デヴィッド・ボウイ お蔵入りも高クオリティ 最後まで変革し続けたロック・スター 洋楽ロックへの招待状その19
ロック・スター
ロックと言えばローリング・ストーンズと別の記事で書かせていただきました。これは好き嫌いを越えたところでそうだと思うのですが、ロック・スターと言ったら、この方デヴィッド・ボウイですね。その音楽はもちろん、ファッションやアルバムジャケット等のビジュアルイメージ、そしてその人生そのものがトータルでロック・スターと言える存在だと思います。私は順番としてはイレギュラーな形で聴きはじめたのですが、どこからどう聴いてもすごい人です。
屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群
私が洋楽を聴き始めた頃はボウイさんが「Scary Monsters」を出していて、すでに洋楽ロックの中で確固たる地位を築いていたころです。当時、特にはっきりした理由はなくなんとなく積極的には聴きにはいきませんでした。それを180度変えてしまったのが深夜放送で聴いた「Starman」。とにかくポップでキャッチー。早速、収録アルバムを調べて「The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars」(発売当時の邦題は「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」直訳ですね。これはすごいセンスです。)を購入しました。宇宙からやってきたロック・スターの栄枯盛衰を描いたトータルアルバムになっていて、これは最高でした。今でも最高です。収録曲は名曲揃い。ボウイさんには名盤数々ありますが、これは必聴ですね。ボウイさんのロック・スターとしてのイメージのベースはこれですね。
シリアス・ムーンライト
しかし、財源と時間の問題でボウイさんをさらに開拓するには至らずにいたのですが、1983年の来日公演で再起動。ボウイさんがヒット(特にアメリカでしょうか)させてやると本気になって(と私は受け取っていました)つくったのが「Let's Dance」。80年代、プロデューサーの時代です。そこで招いたのがシックのギタリスト、ナイル・ロジャース。これが大成功。売ると決めたら売ってしまうのです。さすが。さらに日本ではボウイさんが出演していた大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」が大ヒット。
こんな盛り上がりまくった状態でシリアス・ムーンライトと名付けられたツアーの一環で来日が決定。会場は日本武道館。新宿のプレイガイドに早朝から並んでチケット買いました。席は2階西スタンド。これが致命的でした。大がかりなセットで柱をイメージしたと思われるものがステージ上にぶら下がっており視界を遮っておりました。ボウイさんの姿はコンサートのほぼ半分見えませんでした。残念。さらに事前の情報知りすぎていたことも良くなかった。セットリストの全貌や曲による演出も雑誌で詳細に紹介されていて、1曲目はこれだし、アンコールの最後はこれと、なんだかその確認をしている感じになってしまいました。後からこのツアーの音源を聴くとそんなに悪くなかったのですが、席と事前情報過多で今一つの印象が残りました。アルバム「Let's Dance」はかなり聴いたのですが、ここでもさらにさかのぼって聴くということにはなりませんでした。
ライコディスクの再発作戦
ボウイさんの魅力に本格的にはまったのは、ボウイさんの過去の作品をボーナストラック付きリマスターで再発していく「Sound + Vision」と名付けられたキャンペーンの時です。1989年、再発に先立って発売されたのが同名のボックスセット。CD3枚とCDV(映像が見れるCDの規格なんですが、今は残っているのでしょうか?)のセットで内容は未発表曲、別バージョンが満載。代表曲は見事にはずしてあり、本当はオリジナルアルバムをすべて聴いたうえでアタックするのが正しいかと思ったし、高額なので迷ったのですが、結局レンタルでとりあえず聴きました。
未発表曲というとお蔵入り、つまりレコーディングはしたがアルバムなりシングルなりで発表する水準にないと判断されたものというのが一般的な解釈ですが、ボウイさんの場合、まったくこれにあてはまりません。公式発表曲となんら遜色ないばかりか、ほんとにお蔵入り?なぜ入手困難?と思うぐらいの曲が続きます。この中で私にとっての目玉はボウイさんがカバーするブルース・スプリングスティーンの「It's Hard To Be A Saint In The City」。とにかくこの組み合わせが驚愕。まったく音楽的に違う二人なんですが、これが聴いてみるとまったく違和感なし。まだヒットを飛ばす前のスプリングスティーンさんを見つけるボウイさんのセンス恐るべしです。未発表でこのクオリティ、もうこれはオリジナルを聴かないとと本格的にボウイさんワールドにはまっていきました。ライコディスクの作戦どおりです。
ライコディスクによるこの時期の再発シリーズはボウイさんの作品に対する知識と愛情にあふれていて聴き逃せません。この再発がなかったらボウイさんを全部揃えようとは思わなかったかもしれません。音源のリマスターとジャケットの丁寧な再現によってオリジナルの良さがよくわかるのはもちろんですが、各アルバムに追加されたボーナストラックがまた素晴らしい。(ボックスにいれてもまだあるのがすごい)例えば「Station to Station」(もちろん本編も素晴らしいです)の「Stay」のライブ。オリジナル以上の迫力。これ1曲だけでも買う価値ありでした。今はこの時期のライブ盤がフルで発売されていてそこで聴けますし、全オリジナルアルバムと未発表音源をまとめた豪華ボックスセットシリーズもあります。ちょっと把握できないぐらい聴ける音源が多くなってうれしいのですが、なかなか追いつけない物量になっています。これからも増えそうだし。
この「Sound + Vision」キャンペーンのツアーはベストの選曲で来日公演も行われました。バックには当時のキング・クリムゾンのメンバー、エイドリアン・ブリューもいて今考えると豪華だったのですが、会場が東京ドームということでパスしました。その後、何度か来日公演があったのですが、結局、なんだかんだで行けませんでした。今思うと本当に残念。特に最後となってしまった「 Reality Tour」。これは別会場のものを映像版で観たのですが、バンドとの呼吸もぴったり、選曲もよく最高でした。残念。
★
2016年、ボウイさんは遺作となる「★(Blackstar)」を自身の誕生日に発表、そして亡くなります。このアルバムも最後とは思えないぐらい新しい音に仕上がっています。バンドと違ってメンバーチェンジをするとか解散するとかできないソロ・アーティストが最後の最後まで「変革」し続けるというのはやはり只者ではありません。最後の最後までかっこいいロック・スターでした。
