おもちゃ箱 第21話

 奏は両親が使っていた部屋でベットに横になっていた。

奏「(桂子さん、ごめんなさい。俺のせいで)」

奏は自分のせいで桂子が死んだと思っていた。

自分に関わらなければ桂子は死なずにすんだ。

そう自分を責めていた。

奏は涙を堪えていた。


コンコン。

すると、部屋のドアがノックされた。

奏「ん?」

コンコン。

奏「っは~い」

奏は目元を袖で拭いて返事をした。

ガチャ。

入ってきたのは美琴だった。

奏「美琴ちゃん、どうかした?」

美琴はメモに文字を書いて奏に見せた。

美『お礼言うのを忘れていたので』

奏「お礼?」

再び美琴は文字を書いた。  

美『あのとき、私の命を救ってくれてありがとうございました』

美琴はメモにそう書いて頭を下げた。

奏「えっ? あ、いや、そんな気にしないで。たまたま上手くいっただけだから」

奏のその言葉に美琴は首を横に振った。

美『それでも、私は今こうして生きてます。お母さんに会えて、かなえさんや奏さんに会えて、毎日がちょっとだけ楽しいです。奏さんが助けてくれなかったら、私はこんな日々を送れなかったから』

奏「……」 

美『だから……ありがとうございます』

美琴はそう言って再び頭を下げた。

奏「……ハハッ」

美「……?」

奏「美琴ちゃんってスゲェな。……誰よりも辛い思いしてるはずなのに。誰かを勇気づけることが出来て」

美「……」

奏「こちらこそありがとうだよ。君のお陰で決意ができた」

美「?」

美琴は首を傾げた。

奏は決意を持って部屋を出た。


奏「姉ちゃん」

奏はかなえの元にやって来た。

か「奏、どうしたの?」

奏「俺、自分で事件について調べようと思う」

か「え!?」

かなえは奏の言葉に驚いた。

それは彩月も同じだった。

か「ちょっと奏、何言ってんの!?」

奏「だから、事件について調べたいって」

か「そうじゃなくて!! 急にどうしたの?」

奏「……桂子さんが殺されたのは俺のせいだ。だから、桂子さんのためにも事件を解決したい」

か「彼女が死んだのはあなたのせいじゃ……」

かなえが言い終わる前に奏は首を横に振った。

奏「犯人は俺に挑戦状としてオルゴールを送ってきた。だったらそれに乗るしかない。じゃないと、今度は秀平や姉ちゃんがターゲットになるかもしれない」

か「だからって、警察でもない貴方に捜査なんて……」

奏「……分かってる。けど、このまま何もせずにじっとなんてしてられないんだ」

か「……」

奏の言葉に、かなえは黙った。


か「……だったら」

奏「?」

か「……だったら、私も手伝う」

奏「はぁ!?」

かなえの言葉に、今度は奏が驚いた。

奏「ダメだよ!! 姉ちゃんを危険な目に遭わせるわけには……」

か「大事な弟が危険な目に遭う方が嫌!! ……私にとって奏は、たった1人の家族なんだから」

奏「……姉ちゃん」

奏はかなえの真剣な目に戸惑った。

奏「……日下さんには何て言うんだよ。日下さんに話さないわけにはいかないだろ」

か「そこは私が何とかするよ。秀明にも協力してもらった方が調べやすいし」

奏「……分かった。そこは姉ちゃんに任せるよ」

そう言うと2人は微笑えんだ。


彩「……あの」

突然彩月が声をかけた。

彩「私にも手伝わせていただけませんか?」

か「え!?」

彩「私も美琴を殺そうとした犯人を一刻も早く見つけたいんです!! お願いします!!」

彩月はそう言って頭を下げた。

かなえは奏を見た。

 その目は「どうする?」と問いかけているように見えた。

奏「……彩月さん」

奏は彩月の名前を呼んだ。

奏「あのサイトには彩月さんの名前が書いてありました。つまり、狙われていたのは彩月さんです。美琴ちゃんだけじゃなく、貴方が狙われる可能性も十分あります。そんな貴方を巻き込むわけにはいきません」

