先回りの事前アンケートで余白を生む|生徒が主役のクラスづくりと「手綱を引く船頭」
前回の記事では、教員の時間を生み出し、生徒の成長を引き出す「先回りのデータ管理術」についてお話ししました。
今回は、その生み出した「時間と心の余白」を使い、さらに先回りしてどのようにクラスという組織を作っていくのか。1年間を左右する学級組織決めの事前アンケートを例に、教員にさらなる余白を生み出すクラス運営の軸についてお話しします。
その場での「いきなり勝負」は避ける
係・委員会といった学級組織決めなど、クラスの骨組みが決まるタイミング。特にクラスの要となる学級委員は、力のある生徒や育てがいのある生徒を見極めて選出しないと、クラスの方向性が傾き、結果的に担任の負担も大きく変わってしまいます。だからこそ、私は必ず事前にアンケートや希望調査を行っていました。
また、この事前アンケートは学級組織決めだけでなく、定期的な「席替え」や、合唱コンクールの指揮者・伴奏者といった「行事の代表決め」など、あらゆる場面で非常に有効です。
最近の子どもたちは、周りに遠慮したり、その場で手を挙げる勇気が出なかったりする子がたくさんいます。また、本当は力がある子ほど、空気を読んで他の子に役職を譲ってしまうこともあります。全員がいる教室という空間で、いきなり「やりたい人?」と勝負に出るのは非常に危険です。何が起こるか分からないリスクがありますし、生徒の本当の思いを取りこぼしてしまいます。
事前に話を聴くことで生まれる「心理的安全性」
事前にアンケートを取り、時には個別に呼んで話を聴く。
このワンクッションを挟むことで、生徒との間に深い信頼関係が生まれます。生徒は「先生は自分の意見を聴いてくれる」「失敗しても先生がしっかり守ってくれる」と安心し、その心理的安全性があるからこそ、思い切って挑戦できるようになるのです。
同時に教員側も、クラスの全体像と先の見通しを立てやすくなります。生徒の心を育てながらリスクも回避する、立派なマネジメントの一つです。
自由には責任が伴うことを教える
ただし、生徒の意見を汲み取ることは「何でも言うことを聞く」という勝手なわがままを許すこととは違います。
アンケートを書くときや、皆の前で発言・発表する際には、その目的や「他者へのリスペクト(配慮)」といったルールを事前にしっかりと指導します。自由には責任が伴うということを教えるのも、教員の重要な役割です。
トップダウンではなく「横の関係」を築く
教員がパワーで押し切り、自分の思い通りに生徒を動かそうとする「トップダウン型の支配」になってはいけません。先生が一番偉いわけではなく、学級とは生徒と教員が「共につくり上げていくもの」です。
アドラー心理学に、「横の関係」という考え方があります。教員と生徒は、知識や役割の違いはあっても、人間としての価値は「対等」であるという考え方です。
もちろん子どもですから、未熟で間違えることもたくさんあります(時に大人だって間違えますよね)。だからこそ、上から押さえつけるのではなく、経験のある人生の先輩として、方向性を示してサポートすることが必要なのです。
デジタルツールの活用で「集計も一瞬」に
昔はこうしたアンケートも紙ベースで配り、自分で一つひとつ集計しなければならず本当に大変でした。しかし、今の時代は違います。
Googleフォームやロイロノートなどの便利ツールを活用すれば、一瞬で集計結果を見ることができます。これらを駆使して先回りすることで、教員の業務はさらに効率化され、生徒と向き合うための大きな「時間と心の余白」が次々と生まれていくのです。
見えないところで「手綱を引く船頭」になる
事前の準備やツールの活用によって教員側に「時間と心の余白」がある分、生徒に任せられる部分を意図的に増やすことができます。自分たちに任されているという実感は、生徒に責任感を持たせます。スモールステップでも成功体験を積むことで自己肯定感が向上し、次第に「自分たちで考えて動く」という主体性が生まれてきます。
クラスの雰囲気が良くなり、生徒たちが生き生きと自主的に動いている。しかし実は、教員が全体を俯瞰して見ながら、見えないところでしっかりと手綱を引き、進むべき方向へと船頭をしている。
生徒を枠に押し込めるのではなく、彼らが自ら育つための「土壌」と「安心感」をデザインする。これこそが、真の学級経営であり、生徒の主体性を伸ばす最高のアプローチだと私は信じています。
