カスタマーペインを理解するには? BtoBマーケティングで顧客の“本当の課題”に迫る方法

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「顧客理解が大事」と言われて久しいですが、その“解像度”は本当に十分でしょうか?

BtoBのマーケティングや営業の現場では、課題ヒアリングやペルソナ設計、カスタマージャーニーの作成など、顧客に寄り添うアプローチが当然のように実践されています。しかし、それでもなぜか“刺さらない”ことがある──そんな違和感を抱えたことはないでしょうか。

その背景には、「ニーズは聞けても、ペインにはたどり着けていない」という現実があります。
「どうしたいか」は答えられても、「なぜそうしたいのか」は語られない。言葉にならない“痛み”の部分を見落としてしまうと、顧客にとっての本質的な価値提供にはつながりません。

本記事では、「カスタマーペイン(Customer Pain)」をテーマに、

  • そもそもペインとは何か?

  • 顧客ニーズとどう違うのか?

  • どうすれば見つけ出せるのか?

  • 見つけたあと、どう活かすのか?

といった問いに向き合いながら、顧客起点のマーケティング戦略に深みを加えるための視点と方法をお届けします。


第1章:カスタマーペインとは何か──顧客ニーズとの違いを整理する


・マーケティングにおける「顧客理解」は深化しているか?

「顧客理解が大切だ」という主張は、BtoBマーケティングにおいてもはや常識と言えるでしょう。多くの企業がペルソナを作成し、ジャーニーマップを描き、SFAやMAを通じて“数字としての顧客”を追いかけています。

しかし、顧客理解の解像度は本当に上がっているのでしょうか?

ヒアリングを通じて拾われるのは、「もっと簡単に使えるようにしたい」「導入の手間を減らしたい」といった“要望”。これらは確かに重要ですが、本当にその言葉の裏にある「困りごと」まで捉えきれているとは限りません。

顧客の声の奥にある“痛み”を捉えること──それが「カスタマーペイン」という概念です。


・カスタマーペインとは何か──定義の明確化

カスタマーペインとは、次のように定義されます:

顧客が業務や意思決定の過程で感じている、具体的かつ日常的な不快・不便・不満。表には出にくいが、意思決定や行動の背景に強く影響している感情的・構造的な障害のこと。

カスタマーペインは、「困っている」「できれば避けたい」といったネガティブな動機を伴います。これを理解することは、製品やサービスの価値を“刺さる言葉”で語るための前提条件です。


・カスタマーペインと顧客ニーズの違い

カスタマーペインと顧客ニーズはしばしば混同されますが、それぞれ注目しているポイントが異なります。

カスタマーペインは、顧客が“困っていること”や“避けたいこと”を指します。これは明確に言語化されていない場合も多く、「面倒くさい」「毎回ストレスを感じる」といった感情ベースの不快感や、業務上の構造的な障害が含まれます。たとえば、「毎回この書類作成に時間がかかって他の業務に支障が出ている」といった不満が該当します。

一方、顧客ニーズは「こうなったらいいな」「これが欲しい」といった要望や希望であり、比較的言語化されやすく、商談の場やアンケートなどでも拾いやすい情報です。たとえば「UIが分かりやすいツールが欲しい」や「対応スピードの早いサービスを探している」といった声は、ニーズの一例です。

両者の違いをまとめると以下のようになります。

  • カスタマーペインは“現状の不満”に焦点を当てており、改善されなければ回避したい状態を意味する

  • 顧客ニーズは“理想の状態”を求めるものであり、必ずしも現状への不満から生まれているとは限らない

  • ペインは感情や行動の背景に潜んでいるため気づきにくく、ニーズは言葉として表面化しやすい

  • 前者はマーケティングの「共感」や「切実さ」の源泉になり、後者は「機能提供」や「利便性提案」に活用される

このように、ペインとニーズは「対立」するものではなく、「目的」と「文脈」の違いによって使い分けるべき概念です。


・なぜ今、カスタマーペインが注目されるのか?

