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「営業が動かない…はマーケのせい?──BtoB連携のズレにある“認識の壁”

「もっと温度の高いリードがほしい」
「いや、これだけ渡してるのに動いてくれないのは営業の問題だろう」
「そもそも、なぜ成果につながっていないのか分からない」

——BtoBの現場で、マーケティングと営業が協力しながら動いている組織であっても、こんなすれ違いが起きることは珍しくありません。

私自身、マーケの立場で仕事をする中で、営業から「数が足りない」「質が悪い」と言われ、上司からは「もっと施策を打て」と急かされる。
増やせば文句を言われ、絞れば叱られる。
数字は出したい。でも、連携はうまくいかない。

一方で、営業の立場から見れば、「マーケが渡してくる問い合わせ情報(いわゆるリード)は、温度感もタイミングもバラバラ。手をつけても実らないことが多い」と感じているのも事実でしょう。

ここには、「マーケが頑張っていない」「営業がサボっている」という単純な話では片づけられない、構造的なズレがあります。

本稿では、「営業が動かない」と言われるその背景に、
“見込み客の温度感が混在したまま連携されている”という設計上の課題があることを明らかにしながら、
マーケ側の工夫だけでなく、組織全体でどう“動ける仕組み”を整えるか、実践的な視点から考えてみたいと思います。


第1章:「リードは渡した」──でも、それだけじゃ営業は動けない


営業とマーケティングがうまく連携しているはずなのに、なぜか成果が伸びない──。
よくよく状況を見てみると、「リードは確かに渡している。でも営業は動いていない」という場面に遭遇することがあります。

マーケティングの立場からすれば、「見込み客(リード)はしっかり集めている」「フォーム入力もしているし、資料請求もある」「ちゃんと営業に渡している」。
一方の営業は、「どのリードが本気か分からない」「前に送ってきた人と話したけど、全然興味がなかった」「これに時間をかけるのは正直、つらい」。

つまり、“渡してはいるけれど、動ける状態になっていない”のです。


一見「同じリード」でも、実は温度感がまったく違う

例えば、以下の2人の見込み客がいたとします。

  • Aさん:導入検討のために自社内で稟議を通しており、最終比較段階。競合他社との比較のため資料請求。

  • Bさん:業務改善のヒントを探すためにホワイトペーパーをダウンロード。今は情報収集フェーズ。

どちらも「フォームから資料をダウンロードした人」という意味では同じリードです。
でも、営業がすべきアプローチはまったく異なります。

Aさんには、すぐに営業から具体的な提案を届けるべきですし、
Bさんには、焦らず価値提供を継続する「育てる」対応が必要です。

にもかかわらず、「資料請求者一覧」として一括で渡されたらどうでしょう。
営業は、“どこから手をつけていいか分からないリスト”に戸惑い、
やがて「このリスト、あんまり意味ないんだよね」という不信感につながります。


情報の受け渡しに、“判断の余白”がありすぎる

本来、営業は「どの人に・どの順番で・どうアプローチすべきか」という優先順位の判断をしながら動いています。
しかし、マーケティングから渡されたリード情報がすべて同じように見えると、この判断が非常に難しくなります。

結果として、次のようなことが起こります。

  • 営業が手をつけずにリードが放置される

  • 数件だけあたって「今回もダメだった」と判断してしまう

  • 今すぐ話したかったはずの“アツい見込み客”を取りこぼす

こうして、「動かない営業」という評価が下されますが、
実際は“動ける情報の渡し方”になっていなかっただけ、というケースが少なくないのです。


次章では、こうした“リードの温度感の違い”が混ざったまま渡されることによって、
どんな機会損失が起きているのか、もう少し掘り下げてみます。



第2章:リードの“温度感”が混ざっていると、営業は疲弊する


マーケティングが集めたリード(見込み客)の中には、当然ながら「今すぐに話を聞きたい」という人もいれば、「なんとなく興味があるだけ」「とりあえず資料を見てみた」という人も含まれています。
これは自然なことです。BtoBの意思決定は長期にわたることが多く、検討段階も人それぞれだからです。

問題は、そのリードたちをひとまとめにして営業へ渡してしまうことにあります。


同じ「資料請求」でも、こんなに違う

たとえば、こんな2人がいたとしましょう。

  • C社の担当者は、社内のプロジェクトが本格始動したタイミングで資料請求。上司から提案を急ぐように言われている。

  • D社の担当者は、上司に頼まれて“なんとなく”情報収集。決裁者ではなく、比較対象も特に定まっていない。

どちらも「同じフォームから同じ資料を請求した」という記録が残ります。
しかし営業としては、C社にはすぐに連絡したいし、D社には無理に押し売りしたくない。むしろ焦って動くことで逆効果になるかもしれません。

