赤マント 第26話
大樹の想い
大樹は誰もいない公園のベンチに座っていた。
ここは滅多に人が来ないため「幽霊公園」と呼ばれている。
最初はたくさんいたマスコミも、今では見当たらない。
どうやら小久貫宗一郎の方に全員流れていったようで、危なげなく目的地に着くことが出来た。
大樹は腕時計を確認した。
大「後10分か……」
『赤マントの件でどうしても会って話したいことがある』
そうDMを貰った大樹は驚いた。
何故なら、その送り主の名前が『七咲翼』だったからだ。
大樹は翼と話をしたことがなかった。
正直、顔も最近まで思い出せなかった。
須「(……卯野崎から何か聞いたのか? だとしたら俺のことも聞いてるってことか)」
大樹は色々と考えた。
須「まぁ良いか、何でも。どうせ全部話す気だし。……にしても、今月は同級生に会ってばっかりだな」
大樹は天を仰いだ。
翼「須藤」
須「ん?」
大樹は声のする方に視線を向けた。
そこには翼が立っていた。
須「……もしかして、七咲か?」
翼「うん。久しぶりだね」
須「あぁ。……なんていうか、変わんないな、お前」
翼「ハハハ……」
翼は苦笑いを浮かべた。
須「……それで? 一体何を聞きたいんだ?」
翼「え!?」
須「何だよ。『赤マント』のことについて聞きに来たんだろ?」
翼「あ、うん。そうなんだけど。随分簡単に喋ってくれるんだなぁって」
須「……この数週間で何回と聞かれてきたからな。もう良いかなって思っただけさ。それに、俺は『赤マント』の正体なんて知らないからな」
翼「……でも、心当たりはあるんだよね? だから記者の人にも話さなかった」
須「……やっぱり卯野崎から聞いたんだな。10年前のこと。それとも雪嶋か?」
翼「どっちも違うよ。知り合いの探偵に調べてもらったんだ。……まさかとは思ったけど、やっぱりあの2人も関係あったんだね」
須「……」
翼「教えてくれない? 知ってること全部」
翼は真っ直ぐに大樹を見た。
須「ハァ……。んで? 一体何を知りたいんだ?」
大樹は翼と向き合った。
その目は何か決意に満ちているように見えた。
翼「10年前、黒瀬が居なくなった時のことを聞かせて?」
須「正直、居なくなった時のことは俺には分からない。皆が土産を買いに行ってる時、俺は街をブラブラしてた。俺にはお土産を渡すような相手はいないからな。戻ってきた時には既に黒瀬は居なくなってた」
須「居なくなった時に可笑しいとは思わなかったの?」
須「……正直、あの時はどうとも思わなかった。黒瀬のことだけじゃない。小久貫たちがやってたことも、滝藤たち教師のこともどうでも良かった。自分が面白いと思うことをただ探してた。まぁ、結局何も面白く感じなかったけどな」
翼「……」
須「……けど、店が有名になって、お客さんやファンの子達と触れ合っていくうちに、自分がどんだけクソみたいなことしてたのかって、そう思うようになった。朝起きる度に後悔するんだ。俺はこのまま生きていて良いのかなって」
翼「……」
須「自分勝手なことを言ってるのは分かってる。散々悪さしといて何言ってんだって。けど、今の俺にはそんぐらいしか出来ることがないんだ」
翼「須藤……」
白「上坂さん!!」
翼は後ろを振り向いた。
拓実がツカツカとこちらに歩いてきた。
その後ろには不安そうな顔をした葵衣がいた。
拓実の顔は怒りに満ちているように見えた。
翼「拓実……」
ガッ。
拓実は大樹の胸ぐらを掴んだ。
上「……何でだ」
須「あ?」
上「後悔してるなら、何で優太のことを公にしなかった!! どの記事にも載ってなかった。何処にも優太の名前は無かった!!」
須「……」
翼「……彼に会ったことあるよね」
須「あぁ。最近は会ってなかったけどな」
翼「拓実」
翼は拓実の肩を掴んだ。
上「っ……」
拓実は腕を離した。
須「……記事に載せたら、一真に揉み消される可能性があった。現に今出回ってる記事も徐々に見なくなってる。あいつが圧力をかけてるんだ。黒瀬のことは、絶対に揉み消しちゃいけない。そう思った」
翼「……」
大樹は拓実の目の前に立った。
須「……弟さんのこと、許して貰えるとは思ってません。けど……すいませんでした」
大樹は頭を下げた。
翼「須藤……」
拓実は静かに涙を流した。
大樹と翼はその後、近くの喫茶店で話をした。
拓実と葵衣は「後で話を聞く」と気を遣ってくれた。
大樹は色々なことを翼に話した。
茜に過去のことを全て話したこと、繁に脅されたこと、俊介がその話を録音していたこと。
翼は俊介の話を聞いて驚いた。
翼「まさか俊介が……」
須「今のあいつなら人だって殺しかねないと思う」
翼「……」
翼はその言葉にショックを受けた。
須「……なぁ、週刊誌の件なんだけどさ」
翼「ん?」
須「週刊誌には俺たちの経歴だけじゃなくて、どんな悪さをしたとか、どんな場所で遊んでたとか、いうことまで詳しく書いてあった」
翼「うん」
須「ちょっと報道関係に知り合いがいるんだけど。そいつの話では、各出版社や報道局に怪文書が届いたらしいんだ。それには俺たちの個人情報が書かれてたらしい。それも各々ちょっと内容が違ってたって」
翼「怪文書……」
須「俺たちに近い人物じゃないと、そんな芸当出来ないと思うんだけど……」
翼「……須藤は俊介がやったんじゃないかって思ってるんだね?」
須「……あぁ。少なくても、今のあいつならやりかねない」
翼「……」
翼は悩んだ。
翼「……良し。確かめよう」
須「本人に聞くつもりか? 素直に答えてくれるか?」
翼「いや、知り合いの探偵がいるんだ。その人に頼む。黒瀬のことも彼が調べてくれたんだ」
須「……それってもしかして、美濃部か?」
翼「知ってたの?」
須「やっぱりか。相川が店に来た時、バカにしたように喋ってたよ。他の奴らについてもな」
翼「相川に会ったんだね」
須「あぁ。って言ってもあいつが1人で喋ってただけだけどな。後、協力を頼まれた」
相「協力?」
須「あいつの店、政界の人も結構来るらしくてな。そこで小久貫宗一郎のヤバイ話をいくつか聞いたらしい。それを使って小久貫から金を脅し取ろうと思ったみたいでな。俺に『一緒にやらないか』って誘われたんだ」
翼「それで、誘いに乗ったの?」
須「まさか。あいつらに関わるのはごめんだ。だから断ったんだ。まぁ、それが最後の会話になっちまったけどな」
翼「そうなんだ……」
須「なぁ、俺にも会わせてくれないか。美濃部に」
翼「え?」
須「ちょっと頼みたいことがある」
