赤マント 第43話

新たな情報

校「え~、先生方。今日から学校が再開します。色々大変だとは思いますが、何があろうと生徒の安全を第一に考え行動してください」

校長は額の汗をぬぐいながらそう言った。

 翼はその話を聞きながら『赤マント』のことを考えていた。

翼「(黒瀬をいじめていたやつは全員殺された。本当なら、あいつの復讐はここで終わってるはず。けど、あの時の修学旅行で一緒だったグループを狙ってるとしたら。いじめを見て見ぬふりをしていた俊介や姫愛も標的だとしたら……)」

翼はチラリと姫愛を見た。

姫愛は校長の話を静かに聞いていた。

翼「(いや、「したら」じゃない。確実に狙われてる。この2人が事件に巻き込まれてるのだって偶然じゃない。不思議な力が働いてる。2人は何としても守らないと)」

翼はそう決意した。


一方、俊介は浩一の事務所にいた。

 机には小久貫邸の記事が載った新聞が数枚置かれていた。

美「ほとんどその話題ばっかりだな」

卯「あぁ」

 俊介は警察に放火事件の当日の写真を警察に送った。

その写真には一真も写っていた。

 圧力も何もない今なら警察も動いてくれるはずだ、と俊介は考えたのだ。

卯「(さすがにそんな直ぐには無理か……)」

俊介は記事を机に置いて天を仰いだ。


ブーッ。

俊介の携帯が鳴った。

卯「……」

 俊介は画面に写った名前を見て少し不満な顔を浮かべた。

俊介は通話ボタンを押した。

卯「もしもし」

?『もしもし』

卯「どうかしたのか? 秋元」

電話の相手は茜だった。

秋『警察の方で動きがあったみたいね。笠井君の放火の件、捜査に着手するらしいじゃない。小久貫家の行ってきた犯罪行為についても同時進行で捜査を進めるって聞いたわ』

卯「……その話、初めて聞いたんだが」

秋『……貴方、本当に警察の人間?』

卯「一応、謹慎中の身なんでね。捜査状況分かんないんだ」

秋『……』

卯「っていうか、秋元こそそんな情報どうやって手に入れてんだよ?」

秋『これでも私、警察の知り合いが多いのよ』

卯「(捜査情報漏洩……)」

 俊介は後で茜の交友関係について調べようと決心した。


秋『それともうひとつ』

卯「?」

秋『黒瀬君の父親の居場所、分かったわよ』

卯「父親の居場所?」

秋『彼の家族のことも調べてたのよ。序でにね』

卯「……」

秋『1年前に病気で亡くなったらしいんだけど、彼が住んでいた家、買い取り手がいなくてそのままの状態で残ってるらしいわ。話じゃかなり異常な部屋らしいけど』

卯「異常?」

秋『私、今からそこに行こうと思ってるの』

卯「ちょっと待った。俺も行く。場所を教えてくれ」

 俊介は机に置いてあるペンとメモを取り住所を書き出した。

卯「……分かった。直ぐに向かう」

 俊介は電話を切ると、携帯をポケットに仕舞い立ち上がった。

美「どうした?」

卯「黒瀬の父親が生前暮らしていた場所が分かったらしい。今から行ってくる」

美「えっ!?」

俊介は足早に出ていった。

美「ちょっ!? ちょっと待て!! 俺も行く!!」

浩一も急いで後を追った。


バサッ。

翼たちがいる学校。

その校門の前に誰かが立っていた。

 その人物は赤い帽子を被り、赤いマントを羽織っていた。

 顔には仮面を着け、その表情を伺い知ることはできない。

その人物は学校を見つめ佇んでいた。

赤いマントが風に揺れはためいていた。


音「!?」

異様な気配を感じ、玲穏は顔を上げた。

外を見るが、そこには誰もいなかった。

音「……」

玲穏は確かに感じていた。

『赤マント』になった兄と会った時とは違う、言い知れぬ恐怖。

 まるでこれから何かが起こるような、そんな不安を感じた。

玲穏の手は震えていた。

 一方、翼も同じように妙な違和感を感じていた。

翼「(なんだ……。妙な胸騒ぎがする)」

翼は時計を見た。

時刻は11時を回ろうとしていた。

ブーッ。

翼の携帯が鳴った。

翼「渡辺さん?」

かかってきたのは緋梨からだった。

翼「もしもし?」

渡『あ、七咲さん。すいません。急にお電話してしまって』

翼「いえ。それより、どうかしましたか?」

渡『あ、あの、何かあるって訳ではないんですけど……。実は朝から妙な胸騒ぎがして…』

翼「渡辺さんも? 実は俺も学校に来てから胸騒ぎがしてるんです」

渡『えっ!?』

緋梨は電話越しに驚いた声を上げた。

渡『……実は、心霊体験をした後に霊感が強くなったという事例が少なからず存在するんです』

翼「え?」

渡『霊感がない人でも、霊の念が強ければ見えてしまうことはあります。そして、1度霊が見えるようになると、霊感が強くなって霊が見えやすくなってしまうことがあるんです』

