赤マント 第2話
女1「ねぇ!! 見た昨日のニュース!!」
女2「ニュースって『赤マント』のやつ?」
女3「見た見た!! これで3人目だって!! 怖いよね~」
教室内はザワついていた。
ガララ。
?「は~い、皆席ついて~」
女1「あっ!! 姫ちゃん!!」
教室に入ってきたのは、担任の雪嶋姫愛(ゆきしま ひより)。
可愛さがあり、誰にでも笑顔で接し、男女問わず人気がある女性である。
女1「姫ちゃん聞いた!?『赤マント』の話!!」
姫「赤マントってあの都市伝説の?」
女3「そっ!! 3人目の犠牲者が出たんだって!!」
女1「現場近くで度々目撃されてるんだって!! 赤いマントに赤い帽子被った仮面の人が!!」
女3「『赤マントが出た!!』ってこの辺じゃ騒ぎになってるんだよ? ヤバくない!?」
姫「もう、何言ってるの。赤マントなんて居るわけないじゃない。きっとどこかの変質者よ」
女1、3「え~」
姫「ほら!! 早く席着いて。授業始めるよ」
姫愛がそう言うと、女子たちは渋々自分の席に戻った。
姫「(赤マントかぁ……。まだそんな変な都市伝説が広まってるんだ。)」
姫愛はそんなことを思いながら、ゆっくりと教科書を開いた。
パラッ……。
その頃、玲穏は保健室でゆっくり本を読んでいた。
内容は世の中の都市伝説に着いて書かれたものだ。
玲穏はこういった話を良く読んでいる。
窓の外を見ると、昼休みということもありたくさんの生徒が身体を動かしたりしていた。
音「……」
ガララ。
?「玲穏~。遊びに来たよ~」
音「……ハァ」
玲穏は小さく息を吐いた。
入ってきたのは、玲穏と同じクラスメイトの倉野美南子(くらの みなこ)だった。
美南子も玲穏と同じ自傷癖があり、たまに保健室に通っている。
美「何読んでるの?」
音「……」
玲穏は黙って本の表紙を見せた。
美「……それ面白い?」
音「あなたと話してるより面白い」
美「もう~、つれないなぁ~」
美南子はそう言いながら近くの椅子に腰かけた。
笑顔で玲穏を見ている。
音「……気が散るんだけど」
美「私のことは気にしないで。静かにしてるから」
音「……ハァ」
玲穏はため息をつくと再び本に目を落とした。
30分後、翼が帰ってくるまでこの状態が続いていた。
幼馴染みの警察官
学校終わり、翼は近くの居酒屋に来ていた。
?「翼!! こっちこっち!!」
翼「悪い。待たせちゃって」
?「大丈夫大丈夫。仕事柄待つのは慣れてるから」
彼を笑顔で出迎えたのは、小学校からの幼馴染みである卯野崎俊介(うのざき しゅんすけ)だった。
翼、卯「かんぱ~い!!」
2人はビールをグッと飲んで乾いた喉を潤した。
卯「プハ~ッ!! うめぇ!! ……んで、どうよ最近仕事の方は?」
翼「実家に久しぶりに帰った息子にするみたいな質問だな。……まぁ、忙しいよやっぱり。最近は不登校になるやつが増えてってるから」
卯「不登校ねぇ……。俺たちの頃は学校に行くのが楽しみで仕方なかったけどなぁ」
翼「今は学校も親も煩いからね。学校が煩わしくなる気持ちもちょっと分かる気がする」
卯「……そんなもんかねぇ」
2人はしんみりしながらビールに口をつけた。
翼「そっちはどうなの。俺より忙しいんじゃない?」
卯「まぁ、急がしいっちゃ忙しいけど……」
俊介は捜査一課の刑事をしている。
署内では「イケメン刑事」として女性に大人気である。
卯「なぁ翼。井上利樹(いのうえ としき)って覚えてるか?」
翼「井上利樹って中学の時の? もちろん覚えてるけど……」
井上利樹。
翼たちが中学の頃のクラスメイトである。
いじめっこグループの1人であり、悪ガキとして有名であった。
卯「……昨日、変死体で見つかったんだ。殺人だ。鋭利な刃物で首を横一文字に切られてた」
翼「え……」
卯「……それに、井上じゃないんだ。中学の頃にアイツとつるんでたいじめっこグループの仲間が2人殺されてる。しかも同じ手口で。一課じゃ同一犯の犯行として捜査してる」
翼「同じ犯人……」
卯「……それで昔の同級生に話を聞いてるんだ」
翼「なるほど。それで俺を呼んだわけか」
卯「いや、そういう訳じゃないんだ。お前が犯人なんて思ってないし。ただお前に聞きたいことがあって……」
翼「アリバイとかなら、俺一人暮らしだし皆より早めに仕事あがるから証明できる人いないけど……」
卯「あ、犯行時刻は21時過ぎの犯行だからほとんどの人がアリバイがない状態なんだけど。聞きたいのはそこじゃないんだ」
翼「?」
卯「上坂拓実(かみさか たくみ)の居場所について聞きたいんだ」
翼「拓実の?」
俊介が訪ねたのは上坂拓実の居場所についてだった。
拓実は教育実習生時代、翼と一緒に実習生として働いていた人物である。
翼「何で拓実の、っていうか何で俺が拓実の知り合いだって……」
卯「彼の部屋に実習生の時の写真があった。それにお前も写ってた」
翼「……そういえば実習最後の日に一緒に写真撮ったな」
卯「井上が殺される2日前、彼は井上とファミレスで会ってるんだ。店員の話では揉めていたらしい。何が理由かは分からないが、スゴい剣幕だったと言ってた。そこからの彼の足取りが掴めないんだ」
翼「揉めてた……。あの拓実が」
拓実は実習中、常に笑顔を絶やさなかった。
授業が終わったあとでも生徒に積極的に関わり、授業も上手かった。
実習中の彼の人気は凄まじいものだった。
誰かと揉める姿を、翼は想像できなかった。
卯「……それで、どう?」
翼「……ごめん。実習が終わったあと何回か会ったことはあるんだけど、1年前から仕事が忙しくなって、それ以来お互い連絡も取ってないんだ」
卯「そっか……」
翼「学校は? 社会科担当してるって聞いたけど」
卯「数ヵ月前に退職してる」
翼「退職……」
翼は拓実の笑った顔を思い出していた。
翼「(あんなに好きだった教師の仕事まで辞めるなんて……。何があったんだ)」
上坂拓実
その夜。
拓「……」
上坂拓実は暗い部屋で1人立ち尽くしていた。
彼は小学生の頃に住んでいた一軒家に居座っていた。
現在は空き家となっており、周りも閑散としていた。
拓「……」
拓実は目を閉じ、昔を思い出していた。
思い出されるのは高校生の頃の自分。
母親と父親、そして弟との楽しい生活。
高校に入学したばかりの頃、弟がお年玉を使って買ってくれたボールペン。
とっくにインクは出なくなったが、今でも肌身離さず持ち歩いている。
拓「……」
拓実は昔自分が使っていた部屋に向かった。
ガチャ。
扉を開けると、そこには写真が当たり一面に貼り付けられていた。
拓「……」
拓実は手に持っていたボールペンを握り締めた。
その目は復讐に燃えていた。
