赤マント 第10話
襲撃
その頃、大樹は店からの帰り道を歩いていた。
新作の服のデザインのため店に残って構想を練っていた。
気付けば夜の21時を回っていた。
須「すっかり遅くなっちまった……」
大樹は最近店に残ることが多くなった。
家にいると急な虚無感に襲われ落ち着かなくなった。
あの赤マントの事件が起きてからだ。
須「ハァ……」
?「わ~い!!」
?「待て~!!」
?「コラ、走らないの!!」
大樹の前で子供2人がはしゃいでいた。
近くには買い物袋を持った母親が子供たちに注意していた。
?「そこまでだ怪獣め!!」
?「出たなウルトラマン!!」
子供たちはヒーローごっこを始めた。
須「ヒーローか……」
大樹は小さい頃、スーパーマンの映画を家族と見たことを思い出していた。
映画を見終わった後、父とスーパーマンごっこをして遊んだ。
母の赤いスカーフを借り、マントに見立てて遊んでいた。
須「ッ!?」
急に赤マントのことが思い浮かんだ。
SNSでは赤マントのイラストや写真が多く載せられていた。
それと同時に、利樹や美沙希の昔の悪評が出回った。
一部では赤マントを「悪者に天罰を与える神」だと言うものも現れている。
自分のことを知られるのも時間の問題だろうと大樹は不安だった。
大樹は不安を振り払うように頭を振った。
須「ふぅ……」
大樹は再び歩き出した。
バサッ。
須「……」
大樹は後ろを振り返った。
須「……気のせいか」
大樹は前を向いた。
目の前には、赤いマントを羽織った仮面の人物がいた。
須「!!」
スッ。
仮面の人物は赤いマントから鎌を取り出した。
大樹は後ずさった。
ブンッ。
赤マントは鎌を振り下ろした。
ガッ。
大樹は足がもつれ、後ろに倒れた。
鎌は大樹の顔の前を掠めた。
赤マントはもう一度鎌を上に挙げた。
須「ッ!?」
?「キャーッ!!」
後ろから女性の叫び声が聞こえた。
赤「……」
赤マントは後ろに数歩下がった。
そして振り返って走り去った。
須「ッハァ!! ……ハァ……ハァ……」
大樹は胸を撫で下ろした。
体からは汗が吹き出し手足が震えた。
大樹はしばらく立ち上がることが出来なかった。
部「動きませんね」
卯「……あぁ」
俊介は部下と一緒に繁の家を張り込んでいた。
卯「(クソ。今日は動かないか)」
俊介は焦りを感じていた。
ブーッ。ブーッ。
俊介の携帯が鳴った。
卯「もしもし」
俊介は電話に出た。
卯「!? …分かった」
部「どうしました?」
卯「……襲われた」
部「えっ?」
卯「……須藤大樹が赤マントに襲われた」
俊介は病院の廊下を走っていた。
看護師の注意する声が後ろから聞こえたが、俊介には聞こえていなかった。
卯「ハァ……ハァ……」
目的の場所には大樹が力なく座っていた。
彼の目の前には担当医師と看護師と見られる男女がいた。
卯「……警察の者です」
医「大した怪我はありませんでした。入院の必要もないでしょう」
卯「そうですか……」
医「では」
医師は去っていった。
卯「久しぶりだな」
須「……卯野崎か」
卯「あぁ」
須「本当に警察にいたんだな」
大樹は立ち上がった。
卯「早速なんだけど赤マントについて……」
須「店を出た帰り道に襲われた。暗かったし仮面被ってたから顔は見てない。それ以上言えることはない」
大樹は早口でそう言うと、俊介の横を通りすぎた。
卯「笠井繁!! 覚えてるか」
須「……」
卯「最近連絡取ったりしてるか?」
須「……いや」
卯「今まで殺された同級生とは」
須「相川は2ヶ月前に1度店に来たよ」
卯「何のようで」
須「ただ服を買いに来ただけだ」
卯「本当に?」
須「あぁ。……他に聞きたいことは?」
卯「……いや。何か思い出したことがあったら教えてくれ」
須「フッ。……全然変わらないな」
卯「え?」
須「スポーツ万能、成績優秀、女子からの人気も高い。それがお前だった」
卯「……」
須「けど必要以上に人と関わろうとはしない。お前が七咲と雪嶋以外のやつと喋ってるのなんてほとんど見たことない。お前にとってはあの2人以外はただの空気みたいなもんだったんだろ」
卯「っ……」
須「……何でお前みたいなのが刑事になったんだろうな」
大樹はそう言うと帰っていった。
卯「……」
俊介はそんな大樹の後ろ姿を見つめていた。
次の日。
翼は保健室で仕事をしていた。
隣では女子生徒たちが談笑していた。
女1「ねぇ聞いた? 昨日須藤大樹が『赤マント』に襲われたんだって!!」
女2「須藤大樹ってテレビで有名なあのイケメン店員でしょ?」
女3「私最近服買った!!」
翼「なぁお前ら」
女1「あ、ごめ~ん!! うるさかった?」
翼「いや、それはいいんだけど。須藤大樹が襲われたってやつ。それどこで聞いた?」
女2「?」
女1「昨日たまたま須藤大樹が襲われてるの見たって人がSNSで呟いてて今話題になってるんだよ。写真もあるし。……ほら!!」
携帯を見ると、確かに須藤大樹の姿と複数の警察官の写った写真が載せられていた。
翼「……」
女2「しっちー?」
女3「どうかしたの?」
翼「……いや(なんだ、この胸騒ぎは……)」
翼の胸には不安が広がっていた。
姫愛はその頃、職員室で携帯のニュースを見ていた。
『須藤大樹、赤マントに襲われる』
姫「(須藤君……)」
姫愛は不安だった。
もしかしたら自分のところにも来るのではないか。
姫「(もしかしたら俊介のところに……)」
姫愛は携帯を強く握りしめた。
?「……先生、雪嶋先生!」
姫「あ、はい!?」
?「大丈夫ですか? なんか怖い顔してますけど」
同僚の女性教師が声をかけてきた。
姫「あ、大丈夫です。全然」
姫愛は笑ってごまかした。
?「そうですか?」
女性教師は不審に思いながらもその場を離れた。
姫「……」
