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オトコのてっぺん

「おっまえ、漢(オトコ)のなかの漢(オトコ)だな!」
普段から口の悪い部長が顔をくしゃくしゃにし、フロア全体に響き渡るほどの大声をあげた。
納期1ヶ月前に下請け会社が飛んでしまい大ピンチとなったプロジェクトを、社会人一年目で戦力と思われていなかった私が「救ってしまった」ことで部長が私を褒めたのだ。

嬉しかった。光栄だった。
オトコの中のオトコ。
私にとって、最上級の言葉だった。

男女平等、男らしさの押し付けという点で問題をはらむ言葉ではある。
でも現時点の日本語で、「オトコの中のオトコ」に代わるちょうど良い言葉を私は知らない。
「豪傑」とかかな?なんかちょっと違うな。
とにかく、性別を表す男ではなく、概念としてのオトコという言葉を使って、部長は私を褒めちぎった。
私は部長のはじけるような笑顔とともに、その言葉を心の一番目立つところに掲げることにした。

仕事をする間、それは燦然と輝きつづけ「反対意見を言ったら可愛げがないと思われるだろうか。」などというためらいを跡形もなく吹き飛ばしてくれた。
上司がおかしいと思えば遠慮なく意見し、メンバーの失敗で顧客に迷惑をかけたときにはリーダーとして深く頭を下げて挽回策を請うた。オトコの中のオトコは、いつだって全力でぶつかりにいく。
仕事を、思いっきり、できた。


数年のうちに会社は合併を繰り返し、社内の顔ぶれも変わってきた。
私を変に「女扱い」しなかった職場にも、セクハラじみた人が増えてきた。
女性社員も「女らしく」綺麗に着飾った人が増えた。

パンツスタイル、ぺたんこ靴が定番だった私に、周りは執拗に「スカートとヒール靴を履いた方がいいって。」とすすめてきた。
うるせーなぁ、毎日毎日。うっとおしいから履いてやるよ。
ヒラリとした膝丈のスカート、7cmヒール。
装いを変えた私を、彼らは絶賛した。
薄っぺらい。なんて薄っぺらいんだろう。

新規顧客獲得のための勝負のプロジェクト。そのリーダーに抜擢された。
途中何度かトラブルに見舞われながらも社内外で調整を重ね、うまく着地させることができた。
顧客の役員と固い握手を交わしてほくほくしながら自社に戻った私に、常日頃から女子社員をキャバ嬢と勘違いしているかのような10年上の男が言った。
「あれでしょ、色仕掛けしたんでしょ。」
お前はバカなのか。顧客をも侮辱したということに気づかないのか。


私をオンナに押し込めようとする人が増えた社内で、変わらず成果をあげつづけられたのは部長の言葉が支えてくれたから。
部長、部長。転勤して、一緒にお仕事できなくなってから久しいですが、私は今でも私のまま、捻じ曲げられることなくやっています。

私はオトコの中のオトコだ。
くだらない男たちを遥か下方に置き去りにし、オトコのてっぺんを獲ってやる。

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