おもちゃ箱 第24話
安藤の死体は写真と同じく、両手両足を拘束され、猿轡を噛まされていた。
服装も写真と同じだった。
違うところと言えば、顔が潰され、顔面から肩にかけて血に染まっていることだ。
体の至るところに殴られたような痕があり、ロッカーにも血が飛び散っていた。
か「うっ……」
日「かなえ、見ない方がいい」
秀明はそう言ってかなえを抱き寄せた。
奏「……」
奏は落ち着こうと必死に平静を装っていた。
秀明は死体に近づいた。
日「顔が潰されていて判別が出来ないな。奏君。ちょっと写真を見せてくれるかい?」
奏「あ、……はい」
奏は秀明に写真を渡した。
日「……服は全く一緒だ。けど、頭のいい犯人なら自分の服を着せて他人に成り済ましている可能性は十分ある。とにかく、署に連絡して大至急鑑識を呼んでもらわないと」
奏「……日下さん」
日「ん?」
奏「これ、多分安藤本人だと思います」
日「え?」
奏「ロッカーにも血が飛び散ってるってことは、犯人はロッカーの中で顔を潰したってことです。安藤にとってスクープ写真は大事なもののはず。そんなものがある部屋で殺人をするとは思えません。それに……」
日「それに?」
奏「安藤には、死体をすり替える理由がないです。ここは安藤の家。DNAを調べればすぐに本人だって分かるし、死体をすり替えるということは、疑われることを想定していたということ。わざわざ死体をすり替えるなら、そのまま何処かへ逃げた方が早いです」
日「……確かに。ということはやはり、犯人は別にいるってことになるな」
奏「……はい」
日「……とりあえず先ずは署に連絡しよう。話はそれからだ」
秀明はそう言って携帯を片手に外に出た。
か「奏……」
奏はかなえの呼び掛けに答えず、死体をただ見つめていた。
奏「……一体どうなってんだよ」
奏の問いに答える者は誰もいなかった。
数分後、警察が安藤宅にやって来た。
署の人たちは秀明が既にいることに驚いていたが、『2人から連絡を受けて先に現場に到着した』と言うと、不思議がりながらもそれ以上詮索することはなかった。
日「(後で上にもなんか聞かれるんだろうなぁ……)ハァ……」
秀明はこの後のことを考えると頭が痛い思いだった。
かなえと奏は警察の人から軽い聴取を受けて家に帰ることとなった。
かなえは秀明に『何か分かったら必ず連絡する』と約束を取り付けた。
翌日、奏は重たい体を起こし朝食の準備を始めた。
奏「(何か分かっただろうか……)」
朝食を作りながらも、奏の頭の中は昨日の事件のことでいっぱいだった。
ガチャ。
奏がコーヒーを作っていると、リビングのドアが開いた。
現れたのは美琴だった。
奏「あ、おはよう」
美琴はお辞儀で返した。
奏「ふふっ。寝癖、スゴいことになってるよ」
奏のその言葉に、美琴は髪を触り、さらに顔を赤くして洗面台へと向かっていった。
最初に会った頃、起きた時には綺麗に髪が整えられていたのだが、ここ最近はああいう状態であることがよくあった。
奏「それだけリラックスできてるってことかな……」
奏はなぜか嬉しくなった。
その後、かなえや彩月も現れ、4人は朝食を食べ始めた。
か「……」
奏「姉ちゃん?」
か「えっ?」
奏「スッゴいボーッとしてるよ」
彩「大丈夫ですか? どこか体調でも悪いんじゃ……」
か「いえいえ!! 大丈夫ですっ!! 本当!!」
奏「(無理もないか。昨日あんなことがあったんだもんな)」
奏はかなえを心配した目で見つめていた。
奏は大学で講義を受けていた。
黒「奏」
声をかけてきたのは秀平だった。
奏「おはよう。秀平」
黒「おはよう。昨日は大変だったな」
奏は秀平に昨日のことを伝えていた。
奏「まぁ、ね」
黒「せっかく事件が一気に解決すると思ったのに、振り出しに戻っちまったな」
奏「あぁ」
黒「これからどうすんの? まだ捜査続けるんだろ?」
奏「実は今日、絵里加にバイト先に来てもらうことになってるんだ」
黒「絵里加が?」
奏「あぁ。お前が俺の連絡先を勝手に教えて心配して連絡してきてくれた心優しい後輩の霜村絵里加だよ」
黒「ウッ……。わ、悪かったよ」
奏「ハハッ。冗談だよ」
奏はそう言って笑った。
奏「秀平も来るか?」
黒「良いのか?」
奏「まだ事件は終わってないからな。頼りにしてる」
奏は秀平の肩を叩いた。
黒「……あぁ、任せろ」
秀平は笑顔で応えた。
