おもちゃ箱 第13話
翌日、秀明の元に衝撃の話が飛び込んできた。
昨日の嘉山葉子の事件が新聞に載っていたのだ。
?「日下さん!!」
朝早く署に訪れた秀明は、部下に声をかけられた。
?「これを見てください!!」
部下はそう言って、事件記事の載った新聞を見せてきた。
日「あぁ、さっき見たよ」
?「どうやら出所はこの週刊誌みたいです」
そう言って今度は週刊誌を見せてきた。
『週刊日本』
主に殺人や強盗といった事件をネタに書いている会社である。
その週刊誌には、新聞に書かれているのとは違い、爆弾がタイマー式であることや、釣糸のトラップのことまで細かく書かれていた。
秀明は記事に書かれている編集者の名前を見て驚いた。
その人物は安藤満(あんどう みつる)。
昨日遺体となった嘉山葉子の第一発見者であり、彼女の恋人だった男であった。
秀明は早速、満が勤めている会社、週刊日本に来ていた。
編「安藤ですか? 今はちょっと取材に行ってますよ。多分もうすぐ帰ってくると思いますけど……」
秀明は編集長と話していた。
日「この雑誌についてお話を伺いに来たんですが」
そう言って秀明は記事を見せた。
編「あぁ、これですか。昨日安藤が酷く汗をかいてここに駆け込んで来たんですよ。『超スクープだ!!』って言ってね。それで写真まで見せてきて」
日「写真?」
編「遺体の写真ですよ。あれを見た時は気分が悪くなりましたよ。さすがにあの写真を載せるわけにはいかないんで、内容と家の写真をちょっとだけ載せることにしたんです。締め切りギリギリだったんで苦労しました」
日「事件が起きてその日の内に写真を持ってきたのか……」
安「アイツ最近、スクープが撮れなくて可笑しくなってたんですよ。あの写真を持ってきたときのアイツの顔、ヤバかったですよ。まるで自分が殺したみたいな感じでした」
自分が殺した。
それはあながち間違いではなかった。
彼がトラップに引っ掛かったことで、彼女は死ぬことになったのだから。
編「あ、帰ってきましたよ」
そう言った編集長の見ている方向に目を向けると、1人の男性が立っていた。
肩にはカメラをぶら下げ、酷くイキイキとした表情をしていた。
編「お~い、安藤」
編集長に呼ばれた男はこちらに向かってきた。
安「なんですか? 編集長」
編「こちら、警察の方だ。あの週刊誌の件で話があるそうだ」
日「どうも、日下と言います」
安「あ、どうも」
編集長はいつの間にかいなくなっていた。
日「早速なんですが、この記事について聞かせていただけますか?」
安「警察の方に事件のことについて話した後、大急ぎでここに来て記事を書き上げたんですよ。写真とかも撮ってあるんで、ご覧になります?」
日「……それはまたあとで。それよりも、何故こんな記事を書いたのか理由をお聞かせ願いますか?」
安「何故って……。僕は駆け出しとはいえ記者です。目の前でスクープが起きたらシャッターを切るに決まってるじゃないですか」
日「亡くなったのが自分の恋人でも?」
安「恋人と言っても体の関係です。愛情なんて微塵もない。それはあっちだっておんなじですよ」
日「……」
秀明は込み上げる怒りをグッと堪えていた。
安「それよりも聞きましたよ。葉子の他にも同じような犠牲者が出ているらしいじゃないですか」
日「えぇ」
安「こんな被害が出てて今までそれを隠してたなんて問題じゃないですか?」
日「それに関しては謝罪会見がありますので。……それでは」
秀明はそう言って帰ろうとした。
日「……あ、現場で撮った写真、後で警察に提出していただきますのでよろしくお願いしますね」
秀明は安藤に皮肉を込めた笑顔を向けて去っていった。
