おもちゃ箱 第22話
疑惑
奏は秀平と一緒に週間日本の事務所に来ていた。
安藤満から話を聞くために。
奏「秀平」
黒「ん?」
奏「本当によかったのか? 捜査に協力して」
黒「なんだよ。誘ったのは奏だろ?」
奏「まぁ、そうなんだけど……」
奏は秀平のことを信頼していた。
かなえや秀明は仕事があり一緒に行動するのは難しい。
そこで信頼の置ける秀平に頼むことにした。
しかし、奏は少し後悔していた。
一緒に捜査するということは、危険なことに巻き込まれる可能性が高いということ。
そんなことを頼んでしまって良かったのかと奏は不安になった。
黒「俺のことを信頼して頼んできたんだろ?」
奏「……あぁ」
黒「俺もお前のこと信頼してる。だから、お前が危険なことに巻き込まれてるなら放っておけない」
奏「秀平……」
秀平の言葉に奏は泣きそうになった。
秀平はそんな奏に飛びっきりの笑顔を見せた。
奏「……行くか」
黒「おう!!」
2人は事務所の中に入った。
事務所の社長が2人の対応をしてくれた。
奏は社長に事の経緯を伝えた。
社長は最初話を聞くことを渋っていたが、奏が事件の被害者の1人だと分かると、なくなく了承してくれた。
社「それで、安藤に何を聞きたいんだい?」
奏「あの人の彼女は頭を散弾銃で撃たれて亡くなったと聞きました。散弾銃で撃たれたなら、箱の中は血まみれになっていたはず。けど、あの人はかなり正確に箱について記事を書いていました。箱の大きさだけでなく、箱の奥行きの長さや爆弾の大きさまで」
社「……つまり?」
奏「あの人は箱が届く前から、箱のことについて知っていたんじゃないかと。彼女さんが入っている前の、空の状態の箱のことを」
社「えっ!? じゃあ、あ、安藤が事件の犯人だと!?」
奏「あくまで可能性なんですけど……」
黒「それで、安藤さんから話を聞いておきたいなぁと思いまして」
社「う~ん、これは困ったなぁ」
奏「?」
社「実は……ここ3日くらい、安藤の姿が見えないんだ」
奏「え!?」
社「携帯も繋がらないし、家の電話にも出ないんだ」
黒「逃げたな。やっぱり安藤って人が犯人だったんだ!!」
奏「……」
奏は静かに拳を握った。
秀明は奏から満の話を聞き、署から真っ直ぐに深堂家にやって来た。
家には奏とかなえがいた。
美琴と彩月は既に寝ているらしい。
奏「日下さん」
日「奏君、凄いところに目をつけたね」
奏「いえ……」
か「さすが私の弟でしょ?」
日「なんで君が威張ってんの……」
日下も席に着き、3人の話し合いが始まった。
日「それじゃ社長の話では、3日前に急に連絡が取れなくなったんだね?」
奏「はい。どうやら『おもちゃ箱』について調査していたのは安藤だけで、他の人は全く協力をしていなかったそうです」
日「つまり、独自で取材をして奏君たちの事を調べあげたってことか」
奏「はい」
か「でも、取材って2人1組でやるもんなんじゃないの?」
日「いや、1人でやる人も少なくないよ」
奏「会社の人の話では、あの人は取材に対する熱がすごくて、誰かと一緒にやるのが嫌いだったみたい。それと……」
か「?」
奏「あの人の取材のやり方に反発してる人が多くて、事務所では煙たがられてたみたい」
か「そんなひどい取材してたんだ」
奏「まぁ、自分の彼女の死体を写真に撮って、週刊誌に載せるような男だからね。それだけじゃなく、女の人と関係をもって、情報を流すように指示したりとか、盗聴とかも平気でしてたらしいよ」
か「うわぁ……最低。女の敵ね」
日「……そういう男なら、記事を有名にするために罪を犯す可能性もある、か」
か「確かに。いや、絶対そうだよ。早く捕まえないと」
日「明日、安藤の部屋を調べようと思う。そこで何か物証が出れば、指名手配することもできるはずだ」
奏「……」
か「……よし」
かなえは何か決心したような顔をして立ち上がった。
か「明日、私も付いていく」
日「はぁ!?」
奏「僕も行きます」
日「ちょ、ちょっと!! 2人とも何言ってんの!? 相手は危ないやつなんだよ!? もし犯人だったら……」
か「大丈夫だよ。秀明がいるし」
日「いやいや……」
奏「日下さん。お願いします」
奏はそう言って頭を下げた。
日「……ハァ、こりゃバレたら上に怒られるな」
奏「……日下さん」
日「2人とも、俺の側を離れないように」
奏「はい、ありがとうございます」
か「秀明、ありがとう~!!」
かなえは秀明に抱きついた。
日「あ~、はいはい。分かったから抱きつくのは止めようね~」
奏はその光景を見て微笑んだ。
秀明が帰ったあと、奏はリビングで1人考え事をしていた。
か「奏」
奏「姉ちゃん」
奏の元にかなえがやって来た。
奏「どうかした?」
か「ううん。ちょっと暖まろうかと思って。コーヒー飲みに来た」
かなえはそう言って奏を見た。
奏「……入れてあげようか?」
か「本当!? ありがとう」
奏「全く……」
奏は慣れた手つきでコーヒーをドリップし、お湯を入れかなえの前に置いた。
か「いい匂い。いただきます」
かなえはカップに口をつけた。
か「う~ん。美味しい」
奏「ていうか、寝る前にコーヒー飲んだら逆に眠れなくなるんじゃ……」
かなえ「大丈夫。どっちにしろ緊張して寝れないから」
奏「……そうですか」
奏は苦笑いをした。
か「ねぇ、奏」
奏「ん?」
か「さっき何考えてたの?」
奏「えっ?」
か「秀明が話してるとき、奏なんか納得いってないような顔してたから」
奏「……」
奏は驚いた。
まさにその通りだったからだ。
奏「……さすが姉ちゃん。何でもお見通しか」
奏はコーヒーを一口飲んで口を開いた。
奏「自分で『安藤って人が怪しい』って言っといてなんだけど、なんか犯人って感じでも無い気がするんだ」
か「どういうこと?」
奏「犯人は身元がバレないように、ホームレスを使って宅配したり、山田鈴木って偽名を使ってる。でも、あの人はわざと俺に接触してきた」
か「それはスクープを取るためじゃないの? そのために自分の彼女まで殺したんじゃないかって」
奏「いくらなんでも行動が怪しすぎるよ。彼女を殺して、それを写真に撮って週刊誌に売るなんて。『疑ってください』って言ってるようなもんだ。犯人の行動としては不可解すぎる」
か「……なるほど」
奏「まぁ、絶対に捕まらない自信があるのかもしれないけど……」
か「う~ん……」
かなえは少し考えた。
か「とりあえず、その安藤って人を捕まえたら分かるんじゃない?」
奏「……スゴい楽観的」
か「だって考えても分からないんだもん。分からないことはそんなすぐに答えでないでしょ」
奏「まぁ、そうなんだけど……」
結局、その日は答えが出ることは無かった。
