

 父への反抗心から、一真は悪さをするようになった。

 しかし、宗一郎は直ぐ様隠蔽し、まるで何も無かったかのように一真に接した。

それが一真には余計に苦痛に感じた。

優太が失踪した時、宗一郎は一真に言った。

『私に任せておけ』

 宗一郎は学校を辞めさせ、有名大学にコネで入学させた。

 大学生活は一真にとってつまらないものだった。

集まってくるのは金目当ての人間ばかり。

一真を楽しませてくれる人間はいなかった。

それは社会に出ても一緒だった。

一真はそんなイライラを発散したかった。

 いつも自分を除け者にする商店街の人間を困らせるために火を付けた。

しかし、思ったより火の回りが早く、あっという間に燃え広がった。

人が死んだことは後のニュースで知った。

 そして、その死んだ人物が葵衣の両親だと一真が気付くことはなかった。

 宗一郎は事実を隠蔽し、一真は何事も無かったかのように日々を過ごしていた。

 そして、つい最近までその事をすっかりと忘れていたのだった。


ブーッ。ブーッ。

一真の携帯が鳴った。

番号は知らないものだった。

一真は電話に出た。

一「もしもし?」

『……』

電話の主は何も答えない。

一「あれ? もしもし?」

ブツッ。

何も言わず電話は切れた。

一「チッ。何だよ」

見ると、携帯にメールが届いていた。

アドレスは知らないものだった。

一「何だ?」

 メールを開くと、動画ファイルが添付されているようだった。

一「?」

一真はファイルを開いた。

動画には、赤い絨毯が映し出された。

『カツッ……、カツッ……』

携帯越しに足音のようなものが聞こえる。

一「何だよこれ」

一真は動画を切ろうと指を伸ばした。

すると、動画の足音が止まった。

その画面には、血に濡れた手が映っていた。

一「あ?」

次にゆっくりと画面が動いた。

 映ったのは、目を見開いて倒れている男性の姿だった。

一「うわぁ!?」

一真は携帯を投げ捨てた。

一「な、何だ今の」

一真は恐る恐る携帯を開き、画面を見た。

そこには変わらず男性の死体が映っていた。

一「コイツって……」

一真はその男性に見覚えがあった。

 宗一郎の秘書で、先ほどマスコミ対応に向かった人だった。

一「!? このカーペットの色。もしかして……」

一真はベットから出てドアへ向かった。

一「……」

ガチャ。

一真はゆっくりとドアを開けた。


ドアを開けた一真は下を見た。

 そこには、先ほどの動画と同じカーペットが映っていた。

一「……」

 良く見ると、カーペットに赤黒い染みのようなものが付いていた。

一「まさか、血?」

その染みは点々と続いていた。

一「……」

 一真はその染みを追ってゆっくりと歩きだした。


歩いても歩いても染みは続いていた。

距離にしたら100mもない。

だが、一真にはとても長く感じられた。

一「何処まで続いてんだよ……」

見ると、その染みはリビングまで続いていた。

一「……」

一真は恐る恐るリビングへ向かった。


 リビングに入った一真は周りをキョロキョロと見た。

中には誰もいなかった。

一真は奥へ奥へと入っていく。

一「何で誰も居ないんだ? 父さんも家に居るはずなのに……」

周りを見るが宗一郎の姿はない。

それどころか人の気配すら感じなかった。

一「っ!?」

一真は足を止めた。

見ると、そこには血が広がっていた。

 死体はなかったが、その血の量は尋常ではなかった。

一「何だよこれ……」

一真は恐怖から後ずさった。


一「!?」

 ふと、後ろから気配を感じた一真は振り返った。

そこには『赤マント』が立っていた。

『赤マント』は躊躇いなく鎌を振り下ろした。


ザシュ。

ブシュー……。

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