赤マント 第42話
理由
翌日。
家に帰った翼は家の中の押し入れを漁っていた。
翼「……あった」
翼が見つけたのは中学時代の卒業アルバムだった。
翼は自分たちのクラスのページを見た。
翼「……やっぱり、似てる」
翼は姫愛の写真を見てそう呟いた。
翼は京都に行く前日、拓実に家族写真を見せてもらった。
優太のことをもっと知りたいと思ったからだ。
拓実は優太のことを色々と話してくれた。
その時の拓実の顔は、とても寂しそうに翼には見えた。
そんな中で見せてくれたのは、家族で遊園地に行った時の写真だった。
家族4人で楽しそうに笑っている。
この写真を最後に、家族は2度と写真を撮らなくなった。
優太は死に、母親は心を病み、父親は蒸発した。
この家族の未来はここで消えた。
翼はこの写真を見て複雑な気持ちになった。
それと同時に、翼はあることを思った。
翼「(翼のお母さん、誰かに似ているような……)」
翼の脳裏にはずっとその事が引っ掛かっていた。
しかし、卒業アルバムを見てその理由が分かった。
中学の頃の姫愛は何処と無く雰囲気が似ていたのだ、優太の母親に。
翼「……黒瀬は中学の頃、重ねてたのしれない。姫愛から母親の面影を……」
翼は『赤マント』が姫愛を殺さなかった理由はそこにあるのではないかと思った。
あの時の姫愛から母親の存在を感じ、それで彼女を殺せなかったのではないかと。
翼「もしそうなら、あいつには殺意以外の感情がある……」
翼はそうなら良いなと心の中で願った。
変化
<琢也 side>
『小久貫邸には現在、多くの警察車両がおり、厳戒態勢がしかれています』
アナウンサーの声がテレビから聞こえる。
俺はそれを携帯を弄りながら聞いていた。
SNSではその話題で盛り上がっていた。
『また赤マントが正義を執行した』
『赤マントスゲェ~』
『赤マント様~』
琢「くだらな……」
俺はこの反応に納得いかなかった。
人を殺して正義?
一体何を言っているんだ?
俺の頭では理解できなかった。
昔、父に言われたことがある。
『命の償いを命で返す。それは正義ではない。命が余計に減っていくだけ。償いとは生きていないと出来ない。償いとは生きることだ』
良く意味が分からなかったが、今なら何となく分かる気がする。
何故分かるのかと聞かれたら答えようがないが。
琢「……やっぱり血筋なのかなぁ」
俺は複雑な気持ちになった。
今朝、警察に匿名で写真が届いたらしい。
放火事件の当日、現場付近にいた小久貫一真の写真、そしてガソリンのようなものを担いだ小久貫の姿を見たという複数の住民の証言が録音されたボイスレコーダーが警察に贈られてきたと父が言っていた。
父によると、警察が本格的に小久貫邸の捜査に入るらしい。
彼らがやった悪事を明るみにすると。
きっと放火事件のことも明らかになり、工事は中止になるだろうと父は慌てふためいていた。
そんな父はそそくさと家を出た。
商店街の人たちと緊急の話し合いに行くらしい。
きっと父は素直に喜んではいないだろう。
商店街は守られても、放火事件は解決しても、彼らに罪を償わせることはもう出来ないのだから。
父はそういう人間だ。
琢「明日からまた学校か……」
俺はもう女遊びは止めようと心に決めていた。
父に感化されたのもあるが、小久貫一真という存在が俺の考えを変えた。
あの男のように父親の権力を使ってのしあがるような人間にはなりたくなかった。
自分の力で、自分の生きたい道に進みたい。
そう思った。
まだどの道に進むかは決まっていない。
だが、いつか父に自慢できるような道に進みたいと思う。
その為には、先ずは全てをリセットしないといけない。
女遊びもそのひとつだ。
琢「彼女たちにも謝らないとなぁ」
俺の心は少しだけ軽くなったような気がしていた。
<琢也side end>
