赤マント 第13話
兄
ピンポーン。
週末、翼は玲穏の自宅を訪れていた。
翼と玲穏は仮にも教師と生徒の関係だ。
2人きりで会っているところを学校の誰かに見られたら、変な噂を立てられかねない。
そこで玲穏の自宅に来るように彼女に提案された。
翼「(余計ヤバイ気がするけど……。誰かに見られる可能性は低いか)」
翼は玲穏の提案を渋々了承した。
ガチャ。
音「……おはよう。先生」
翼「お早う……って言ってももうすぐ昼だけどな」
開いたドアから玲穏が顔を出した。
玲穏は上下スウェットで、髪がボサボサになっていた。
翼「お前……寝起きだな」
音「うん……」
翼「ハァ……。お前はどこでもマイペースだな」
音「……入って」
玲穏は翼を家の中に入れた。
玲穏の家の中はそこら辺の家と変わらない3LDKの家だった。
ただ、翼には気になることがあった。
翼「(家族写真が……1枚もない)」
壁や棚に写真が1枚も飾られていなかった。
音「先生、こっち」
玲穏の部屋は2階だった。
彼女の部屋には今時の女子高生のような派手な物は置かれていなかった。
音「はい」
玲穏は翼にDVDを渡した。
翼「口裂け女?」
それはホラー映画のDVDだった。
音「私風呂入って化粧してくるから、それまでこれでも見て待ってて?」
翼「お前、先に準備しとけよ……」
音「先生にはあんまり気遣わなくていいから……。出来るだけ早くするから」
玲穏はそう言うと部屋を出ていった。
剣「ハァ……」
翼は仕方なく、机に置かれたDVDプレーヤーポータブルを開きディスクに入れた。
しばらくすると映画が始まった。
翼は自分の鞄からイヤホンを探した。
しかし、生憎今日は家に忘れてしまったようだ、
翼はボリュームを下げ画面に再び目を落とした。
翼「……」
翼「……終わった」
翼は映画を見終わった。
1時間以上経っているが、玲穏はまだ帰ってきていなかった。
翼「まだか……」
翼はプレーヤーを閉じ部屋の中を見回した。
1階には無かったが、玲穏の部屋には写真が飾ってあった。
家族写真の玲穏は笑っていた。
翼「(あいつもこんな顔するんだな。まぁ、家族写真なんだから当然っちゃ当然なんだが)」
翼は1枚の写真を手に取った。
その写真には玲穏と1人の男性が写っていた。
玲穏は男性の腕に手を回して笑顔を浮かべていた。
翼「恋人……じゃないな」
ガチャ。
玲穏が部屋に戻って来た。
翼「……随分かかったな」
音「ごめん。ちょっとやる気を出すのに時間がかかっちゃって」
翼「そうか……」
翼は写真を置いた。
音「……その人、私のお兄ちゃんなんだ」
翼「……」
音「お兄ちゃんといると毎日が楽しかった。お兄ちゃんがいるだけで幸せだった」
翼「……」
音「……けど死んじゃった」
翼「確か、癌だって言ってたよな」
音「うん。私が小学3年生くらいの時に癌だって分かって。それから2年もしないうちに……」
翼「……」
音「それから家族は変わった。お母さんはあんまり笑わなくなった。お父さんは離婚してどっか行っちゃって。私は……」
翼「けど君とは話をしてるんだろ?」
音「うん。でも愛想笑いばっかり。……お母さんが本当に笑ってるの、最近見てないな……」
翼「……それは音無も一緒じゃないのか?」
音「そう……だね。うん」
翼「なぁ、音無」
音「うん?」
翼「お前『赤マント』について何か知ってるんじゃないのか? ……だがらわざわざ俺を呼んで『赤マント』のことを調べようとしてる。違うか?」
音「……前に保健室で言ったよね? 『私は信じてる』って」
翼「あぁ」
音「……私、会ったことがあるんだ。小さい頃『赤マント』に」
翼「え……」