明確に「カスタマーペイン」という言葉が市場トレンド化しているわけではありません。ただし、その背後にある顧客起点の思考非合理な意思決定プロセスへの対応というテーマがBtoBマーケティングで重要視されているのは確かです。

以下のような市場背景がそれを後押ししています:

・差別化が難しく、共感や文脈理解が武器になるフェーズに突入している
・情報過多な中で、顧客自身も「何に困っているか」を明確に言えない状態が増えている
・マーケターと営業・CSの連携において、共通言語として“顧客のペイン”を共有する必要性が高まっている

つまり、カスタマーペインは「ただの情報」ではなく、組織間の共通理解を作るための起点とも言えるのです。


次章では、この「カスタマーペイン」と混同されやすい概念──特に「インサイト」や「ジョブ」との違いについて掘り下げていきます。

第2章:カスタマーペインと混同しがちな概念──インサイト・ジョブとの違い


・なぜ概念が混同されるのか?

BtoBマーケティングにおいて「顧客理解を深めよう」とすると、次のような言葉が飛び交います。

  • 顧客インサイト

  • ジョブ理論(Jobs to Be Done)

  • カスタマーペイン

いずれも“顧客の本質的な課題を理解するための視点”として紹介されるものですが、定義や使い方が曖昧なまま「なんとなく同じもの」として使われてしまうケースも多く見られます。

それぞれの概念の違いを押さえることで、カスタマーペインという切り口がどのような位置付けで、どのようなシーンに活かせるのかを明確にすることができます。


・各概念の定義と整理

BtoBマーケティングにおいて顧客理解を深めるために用いられる概念には、「カスタマーペイン」「顧客インサイト」「ジョブ(Jobs to Be Done)」の3つがあります。それぞれの意味と、どこに焦点を当てているかを整理すると、以下のような違いがあります。

まず、カスタマーペインとは、「顧客が業務や意思決定のなかで感じている不快・不便・不安」といった“避けたい状態”を指します。顧客が言語化していないことも多く、感情的・構造的な“困りごと”の源泉とも言えます。焦点は「何に困っているか」にあります。

次に、顧客インサイトは、顧客の行動の背後にある“無意識の動機”や“価値観”に基づいた気づきのことです。「なぜそう感じるのか」「なぜそれを選ぶのか」といった、心理的な真実に迫る視点で、焦点は「なぜそう感じているか」にあります。

最後に、ジョブ(Jobs to Be Done)は、「顧客が製品やサービスを使って“達成したいこと”」に注目する考え方です。単なる機能の利用ではなく、「状況を進歩させたい」「何かを成し遂げたい」という目的を起点にします。焦点は「何を達成したいか」にあります。

このように、似ているようでそれぞれ違う角度から顧客を見ているため、同じ顧客の声でも、どのレンズで見るかによって見える意味が変わるのです。


・事例で見る概念の違い

たとえば、あるBtoB顧客が「今の営業管理ツールは使いづらい」と言っているとします。

その背後にあるそれぞれの解釈は以下のように異なります。

  • カスタマーペイン
     「入力が多すぎて、現場の営業が疲弊している」
     「上長の確認が遅く、進捗が滞るのがストレス」

  • 顧客インサイト
     「管理されることに対する拒否感がある」
     「現場に裁量を与えられたいという欲求がある」

  • ジョブ(JTBD)
     「自分の営業進捗をスムーズに共有・報告したい」
     「自分の評価につながる数字を“見せられる形”で管理したい」

このように、同じ表面的な不満でも、切り取り方によって導き出される示唆や打ち手がまったく異なるのです。


・どう使い分けるべきか?

カスタマーペインは、「顧客が苦しんでいること」にフォーカスするため、課題発見や共感形成に特に向いています
一方で、ジョブ理論はプロダクト設計やベネフィットの設計に、インサイトは感情的な訴求やクリエイティブ設計に強みがあります。

マーケティング全体で見ると、それぞれの概念は補完関係にあります。
そのため、「いま自分たちはどの段階で、何を知る必要があるのか?」という目的意識が重要になります。


・よくある混同・誤解パターン

・“ジョブ”をカスタマージャーニーの1工程だと誤解してしまう
・“インサイト”という言葉であれば顧客理解しているように見えるので、多用されるが、実は「なんとなく」でしか掴んでいない
・カスタマーペインを、単なる機能要望や業務課題としか捉えていない(「面倒くさい」や「時間がかかる」の奥にある構造を見ない)

