おもちゃ箱 第6話
同居
<奏 side>
一体何がどうなってる。
なぜ彼女がここに。
彼女は病院に入院しているはず。
奏「……まさか、姉ちゃんか?」
前に一度、自分が受け持っていた患者を家に連れて来たことがあった。
しかし、それは既に治療の終わった人間だった。
彼女の治療が終わったとはとても思えない。
か「あれ? 奏帰ってたんだ。お帰り」
俺が驚いていると、後ろから姉ちゃんの声が聞こえた。
風呂から上がったばかりだからか、姉ちゃんの体からは湯気が出ていた。
俺は寝ている彼女を指差し、口をパクパクさせていた。
か「あぁ、彼女? 実はね。しばらく彼女をここで預かることにしたの」
奏「……は?」
預かる?
彼女を?
つまり、ここで生活するってこと?
俺は姉ちゃんに近づき小声で話しかけた。
奏「預かるってなんだよ。彼女入院してるんじゃなかったのか!?」
か「体の方はたいした怪我はないの。……ただ心のほうがね。最初は何を聞いても話どころか目を合わせてもくれなかったんだけど、何の気なしに奏の話をしたらね、ちょっとだけ反応してくれたの」
奏「え!?」
俺は彼女の方を見た。
彼女は未だ規則正しい寝息を立てながら眠っていた。
か「それで奏と一緒にいたら色々話してくれるんじゃないかなぁと思って、病院に無理行って連れてきたの」
奏「……よくそんな無茶通ったな。ていうか日下さんには言ってあるの?」
か「もちろん。ちゃんと承諾もらってるよ」
奏「何で承諾しちゃうんだよ.…..」
俺はその場に座りこんだ。
か「大丈夫だよ。私もついてるし、秀明だってたまに様子見に来てくれるっていうし」
奏「……」
か「彼女のこと、放っておくわけにもいかないでしょ?」
結局、俺は姉ちゃんに反論することができなかった。
奏「(女の人と同居……)ハァ……」
最悪だ。
女性が苦手な俺にとって、一緒に食事をすることさえ苦痛だ。
それが一緒に生活なんて……。
奏「……ハァ」
俺は何度目になるか分からないため息を吐いた。
スッ。
寝ていた彼女が眠い目を擦り起きてきた。
俺は思わずビクッと驚いてしまった。
か「あっ。起きた?」
晩御飯を作っていた姉ちゃんが近寄ってきた。
彼女は辺りをキョロキョロと見回している。
か「ここ私の家。貴方私と一緒にここに来てすぐ寝ちゃったんだけど、覚えてない?」
彼女は僕に気付くと少し驚いた後、怯えた顔でずっと僕を見つめていた。
か「あ、これが貴方に話した弟の奏。貴方を助けた男の子何だけど、覚えてない?」
奏「これっていうなよ。……ど、どうも」
俺はそう言って彼女に頭を下げた。
彼女は何も話さない。
か「さっき車の中で話したと思うけど、貴方には今日からここで生活してもらうことになるの。大丈夫、住んでるのは私とこの子だけだから。この子見た目以上に人畜無害だから。一生結婚できないんじゃないかって心配になるくらい」
奏「姉ちゃ~ん。余計なこと言わなくて良いんだよ~」
?「……」
奏、か「……」
彼女は姉ちゃんのジョークにも反応を示さない。
奏「(これは……)」
か「(困ったね……)」
すると、彼女は再びキョロキョロと辺りを見出した。
何かを探しているようだ。
彼女は突然立ち上がり、歩き出した。
か「どうしたんだろう?」
どうやら、彼女は棚に置いてあったメモ帳に何かを書き込んでいるようだった。
書き終えた彼女は僕に近づき、震える手で恐る恐るメモを差し出してきた。
奏「俺に?」
彼女はゆっくりと頷いた。
僕はメモを受け取り、書いてある内容を読んだ。
?『ごめんなさい。私声が出せないんです』