にもかかわらず、これらが“同じ扱い”で渡されると、営業側の混乱と不信感を招きます。


営業の“見極め工数”が膨らむ構造的な問題

営業には限られた時間とリソースしかありません。
1件1件に丁寧に対応しようとしても、10件、20件と増えると対応の質は下がっていきます。

特に、以下のような状況が続くと、営業の現場は疲弊します。

  • 「資料請求があった」と言われて連絡してみたら、まだ導入を検討していない

  • 「興味あり」とされていたが、担当者がそもそも導入権限を持っていない

  • 「商談の可能性が高い」と聞いて動いたが、実は過去に何度も検討だけして終わっている企業だった

このような経験が積み重なると、営業はリードそのものを信用しなくなる傾向があります。
「またマーケのリストか」「動かないのにまた送ってきたのか」
そう思われるようになると、本当に温度の高い人に対しても動かなくなってしまいます。


見込み客の「温度」が分からないと、機会を取りこぼす

最ももったいないのは、営業が本当に話すべき人──
「今、導入を真剣に考えている」「競合との比較中」「来月に予算決裁がある」──そんな“アツい見込み客”を見逃してしまうことです。

  • “混ざったまま”の情報をもとに営業判断が行われる

  • 本来優先すべき相手が後回しになる

  • 結果として、競合に先を越される

こうした機会損失は、「やる気」の問題ではなく、情報の“渡し方”の設計ミスに起因します。


次章では、こうした失敗を繰り返さないために、
マーケティング側が「営業が動けるようにする」ための3つの視点をご紹介します。
「渡したら終わり」ではなく、「動けるようにするにはどうすればいいか?」を考える段階に入ります。


第3章:営業が動ける状態をつくるための3つの視点

ここまで見てきたように、営業が動けない原因のひとつは、リードの“温度感”がバラバラな状態で渡されていることにあります。
では、どうすれば営業が「すぐに動くべき相手」を見つけやすくなるのでしょうか。

そのヒントになるのが、リードの分類──つまり、「どの見込み客に、どの対応をすべきか」の仕分けです。
ここでは、MQL・SQLの考え方と、営業現場でなじみのある“温度感”の分類の両面から整理してみましょう。


① 分けて渡す──HOT/WARM/COLDとMQL・SQLの関係

よく使われる分類として、以下のような温度によるリード区分があります。

  • COLD(コールド):まだ情報収集段階。今すぐ導入する意図はなく、「将来的に検討するかもしれない」レベル。

  • WARM(ウォーム):比較検討に入りつつあり、興味はあるがまだ具体的な導入計画は未定。

  • HOT(ホット):明確な課題とニーズがあり、導入時期や比較対象も明確。すぐに営業と話したい状態。

この分類は、一般的なマーケティング用語で言うところの、

  • MQL(Marketing Qualified Lead)=マーケ部門で「商談につながりそう」と判断したリード

  • SQL(Sales Qualified Lead)=営業部門が「今すぐ接触すべき」と判断するリード

ほぼ一致します

🔍 補足
「MQLとは何か」「SQLとの違い」などの検索キーワードがあるように、
この2つの違いを理解し整理しておくことは、営業連携の質を高める第一歩になります。


② 話しやすくなる情報を添える──MQLを“活かす”情報設計

たとえば、「MQLとして営業に渡した」としても、それだけでは営業が動けるとは限りません。
リードの分類だけでなく、「どう話せば良いか」のきっかけや背景情報が欠かせません。

以下のような情報があると、営業は会話の糸口を見つけやすくなります。

  • どのページを何回閲覧していたか(関心分野)

  • 過去に問い合わせ・資料請求をしたタイミング

  • 特定の資料に対して反応が良かった履歴

  • 同業他社の事例ページを長く閲覧していた痕跡

これらは、MQLを単なる「有望な見込み客」として扱うのではなく、
「次の一歩につなげやすい情報に変換する」マーケティングの工夫とも言えるでしょう。


③ 情報を“つなぐ”仕組みを入れる──MQLとSQLの“間”を埋める役割

MQLからSQLへの移行段階では、「誰がどんな判断基準で渡すか」が曖昧だと、連携がうまくいきません。

理想は、営業とマーケの間にいるインサイドセールス(IS)やSDR(営業開発担当)が、その橋渡しをすること。
人を置けない場合でも、次のようなシンプルな仕組み
で代替することはできます。

  • HOT/WARM/COLDの区分を明文化し、営業と共有する

  • MQLに添える「温度の根拠」や「想定アプローチ」を共通フォーマット化

  • 「SQLとして渡していいリード」の最低条件を事前にすり合わせておく

これにより、「どのタイミングで、どの人が、どの情報を渡すか」が明確になり、営業も安心して動けるようになります。


このように、「温度で分ける」「話しやすくする」「間をつなぐ」の3つを整えるだけで、
営業が“動ける状態”は大きく変わってきます。

次章では、これらの構造を整えること自体が、マーケティングの本質的な役割なのではないか──
そんな問いを起点に、マーケの再定義と今すぐ取り組めるアクションを整理していきます。


