おもちゃ箱 第16話
時「……なるほど。それは大変な目に遭ったね」
黒「本当だぜ。よく生きてたな。俺だったら絶対無理だわ」
奏「だろうな」
黒「おい!?」
奏は、今までの事件の経緯を聖陽に話した。
聖陽は聞いたことを手帳に書き留め、何やら考えている。
時「今までの話をまとめると、犯人は自己顕示欲が非常に強い人物のようだね。そして、女性を下に見ていて、自分に服従させたいと思っている」
奏「……」
時「木箱に入れているのには、箱というものにこだわりがあるのかもしれない」
黒「なるほどなるほど……」
時「過去に女性にひどい屈辱を受けたことがあるとか、今の生活に不満がある。この生活から解放されたい。それを木箱に女性を押し込めることで晴らしているのかもしれないね」
黒「へぇ~。さすが心理学の先生。スゴい!! なっ!!」
奏「……あぁ」
時「何か気になることでもあるのかい?」
奏「はい。今までの反抗は、被害者と少なからず関わりのある人物の元に箱を送っていました。けど、俺は美琴ちゃんとも彩月さんとも会ったことが1度もないんです。なんで犯人は俺に箱を送りつけてきたんでしょうか」
黒「う~ん。単なる偶然じゃねぇの?」
奏「……」
時「もしかしたら、犯人は君のことを知っているのかもしれないね」
奏「俺のことを?」
時「あぁ。それで何らかのメッセージを込めて君に箱を送った。どういう意味があるのかは残念ながら僕にも分からない」
奏「箱を送った意味……」
時「悪いね。こんな診断しか出来なくて」
奏「いえ……」
時「かなえ君なら何か新しいものを見つけられるかもしれないね」
奏「姉ちゃんか……(……期待できそうにないな)」
かなえは今、美琴のカウンセリングと彩月の送迎で手がいっぱいだ。
これ以上負担をかけるようなことをしたくなかった。
しかし、かなえには既に聖陽のところに行くことは伝えてある。
かなえのことだ。
今日のことを聞いてくることは明白だ。
奏は頭を悩ませた。
か「へぇ~。時東先生そんなこと言ってたんだ」
奏「うん」
奏は結局、かなえに今日聖陽から聞かされたことを話すことになった。
かなえも奏と同じ大学に通っていたことがあり、聖陽の授業も受けていた。
聖陽の影響もあり、かなえはカウンセラーの仕事に情熱を持つようになったと言っても過言ではない。
奏「それで、姉ちゃんの見解は?」
か「うん、私も先生と同じ意見だよ」
奏「そうか……」
か「ごめんね。役に立たなくて」
奏「先生と同じこと言うね。……別に気にしないで。姉ちゃんのお陰であの2人は今楽しそうに出来てるんだから」
2人の見つめる先には、寄り添いながら楽しそうに話をしている美琴と彩月の姿があった。
かなえは暇があれば2人のカウンセリングを行い、2人の話に耳を傾けた。
そして少しでもリラックス出来るように試行錯誤を繰り返した。
最初は笑顔が無かった美琴も、今では笑顔を見せてくれるようになった。
これもかなえの努力あってこそであった。
か「私のお陰か……。美琴ちゃんに関しては私というより奏のお陰だと思うけどな」
奏「え?」
か「美琴ちゃん。よくあんたの話ばっかりするんだよ?」
奏「……俺の?」
か「うん。それも楽しそうに」
奏「……」
奏の顔は少し赤くなっていた。
か「ふふっ」
奏「……部屋戻る」
奏はそう言ってリビングを出た。
かなえはその後ろ姿を見て微笑んだ。
その夜、奏は恥ずかしさのあまり美琴の顔を見れなかったという。
