おもちゃ箱 第19話

<奏 side>

奏「桂子さん来てないな……」 

 講義終わりにバイトに訪れた俺は、妙な胸騒ぎを覚えていた。

2日前から桂子さんがカフェに来なくなった。

 店長の話では、携帯に連絡をしても返事がないという。

2日前までは元気にしていたというが。

 仕事が終わったら、店長が彼女の家に様子を見に行くと言っていた。

奏「何もなければいいけどな……」


チリンチリ~ン。

?「すいませ~ん」

店「は~い」

お店に入ってきたのは宅配業者の人だった。

?「あの、宅配物を届けに来たんですけど……」

店「宅配? うちに?」

宅「はい。深堂奏さん宛に」

奏「え!?」

なんと、宅配便は俺宛のものだった。

 見ると、確かに俺の名前が書かれていたが、住所は家ではなくお店の住所になっていた。

 しかも良く見ると、送り主の名前は『おもちゃ箱』なる木箱を家に送ってきた「山田鈴木」だった。

奏「なんでここに……」

サイズからして木箱ではなかった。

しかし、爆弾ではないという保証はなかった。

 俺はガムテープをゆっくりと剥がし、慎重に箱を開けていく。

ドクン、ドクン、ドクン……。

心臓が激しく波打つのが伝わってくる。

 手が震え、身体中から汗が吹き出して来るのが分かる。

 僅か1、2分のこの行動が何時間にも感じられた。
 
俺は恐る恐る、箱の中身を確認した。


奏「……え?」

俺は中身を見て驚いた。

 中には、オルゴールとメッセージカードが入っていた。

俺はまず、メッセージカードを見た。

『深堂奏君へ。

この前のプレゼントは気に入ってくれたかな?

 今度は少し違ったプレゼントを送ることにしたよ。

 君にはこのプレゼントの意味が理解できるかな?』 

メッセージカードにはそう書かれていた。


 不思議に思いながら、俺は今度はオルゴールを手に取った。 

 オルゴールの外観を確認し、次にオルゴールの蓋を開けた。

すると、音楽が流れてきた。

奏「この曲は……おもちゃのチャチャチャ?」

それは幼稚園で良く歌った曲だった。

 懐かしいはずのその曲も、今の状況ではおぞましいものに聴こえた。

奏「一体、何を伝えようとしてるんだ?」


 俺はとにかく、この事を日下さんに伝えようと自分の携帯を取りに更衣室へ向かった。

 ロッカーを開いて携帯を取り出してみると、着信があったようだった。

奏「え? 日下さん?」

 電話の相手は、今電話をしようとしていた日下さんからだった。

俺は直ぐに日下さんに電話をした。

日『もしもし、奏君?』

奏「日下さん、どうかしたんですか?」

日『奏君、神田桂子って人知ってるかい?』

奏「えっ……」

 俺は日下さんから桂子さんの名前が出たことに驚いた。

奏「知ってます。今働いているバイト先の先輩です」

日『そうか……』

奏「…あの、桂子さんがどうかしたんですか?」

日『……昨日の夜、亡くなったんだ』

奏「えっ!? 亡く……なった?」

日『犯人は…山田鈴木。君に箱を送ってきたのと同じやつだ』

また山田鈴木。

でも、どうして桂子さんなんだ?

なんで……。

 そのとき、俺の中で時東先生に言われたことが頭を世切った。


(回想)
時「もしかしたら、犯人は君のことを知っているのかもしれないね」

奏「俺のことを?」

時「あぁ。それで何らかのメッセージを込めて君に箱を送った。どういう意味があるのかは残念ながら僕にも分からない」

(回想終了)


俺へのメッセージのために、桂子さんが殺された?

俺のせいで?

日『奏君? 奏君聞いてるか?』

奏「……日下さん、俺のバイト先のカフェに今すぐ来てくれませんか?」

日『え?』

奏「場所、知ってますよね」

日『あ、あぁ。知ってるけど……』

奏「……山田鈴木から荷物が送られてきました」

日『なっ!?』

奏「大丈夫です。中身は爆弾じゃなかったので」

日『爆弾じゃない? じゃあ一体何が……』

奏「とにかく、急いでこちらに来ていただけますか? それから色々と説明します」

日『……分かった。出来るだけ荷物には触れないように。良いね?』

奏「……はい」

そう言って日下さんは電話を切った。

俺はその場に膝をつき、頭を抱えた。

奏「……ウアァァァァァ!!」

俺の叫びは更衣室で寂しく響いていた。


<奏 side end>

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