第4章:マーケティングの役割は、“成果が出る仕組み”を設計すること


営業から「動けない」と言われる理由の多くは、個人の能力ややる気の問題ではありません。
その多くは、「どう動けばいいか分からない」「今じゃない相手にアプローチしてしまう」という、判断のしづらさ=構造の問題です。

そしてこの「構造」の設計は、本来マーケティングの役割の一部でもあるはずです。


情報を集めて終わり、では“マーケティングにならない”

問い合わせを集める、広告を回す、セミナーを開く──
マーケの業務は日々忙しく、やるべきことは山積みです。

けれども、どれだけ施策を打っても、営業が動けないなら、それは成果にならない

  • リードの温度感が分からない

  • 判断基準が明確でない

  • 情報が整理されていない

こうした状況では、せっかくのリードも“使えない情報”になってしまいます。


支援とは、「渡すこと」ではなく「動けるようにすること」

よくある誤解に、「リードを営業に渡したら、マーケの仕事は終わり」という考え方があります。
ですが、本当の意味でのマーケティングの支援とは、

  • 渡すこと

  • 動けるようにすること

  • 成果につなげること

までを含んだ“仕組み全体の設計”にあります。

営業の動きを“前提にした”マーケティング設計を行うことで、初めてその支援は意味を持つのです。


“役割の隙間”を埋める人と仕組みをつくる

営業とマーケの間にある“情報の壁”“期待のずれ”をなくすためには、間にいる人か、仕組みが必要です。

たとえば:

  • IS(インサイドセールス)やSDRといった「整理・選別・接点化」担当者を置く

  • ISがいない場合は、営業とマーケで「MQL→SQLの条件」や「渡し方の型」を共有する

  • 毎週・毎月の連携ミーティングを通じて“すり合わせる文化”をつくる

これらはすべて、「営業が迷わず動ける状態」をつくるための工夫です。
マーケが自らの成果を語るには、こうした“使われ方”に踏み込む必要があります。


「数」ではなく「構造」で支えるマーケティングへ

これまで、リード数や資料のダウンロード数といった“表面的な数値”が、マーケの評価軸になりがちでした。
しかしこれからは、それだけでは足りません。

  • 営業が迷わず動けたか?

  • 温度の高い見込み客に、最速でつなげられたか?

  • 商談化の流れを“仕組みで支援”できていたか?

これらを見直すことで、マーケティングは営業にとって「頼れる味方」として機能し始めます。


次章では、このような考え方を踏まえて、
「営業が動かない…」という悩みを構造的に解決するためにマーケが明日からできるアクションを、具体的に整理します。


第5章:営業が動ける仕組みは、マーケがつくれる


営業が動かない──そう感じたとき、
私たちマーケティングの立場でできることは意外と多くあります。

単に「もっと数を出せ」「いいリードをよこせ」と言われるまま施策を増やすのではなく、
“動ける仕組み”をマーケティングが設計するという視点に立つことで、現場は確実に変わっていきます。


まず見直したい、3つのアクション

① リードを分けて渡す

  • すぐに営業が動くべき相手と、育成が必要な相手を分類する

  • HOT/WARM/COLD、MQL/SQLのような基準を、現場の言葉で共有する

② 情報に“会話のきっかけ”を添える

  • 「どんな資料に反応したか」「どこを見ていたか」など、営業が話しやすくなる情報を整理して渡す

  • 数字ではなく、「なぜ今この人に動くのか」という理由を共有する

③ “渡すタイミング”と“判断の基準”を仕組みにする

  • 営業とマーケで“渡す条件”を明文化し、毎回ゼロから議論しないようにする

  • インサイドセールスがいない場合でも、テンプレートや簡易なルールで代替できる


リード数よりも、“使われ方”を設計しよう

リードを渡すことはゴールではありません。
むしろ、それは営業というアクションにつなげる“スタート地点”に過ぎません。

  • この見込み客は、営業にとって「今、話すべき人」か?

  • 渡した情報は、実際の現場で「使われて」いるか?

  • 見込み客との接点が、「成果」につながる道になっているか?

これらの問いに向き合うことで、マーケティングは
単なる“集客”から、“組織の成果に直結する存在”へと変わっていきます。


最後に:営業が動かないのではない。「動けるようにする設計」がまだ、ないだけかもしれない

営業も、マーケも、どちらも成果を出したいと願っています。
すれ違いや摩擦があるとすれば、それは「相手の温度」ではなく「設計の不在」かもしれません。

だからこそ、マーケティングが一歩踏み込むことで、
営業はもっと動けるようになる。組織はもっと連携できるようになる。

その最初の一歩は、
「混ぜて渡さないこと」──
見込み客の温度を見極め、整えて、動きやすい流れをつくることから始まります。


📬 ご相談・ご質問がある方へ
営業との連携に悩むマーケの方、動かないリードに困っている営業マネジャーの方。
私自身、そうした現場でもがきながら仕組みづくりに取り組んできました。
お悩みがあれば、ぜひお気軽にお声がけください。

▶note|となりのマーケさん
https://note.com/tonari_markesan

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