これらは、現場でも企画会議でも頻繁に起こりがちな“概念の薄まり”です。マーケターが用語を使うときこそ、意味の粒度を揃えることが、戦略の一貫性につながります。


次章では、このカスタマーペインを“発見する”ための実践的な手法──ヒアリングと観察の技術について詳しく掘り下げていきます。


第3章:カスタマーペインの把握方法──ヒアリングと観察の技術


・“聞いても出てこない”前提に立つ

カスタマーペインの難しさは、その多くが「顧客自身もはっきり言語化できていない」ことにあります。
したがって、「アンケートで取れない」「ヒアリングしても答えてくれない」のは当たり前であり、そもそも“聞けばわかる”という前提を捨てることが、ペイン把握の第一歩です。


・ペイン発見に有効な3つの手段

カスタマーペインを発見するためには、以下の3つの手段を組み合わせることが有効です。

・① インタビュー設計の工夫

表層的なニーズではなく、深層のペインを探るには、質問の仕方に工夫が必要です。
特に効果的なのは、以下のような「状況」「感情」「理由」に関わる問いかけです。

  • 最近どんなことで“イラッ”としましたか?(感情)

  • なぜその対応をされたのですか?(動機・制約)

  • それが起きると、どんな影響があるんですか?(構造)

このような問いは、「何が欲しいか」ではなく「何に困っているか」を浮かび上がらせるため、顧客の自己認識以上の気づきを引き出すことができます。

また、定量的な満足度や導入理由ではなく、「なぜそれを選んだのか」「選ばなかった選択肢は何だったか」を聞くことで、ペインの輪郭がより明確になります。


・② 顧客の行動や“面倒な工程”の観察

ペインは“行動”に表れます。特に以下のような行動に着目すると、言葉にならない苦しさを発見できます。

  • 社内で何度も同じ説明をしている

  • メモやエクセルなどで独自の管理フローを作っている

  • サービスを導入しても、定着していない

これらは顧客が「解決したいけど、まだ解決できていない課題」を持っている兆候です。
営業・CS・サポートといった接点部門の声を横断的に集め、行動パターンの“なぜ”を問い直すことで、言語化できていないペインが見えてきます。


・③ 社内にある“顧客の声”を再編集する

ペインは、現場にすでに落ちていることも多く、必ずしもゼロから探しに行く必要はありません。
特に以下のような情報を“構造的に再編集する”ことが重要です。

  • サポートや問い合わせの履歴

  • 営業日報の記述や商談録

  • 失注理由、契約延期理由の定性コメント

  • NPSやレビュー、SNSの口コミ

これらは単体では断片的でも、複数の顧客が似た状況を語っていれば、そこには共通のペインがある可能性があります。

“言葉の温度”に注意を払い、単なる要望ではなく、「何に困っているのか」「なぜ変えたいのか」に注目して再構成することが鍵です。


・ペイン把握の落とし穴と注意点

  • 「何が課題ですか?」という問いは、抽象的すぎてペインを引き出せない

  • フィードバックを受け取るとき、言葉通りに受け取ると表層で終わる

  • 営業やCSの声を“属人的な感覚”として片付けてしまうと、本質を見逃す

重要なのは、顧客の言葉をそのまま鵜呑みにせず、その奥にある「構造」「背景」「感情」を探る視点を持ち続けることです。


次章では、こうして発見したカスタマーペインを、どのようにマーケティングや営業戦略に活かしていくのか──「活用編」として展開していきます。


第4章:カスタマーペインを起点にした戦略設計──どう活かすか


・ペインを“見つけたあと”が本当のスタート

カスタマーペインは、ただ“知る”だけでは意味をなしません。むしろ、戦略や施策にどのように組み込むかが最も重要です。
この章では、カスタマーペインを実務に活かすための設計手順と活用例を紹介します。


・カスタマーペイン活用の基本プロセス

ペインをマーケティングや営業活動に反映させるには、以下のようなプロセスが有効です。

ペインの言語化と構造整理
 まずはペインを単なるエピソードで終わらせず、「誰が・どんな状況で・なぜ困っているのか」を整理し、社内で共通理解を持てるように言語化します。
 例:「営業がSFAを使ってくれない」→「入力作業が煩雑で、評価に直結しないため優先度が下がっている」

セグメントごとのペインマッピング
 顧客タイプ(業種・役職・業務範囲など)ごとに、共通しやすいペインをグルーピングします。
 これにより、訴求メッセージや支援コンテンツの精度が高まります。

