おもちゃ箱 第43話
次の日、朝早くに奏たちはある場所を訪れていた。
旅館の夫婦から亜依子が通っていた学校が分かったと連絡があり、奏たちは向かっていた。
話を聞かせてくれるという幼馴染みの人との待ち合わせ場所に向かうと、そこには1人の男性が立っていた。
奏「あの人かな?」
絵「かもしれませんね。行ってみましょう」
奏たちが向かうと、男性もこちらに気付き走って向かってきた。
?「すいませ~ん!! あの、もしかして貴方方が電話で聞いていた記者の方ですか?」
絵「あ、はい」
?「良かった。間違いだったらどうしようかと……」
男性は額から流れる汗を拭いながらそう言った。
?「あ、申し遅れました。私学校の校長をしております、権田甚平(ごんだ じんぺい)と申します」
甚平はそう言って名刺を渡した。
奏「(じんぺい……)」
奏は心の中で変わった名前だと思った。
権「校長の伝手を使って調べまして、以外とすぐに見つかりましたよ。嶋野亜依子さんのいた学校」
絵「ありがとうございます。それで場所は……」
権「はい。そこに在籍している校長先生から話を聞くことになっていたんですが……」
絵「?」
権「急な予定が入ってしまったとかで、会うのが夕方からになってしまったんです」
奏「夕方……」
権「申し訳ありません」
奏「いえ、ここまでしていただけてるだけで充分です。ありがとうございます」
権「夕方までまだ時間があります。せっかくですから、鹿児島を案内させてください」
奏「あ、いえ、校長先生であるあなたにそんなことをしていただくわけには……」
権「問題ありません。ちゃんと学校には連絡してありますから」
奏「いや……」
権「ササッ!! 行きましょう!!」
奏「あっ……」
甚平はそう言って車に向かった。
絵「どうしますか? 先輩」
黒「良いじゃん!! せっかく案内してくれるって言ってるんだし。きっと旨いもん食えるぞ」
絵「結局それですか……」
奏「……仕方ない。せっかくのご厚意だ。無下にしちゃ悪いよ」
絵「……そうですね」
黒「めっし~、めっし~」
絵「黒澤先輩、はしゃがないでください」
奏「ハハハッ……」
奏たちは甚平の後を付いていった。
危機
か「奏たち、今頃どうしてるかなぁ……」
一方その頃、かなえは仕事場であるクリニックで仕事をしていた。
最近は事件のことが頭にあるせいか、仕事に身が入らず、やらなければいけないことを後回しにしてしまっていた。
秀明とデートにも行けず、頭の中がモヤモヤしていた。
しかし、奏から美琴たちと鹿児島に行くと聞いた時、頭の中のモヤモヤがスッと消えていくのを感じた。
奏の顔を見たとき、何故かもう大丈夫だと思った。
私が手を貸さなくてもこの子ならやってくれると、そういう自信があった。
それからというもの、事件が起きる以前と同じように、仕事と向き合えるようになった。
か「……今度こそお土産買ってきてくれるかなぁ」
そんな呑気なことを考えていた。
プルルルル……。
そんな時、かなえの携帯が鳴った。
か「ん?」
かなえは電話に出た。
か「もしもし?」
秀明は署の中でコーヒーを飲みながら捜査書類に目を通していた。
奏の情報から、嶋野亜依子に話を聞くために彼女の事務所に行ったが、彼女の秘書から門前払いをくらってしまった。
『先生のプライベートには一切お答えできません』
そう言われてしまった。
恐らく、彼女から念を押されているんだろう。
調べてみると、彼女はプライベートはおろか、それ以外のことについてもあまり話をしたがらないのだそうだ。
日「……恋人を守るために必死なんだな」
自分の口から恋人である篠塚雅晴のことがバレてしまっては、彼の経歴まで知られることになりかねない。
それを恐れているのかもしれない。
だから、仕事以外では人と関わらないようにしているようだ。
日「……彼女が事件に関わっているのだとしたら、厄介だな」
秀明は先のことを考えて深いため息をついた。
プルルルルル……。
日「? 誰だ?」
秀明の電話が鳴った。
非通知の番号だった。
日「もしもし?」
?『あ、もしもし!! あの、私、彩月です。雪永彩月です』
電話の相手は彩月だった。
日「彩月さん? どうしたんですか?」
彩『あの、かなえさんと連絡が取れないんです。いつもなら仕事終わりにメールや電話を必ずくれるんですけど今日はなくて、それでなんか不安になって何回も電話してるんですけど全然でなくて、今日は早く終わるって言ってたんですけど……』
日「仕事が長引いたとかじゃないんですか? 結構あるんですよ。そういうこと」
彩『それが、仕事場に電話したらもうとっくに仕事を終えて出ていったって。もう何がなんだか分からなくて……』
日「……分かりました。彼女は僕が探します。彩月さんは自宅にいてください。決して動かないように」
秀明はそう言って電話を切った。
そして直ぐにかなえに電話をかけた。
日「頼む……出てくれ」
秀明の願いも虚しく、コール音だけが鳴っていた。
日「クソ!!」
秀明は何度も電話をかけた。
しかし、何度電話をかけても、かなえが電話に出ることはなかった。
秀明は椅子にかけていたスーツの上着を掴み取り、急いでかなえの職場に向かった。