翼「……」

渡『私たちは1度、音無さんのお兄さんの霊に会っています。恐らくそれが原因じゃないかと』

翼「……ってことは音無も同じようになってる可能性があるか」

翼の脳裏に姫愛の姿が過った。

翼「(もしかしたら、『赤マント』が既にこっちに来てるってことなのか?)……渡辺さん。こっちは何とかします。渡辺さんはそこを動かないでください」

渡『何とかって、どうするつもりなんですか?』

翼「『赤マント』の狙いは既に分かっています。狙いが分かっているなら、対処はいくらでもあります。上手く行くかは分からないですが……」

渡『……』

翼「音無のことは任せてください。死なせるようなことは絶対にしません」

渡『……分かりました』

翼「お電話ありがとうございました。それでは」

渡『あ、あの!!』

翼「?」

渡『……七咲さんも、死なないでくださいね?』

翼「……はい。約束します」

渡『……』

翼「……それでは」

翼は電話を切った。

翼「姫愛は授業中か。勝負は放課後……」

翼は戦いに向けて準備を進めた。


卯「悪い。待たせた」

秋「いえ、行きましょう。既に許可は取ってあるわ」

茜は鍵を見せた。

秋「許可って、どうやって鍵を貰ったんだ?」

秋「親戚だって言ったらすんなり貸してくれたわ。管理人さんもあんまり近寄りたくないみたいだったから、こっちとしては助かったわ」

卯「……」

秋「さぁ、行きましょう」


 俊介たちは優太の父親が生前住んでいた家に来ていた。

 亡くなった後に不動産屋が家に訪れた際、その家の不気味さに立ち寄るのを辞めてしまったらしい。

 私物も処分するのを躊躇ったため、リフォームもできない状態のようだ。

美「いや、どんな家だよ」

秋「開けるわよ」

カチャ。

茜は鍵を使ってドアを開けた。

 玄関に入ると、部屋の独特な匂いが鼻に付いた。

茜たちはゆっくりと中に入った。


美「うわぁ……」

卯「これは……」

秋「…スゴいわね」

リビングに入った3人は驚いた。

部家の中は荒れていた。

まるで強盗が中に入ったようだった。

 酒瓶が散乱しごみが散らばり、衣服も棚からはみ出していた。

美「俺も独り暮らしだけど、ここまで酷くはねぇな」

秋「近所の人の話じゃ、いろんな仕事をしてたけど、どれも長く続かなかったみたい。会社でのトラブルも多かったらしいし」

卯「奥さん置いて出ていったは良いが、生活に困窮してたってことか」

秋「どうかしら」

茜は机に置いてあった写真立てを見た。

写真には、家族4人の笑顔があった。


俊介はカーテンで仕切られた部屋を発見した。

卯「……」

シャッ。

俊介はカーテンを開け中に入った。

卯「これは……」

俊介は部屋の電気を点けた。

その部屋はまさに異常だった。

 壁一面にびっしりと写真が貼られ、そのうちの数枚はボロボロだった。

まるで刃物で何回も刺したかのようだった。

 そして、壁の片隅に『赤マント』の衣装がかけられていた。

秋「何これ……」

美「うわぁ……」

いつの間にか茜と浩一も部屋に入っていた。

卯「ここにある写真全部、小久貫たちいじめっ子グループの写真だ」

 壁に貼られた写真は、一真たちいじめっ子グループの写真ばかりだった。

卯「奥さんの死亡後、何らかの理由でいじめのことを知り、復讐心を募らせた。そして彼らのことを調べ上げた。いつか復讐するために」

秋「……」

卯「翼が言ってた。『赤マントは誰かの強い思いが実体となって現れたものだ』って。もしかしたら、『赤マント』を作り出したのは父親かもしれない」

美「だとしたら、ちょっとやそっとのことじゃ止まらないぞ。この人の恨みは相当だ」

卯「……」

俊介は姫愛のことが気がかりだった。

彼女は1度狙われている。

 もし『赤マント』が来るとしたら、彼女から狙う可能性は充分にある。

卯「……俺は学校に行ってみる」

俊介はそう言うと足早に出ていった。

秋「私たちも行きましょう」

茜は俊介の後を追った。

美「あ、おい!!」

浩一も慌てて付いていった。

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