彩「……確かに私のせいで美琴は誘拐されました。けど、だからこそこのままジッとしてることなんて出来ないんです。美琴が守れるなら、私はどうなっても良いんです!! 私は……」

奏「貴方が良くても!!」

彩「!!」

彩月の言葉を遮って奏は大声を出した。

奏「……貴方が良くても、美琴ちゃんは良くないです。彼女のことを思うなら、自分の命を大切にしてください。……美琴ちゃんにとって、貴方はたった1人の家族なんだから」

彩「……」

彩月はその言葉を聞いて下を向いた。

か「(納得してくれたかな)」

かなえは奏を見た。

かなえは正直驚いていた。

 女性が苦手な奏が、彩月に対して感情的になって反論したことに。

か「(たった1人の家族……か)」

奏のあの言葉はかなえの胸にも刺さった。

 3年前に両親を亡くしてから、かなえにとって家族は奏だけだった。

奏にとってもそれは同じだろう。

 だからこそ「自分はどうなってもいい」という彩月の言葉に我慢できないものがあったのだろう。

奏の成長がかなえには嬉しかった。

 その後、奏はかなえと一緒に調べるべきことについて話し合った。


<秀明 side>

日「またか……」

 俺は警察署内で『Muddy guy』のサイトを見ていた。

 昨日サイトの閉鎖処置をしたはずなのだが、今日になってまた新しいサイトが立ち上がっていた。

これで5回目だ。

 サイトの所有者を特定しようとしているが、どうやら海外のサイトを使っているだけでなく、いくつもパソコンを使っているため、特定するのは難しいとのことだ。

 さらに、サイトに頻繁に書き込みをしている常連ユーザーが、似たようなサイトを立ち上げており、そちらの対処にも手を焼いている。

日「……はぁ~」

俺は大きなため息をついた。

日「ったく、どいつもこいつも」

ブーッ、ブーッ、……。

日「ん?」

携帯の着信が鳴った。

見ると、電話をしてきたのはかなえだった。

日「もしもし」

か『もしもし秀明? ごめんねいきなり。今電話大丈夫?』

日「あぁ、大丈夫だけど。どうかした?」

か『このあと会えない?』

日「?」


日「奏君と事件を捜査する!?」

 俺はかなえと近くの公園で待ち合わせをし、程なくして会うことができた。

すると、かなえが突然『奏とおもちゃ箱の事件を調べることにした』と言い出したのだ。

 俺は驚いて周りを気にせず大声を出してしまった。

日「急に何言い出してんの!?」

か「昨日、奏と話し合って決めたの。美琴ちゃんや彩月さんのために事件を早く解決しようって」

日「あのね、これは遊びじゃないんだぞ。殺人事件なんだ。素人が解決できるような事件じゃ無いんだよ?」

か「分かってるわよ。だから秀明を呼んだの」

日「……まさか、一緒に調べてくれなんて言うんじゃないだろうな」

か「その通り!! さすが秀明」

日「断る」

か「え~」

日「当たり前だろ。俺は刑事だぞ」

か「……ふ~ん。じゃあ秀明は私たちが勝手なことして危険な目に遭ってもいいんだ」

日「あ、いや、そもそもの話捜査しなければいいだけの話で……」

俺は戸惑いながらもそう言った。

か「……私たちが両親を亡くしたのは知ってるよね」

日「? あぁ」

か「私にとって奏はたった1人の家族。その家族が誰かのために一生懸命になろうとしてる。それを支えるのが私の役目」

日「……」

か「奏は何を言われても絶対にやるよ? あの子の決意は固いから」

彼女はそう言って真っ直ぐな目で俺を見た。

その目は決意に満ちていた。

日「……ハァ。全く」

俺は諦めるしかないようだった。

日「俺も仕事があるから、いつも一緒にってわけにはいかないからな。ただ、捜査については分かったことがあったら教えるよ」

か「秀明……」

日「でも、君も仕事があるだろう? さすがに奏君1人にやらせるわけには……」

か「大丈夫。『絶対に信頼できる親友に頼む』って言ってたから」

日「……事件に巻き込む人を増やさないでほしいんだが」

俺はさらに頭を悩ませた。

<秀明 side end>

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