マーケティング施策やセールスコンテンツへの展開
 整理されたペインを起点に、以下のような施策に落とし込んでいきます:

 - LPやホワイトペーパーのタイトル・構成に反映
 - ウェビナーや展示会のテーマ設定
 - 商談時のストーリートークや課題提示型資料
 - 成功事例紹介の切り口

成果測定とアップデート
 訴求が「刺さったか」「行動に影響したか」を測定し、次の企画にフィードバックします。ペイン自体が変化する可能性もあるため、定期的な再ヒアリング・再観察が不可欠です。


・実践での活用例:ペインベースで変わるメッセージ設計

たとえば、以下のように訴求の「起点」を変えるだけで、印象や反応は大きく変わります。

  • 機能訴求:
     「最短3分で日報が書けます」
     → 操作性の良さを伝える

  • ペイン起点:
     「“毎日の報告作業が負担すぎる”と感じていませんか?」
     → 顧客の苦しみに寄り添う共感型の訴求

同じ製品を紹介する場合でも、「不の解消」から始まるメッセージは“自分ごと化”の起点になります。特にBtoBでは、合理性と同時に“現場のしんどさ”への理解が信頼につながります。


・組織としてペインを扱うときの注意点

・“誰かの主観”として扱われがちなペインを、定量情報だけで否定しないこと
・営業・CS・マーケがそれぞれ持つ「顧客のリアル」をつなぐ場づくり(共有会・横断ミーティングなど)が必要
・全ての訴求をペインベースにすると、ネガティブな印象だけを残してしまう可能性もあるため、解決の先にある明るい未来も提示すること

ペインは、強力な共感の源泉である一方、扱い方を誤ると“煽り”や“押し売り”にもなりかねません。
「顧客の目線で、本当に役に立ちたいのか」という姿勢が試される領域とも言えます。


次章では、ここまでの議論を踏まえ、BtoBマーケティング全体における顧客起点思考の意義と実践への示唆を、まとめとして整理していきます。


第5章:顧客起点で考える──カスタマーペインが導く組織の進化


・マーケティングは「ペインに始まり、未来で終わる」

本記事では、「カスタマーペイン」を軸に、顧客の本質的な課題をどう捉え、どう活かすかを探ってきました。

ここで改めて、マーケティングにおけるカスタマーペインの意義を整理すると、それは単なる“共感の材料”ではなく、顧客との信頼構築、課題提起、そして未来への伴走の起点になるということです。

マーケティングの役割は、顧客のペインを見つけて終わりではありません。
そこから「どうしたら抜け出せるのか」「その先にどんな状態を実現できるのか」を示し、顧客にとっての“進化の道筋”を描くことにあります。


・顧客理解の精度が組織を変える

カスタマーペインという視点は、単にマーケティング活動のためだけに存在するものではありません。むしろ、その活用次第で組織の在り方すら変える力を持ちます。

  • マーケターは、社内の誰よりも顧客の課題に詳しい存在になれる

  • 営業やCSと、単なる“情報共有”を超えた“共通理解”を築ける

  • 社内の戦略会議において、数字だけでなく「現場のリアル」を語れる立場になれる

顧客の痛みを深く理解し、それを“マーケティング資源”として活かすことで、顧客起点の文化を牽引するマーケターへと進化するのです。


・まずは「観察」と「再構成」から始めよう

もし今、手元に顧客インタビューがなくても、アンケートデータがなくても、始められることがあります。
それは、すでに社内にある「顧客の声」や「行動の兆候」を、ペインの観点から読み直してみることです。

  • サポート宛の不満

  • 商談メモに残された“言いにくそうな一言”

  • 定着しなかった機能や機会損失の履歴

こうした情報に「構造」や「背景」を与え直すことで、意外なほど多くのカスタマーペインが見えてきます。
そこから、より本質的な施策の設計へと進むことができます。


・となりのマーケさんから最後に

カスタマーペインという考え方は、マーケティングの成果を高めるための「技術」であると同時に、「姿勢」でもあると感じています。
数値やデータの背後にいる“人の苦しさ”に目を向け、その言葉にならない感覚をすくい取ること。
それが、BtoBマーケティングにおける本当の価値づくりではないでしょうか。

…ちょっとガッツリと書き過ぎました💦
多分次からはもう少しゆったりと書いていきます。


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