赤マント 第45話

翼は美術室へ着いた。

コンコン。

翼はドアをノックする。

翼「音無、俺だ」

ガラッ。

ゆっくりとドアが開く。

音「先生……」

翼「悪い、遅くなった」

翼は急いで中に入り鍵をかけた。

姫「翼君……」

翼「良かった。皆無事みたいだな」

翼はホッとした表情を浮かべた。

翼「っていうか倉野、お前もいたのか」

美「あれ? 居ちゃダメだった?」

翼「……いや。どうせダメだって言っても聞かないだろ? 2人とも」

翼はそう言って美南子と玲穏を見た。

翼「2人とも、無茶はするなよ?」

翼は2人に念を押すと時計を見た。

翼「俊介に電話してからそんなに時間は経ってない。来るとしたらもう少しかかるか……」

翼は少し考えた。

翼「皆、ここにいても多分直ぐに見つかる。移動しながら身を隠そう」

 翼はドアを少し開け辺りをキョロキョロと見渡した。

翼「……良し、今なら大丈夫」

翼に促され姫愛たちは廊下に出た。


カツッ……カツッ……。

翼「!?」

『赤マント』は翼たちの前に現れた。

翼「さっきまではいなかったのに……」

『赤マント』はゆっくりと翼たちに近付いていく。

翼「……姫愛、彼女たちを頼む。ここを動かないで」

美「逃げた方が良いんじゃ……」

翼「今逃げても直ぐに追い付かれる。ここで食い止めないと」

 翼は姫愛たちを庇いながら少しずつ後ろに下がる。

『赤マント』はその分、翼たちに近付いてくる。

翼「……」

『赤マント』との距離は徐々に近くなり、あと一歩で手が届くほどになった。

赤「……」

『赤マント』は鎌を振り上げた。

翼「っ!?」

 翼は大きく一歩踏み出し、『赤マント』の腹に蹴りを入れた。

赤「!?」

『赤マント』は後ろに勢い良く倒れた。

翼「今だ!! 皆走って!!」

翼の声と共に姫愛たちは走り出した。

 翼は『赤マント』を確認しながら姫愛たちの後を付いて走り出した。

赤「…、」

『赤マント』は起き上がると、翼たちの後ろ姿を見つめていた。


翼「ハァ……ハァ……」

翼たちは3年の教室にやって来た。

ドアに鍵をかける。

翼「……昔、俊介に習って格闘技を学んだことがあったけど、こんなところで役立つなんて」

姫「翼君、1年くらいで辞めちゃったもんね」

翼「うん。あんまり早く辞めることってないんだけど、あれは無理だった」

姫「ハハッ……」

翼と姫愛は他愛もない話で笑いあった。

翼「さて、これからどうしようかな」

美「友達の刑事さんってまだ来ないの?」

翼「電話が繋がらないんだ。多分こっちには来てると思うんだけど……」


ブーッ。

翼「来た……」

翼は電話に出た。

翼「もしもし」

秋『もしもし?』

翼「この声……秋元?」

秋『えぇ。卯野崎君も一緒にいるわ。序でに美濃部君もね』

美『序でってなんだ。序でって』

秋『今そっちに向かってるわ。あと20分くらいで着くと思う』

翼「こっちに『赤マント』が現れた。俺と姫愛、あと倉野と音無以外全員避難した」

秋『聞こえた?』

卯『あぁ。翼、俺たちが着くまで持ちそうか?』

翼「……持たせないと俺たち死ぬことになるからな。何としてでも持ちこたえるよ」

卯『頑張ってくれ。俺たちも急いでそっちに向かう』

翼「あぁ。頼む」

卯『翼』

翼「ん?」

卯『これが終わったらご飯にでも行こう。姫愛と3人で』

翼「……了解」

翼は電話を切った。


カツッ……カツッ……。

翼「!?」

靴音が翼たちの耳に届いた。

翼は人差し指を口に当てる。

カツッ……。

靴音が少しずつ近付く。

カツッ……。

姫「……」

カツッ……。

美「……」

カツッ……。

音「……」

カツッ……。

カツン。

ドアの前で音が止まった。

『赤マント』のシルエットが窓に写る。

翼「ッ……」

カツッ……カツッ……。

『赤マント』はドアの前を通りすぎた。

音は少しずつ小さくなっていく。

暫くすると音は聞こえなくなった。

翼「良し、行こう」

姫「大丈夫? またさっきみたいにいきなり出てくるんじゃ……」

翼「多分大丈夫。あいつは目的の人物以外は殺さない。俺が前にいる限り、本気で殺そうとはしないはず」

姫「……」


ガラッ。

翼はゆっくりとドアを開ける。

カツッ……。

翼「……」

『赤マント』はまたいきなり現れた。

翼「(……切りかかってこない。本気を出せば直ぐに殺すことができるはず。やっぱり姫愛以外の人を殺す気はないんだ)……皆外に」

姫愛たちは教室から出ていく。

翼「3人とも屋上に」

美「屋上ってそれじゃ逃げ場ないんじゃ……」

翼「こんなところじゃあいつの攻撃を避けられない。体育館には校舎を出ないと行けない。こいつが素直に行かせてくれるとは思えない」

音「闘う気なんだ……」

翼「もちろん。これ以上誰も死なせない。……さぁ、皆走って!!」

翼たちは屋上へ向けて走った。

赤「……」


卯「……」

 俊介たちはようやく渋滞から抜け出すことができた。

美「七咲たち大丈夫かな……」

卯「大丈夫。翼ならきっと」

ブーッ。

茜の携帯が鳴った。

秋「? もしもし」

須『もしもし。俺だ』

秋「須藤君?」

電話の相手は大樹だった。

須『わりぃんだけど卯野崎の電話番号教えてくんね? あいつの連絡先知らなくてさ』

秋「……卯野崎君なら今一緒にいるわよ? 卯野崎君、須藤君よ」

卯「もしもし。悪い、今取り込み中なんだ」

須『いや、ちょっと七咲に用があってさ。学校に来たんだけど、何か様子がおかしいんだ。校庭に人がたくさんいるし、あいつに電話しても繋がらないし』

卯「ちょっと待った。今学校にいるのか?」

須『? あぁ』

卯「……須藤、お前に頼みたいことがある」


上「優太……」

拓実は携帯を見ながら呟いた。

 SNSでは『赤マント』が学校に現れたと話題になっていた。

白「上坂さん」

葵衣が拓実を心配そうに見ていた。

白「行かなくて良いんですか? 学校」

上「翼に言われたんだ。『彼と向き合いたい。だから俺に任せてくれないか』って。あいつ、いじめを止められなかったことを後悔してた。だからその償いをしたいんだと思う」

白「……」

上「不思議だよね。あいつになら任せられるような気がするんだ」

白「私も、そう思います」

2人はそう言いながら微笑んだ。

翼は無事に帰ってくる。

そしてあの笑顔をまた見せてくれる。

2人は心からそう信じていた。

いいなと思ったら応援しよう!