おもちゃ箱 第27話

篠塚雅晴

 2日後、重雄から連絡があったと絵里加から聞いた。

尾『篠塚は東京の山奥で別荘暮らしをしているらしい。同級生に自慢げに話していたそうだ』

奏「(まさか東京に住んでるなんて)」

続いて重雄はこうも言っていたらしい。

尾『もう住所は調べてある。メールで送るからあんたらで話を聞いてきてくれ。俺には山道はきつい』

 絵里加は秀平にこの話をしたらしいが、『俺も行きたい!!』と迫られたそうだ。

 こうして奏と絵里加、秀平の3人で向かうことになるはずだったのだが……。

か「ふんふん……」

雪「……」

奏「(……なぜこうなった)」


遡ること昨日の夜。

 奏は絵里加と秀平と篠塚雅晴の住んでいる別荘に行くことを、かなえと雪永親子に伝えた。

か「大丈夫? その人犯人かもしれないんでしょ? 秀明も連れていった方が……」

奏「電話したら『仕事を抜けられない』だって」

か「そっか。……よし!! 姉ちゃんも行く!!」

奏「イヤイヤ、なんで?」

か「だって、なんかあったら困るでしょ?」

奏「そりゃそうだけど……」

か「それに、山奥行くなら車はいるでしょ? 誰か運転できるの?」

奏「……」

そう、奏たちは車の免許を持っていなかった。

 バスで行くにも少し距離のある場所だったため、奏たちはどうやって行くか悩んでいるところだったのだ。

か「それじゃ決まりね」

かなえは笑顔でそう言った。

奏「ハァ……」

クイックイッ。

奏「ん?」

 横を見ると、美琴が奏の服の袖を引っ張っていた。

奏「えっと、美琴ちゃん、どうかした?」

美琴はメモに文字を書いてく。

雪『私も一緒に行きたいです』

か「え!?」

奏「いや、美琴ちゃんそれは……」

雪『私、顔は覚えてないですけど、声を聞いたら何か思い出すかもしれません』

奏「それはそうかもしれないど……」

彩「奏君」

今まで話を聞いていた彩月が奏に喋りかけた。

彩「私からもお願い。美琴を連れていってくれる?」

奏「!?」

か「彩月さん!?」

彩月の発言に皆驚いた顔をしている。

彩「美琴も私も、犯人を捕まえたいっていう気持ちは一緒です。危険だってことは分かってます。それでも、このままじっとはしていられないんです。私たちを助けてくれるお2人のためにも」

奏「……」

か「……分かりました。美琴ちゃんも連れていきましょう」

奏「姉ちゃん……」

か「大丈夫。皆がいるし。今日中に連絡がなかったら、秀明が駆けつけてくれることになってるから」

奏「それって被害が起きてからじゃ遅いんじゃ……」

か「犯人を捕まえたいんでしょ? 皆気持ちは同じ。協力しあわないともっと被害が増えるかもしれない。もう誰も死なせたくないもの」

奏「……」

奏は1人1人の目を見た。

皆本気だった。

奏「……分かった。美琴ちゃんも連れていこう」

奏の言葉に美琴は笑顔を向けた。

奏はそれに微笑んで返した。


車を走らせて数時間。

奏たちはようやく目的の場所に到着した。

奏「……ここか」

そこには木造で作られた大きな別荘があった。

 近くにはキャンピングカーがあり、周りは木々で囲まれ、鳥の声が聞こえる。

邪魔なものが何もない、静寂な場所だった。


ピンポーン。

絵里加はチャイムを押した。

しばらくすると男性が出てきた。

 痩せていて長身で、どこか不思議な雰囲気を醸して出していた。

絵「あの、篠塚雅晴さんですか?」

篠「そうだけど、アンタらは?」

絵「あの、私たち、10年前の事件のことでお話を伺いに来たんです」

篠「……なんで今さら? 僕は既に罪を償ってるんだぞ?」

絵「あ、あの……」

奏「最近都内で、箱に人が入れられ殺される事件が起きてるの知ってますか?」

篠「? あぁ、あの彼氏や不倫相手の家に箱が送られてくるっていうあれだろ?」

奏「実は、その箱に付けられている爆弾が、貴方が10年前に学校に贈った爆弾と構造が似ているらしく、こうしてお話を聞きに伺ったんです」

篠「あれはネットで拾ったものをそのまま真似て作ったものだ。素人でも簡単に作れる。それに、俺にはその箱を使って人を殺す理由がない。そんなことでわざわざ来たのか?」

奏「……俺たちはその箱によって色々と被害を受けてます。これ以上被害を出さないために、事件を調べてます。もしかしたら、あなたの事件を模倣して犯人は殺人を行ってるのかもしれない。そう考えて俺たちはあなたに会いに来ました」

篠「……」

奏「もちろん、犯人が模倣していたとしても、貴方にはなんの責任もありません。ただ、俺たちも形振り構っていられないんです。どうか、お話だけでも聞かせてもらえませんか。お願いします」

奏はそう言って頭を下げた。

他の皆も続いて頭を下げた。

篠「……分かった。話だけなら聞かせてあげよう」

奏「!! ありがとうございます」

篠「大したものは出せないけど、どうぞ」

雅晴はそう言って入るように促した。

 奏たちは不安を覚えながらも、恐る恐る部屋に入った。

 部屋の中は綺麗に整頓されており、無駄なものが無いように見えた。

 机には手作りだろうか、鳥の形をした木彫りのキーホルダーが置かれていた。

篠「適当に座ってくれ。今コーヒー入れるから」

絵「あ、お気遣いなさらず」

か「奏」

かなえが小声で話しかけてきた。

奏「?」

か「見た感じ、怪しいものは無さそうだけど」

奏「まぁ、犯罪をするのに、人目につきやすい場所ではやらないでしょ。地下とかがあったら別だけど」

奏は再び辺りを見渡した。

奏「ここには1人で住んでいらっしゃるんですか?」

篠「あぁ。妻がいるにはいるんだが、仕事が忙しくてね。ここじゃなく別のところに暮らしてるんだ。まぁ、週に1回は必ず会ってるんだけど」

か「奥さんはなんの仕事を?」

篠「弁護士さ。東京に事務所を構えてる」

か「スゴいですね」

篠「あぁ。俺は近くのお店とかに木彫り細工を卸したりしてるんだが、妻の収入に比べたら全然さ。妻はそんな俺を支えてくれている。本当、妻には頭が下がるよ」

そう語る雅晴の顔は笑顔だった。

か「……奥さんのこと愛してるんですね」

篠「あぁ。さぁ、コーヒーどうぞ。砂糖はお好みで入れてくれ」

絵「ありがとうございます」

奏たちはコーヒーに口をつけた。

黒「(旨い、けど……)」

絵「(先輩のと比べると……)」

か「(いまいち……)」

雪「……」

奏「(……インスタントだな)」

 皆口には出さなかったが、奏の入れたコーヒーが恋しくなった。


篠「さて、何から話せば良いのかな」

奏「あの、話しづらいとは思うんですけど、当時の事件のことについてまずは教えてもらえませんか?」

篠「……まぁ、それはそうか。そうだね、僕が事件を起こしたのは10年前のことだ」

雅晴はゆっくりと昔のことを語り出した。

いいなと思ったら応援しよう!