Photo by
voice_watanabe
自然界のデスマッチ、それを見つめる幼子たち(虫の話です)
子の散歩の途中、民家の塀でぴんぴんと動くものが視界に入った。
小さな蜘蛛の巣にかかった丸々太ったアオムシが、アオムシの頭ほどの大きさの、にじり寄ってくる小さなクモにあらがっていた。
「アオムシさんなにしてる?」
長男がきく。
「クモさんの巣にひっかかっちゃったんだね。」
私が答える。
アオムシは蜘蛛の糸を外そうと体を跳ねさせ、クモはアオムシに近づく隙を伺っていた。
長男は顔を近づけてじーっと2匹を見つめた。
次男もベビーカーの上から、長男と同じようにじーっと見つめる。
「あ、いま噛んだね。」
1回、2回、3回。
クモが素早くアオムシの頭に覆いかぶさっては離れる。
「クモさんが噛んで、アオムシさんに毒を入れたね。」
長男と次男の様子を見ながら、私は言葉少なに解説する。
スポーツ中継は、解説者が冷静で言葉少ない方が私は好みだ。
長男は神妙な顔をして、沈黙したままクモとアオムシの死闘を見る。
次男はクモの素早い噛みつきが繰り出されるたびに、拳を振り上げて「ヒァー!」と叫び、興奮気味だ。
噛まれる回数を重ねるたびに、アオムシの動きが鈍くなっていく。
もうクモはアオムシを恐れない。
長男は畏怖の混じった顔で言った。
「もう行こう。」
すっとその場を離れる長男を、名残惜しそうな次男を乗せたベビーカーを押して追いかける。
そこに善悪はなかった。
長男と次男は、虫たちのデスマッチを見て何を思ったかな。
ママ、聞かないでおくね。
とりあえずママは、つやつやとしてぷりぷりした薄緑のアオムシを、美味しそうだと思いました。
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