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耳の聞こえない祖父との会話で感じたAppleとアクセシビリティの未来

「耳が聞こえない人との会話」と聞くと、どんな方法が思い浮かぶだろうか。

多くの人がまず初めに思い浮かべるのは筆談や手話だと思う。
筆談とは字の通り、紙などに文字を書いて意思を伝え合う方法で、手話とは手指の動きや表情などを使って概念や意思を視覚的に表現する視覚言語だ。

しかし、それらが適さない場面、使えない場面に遭遇したら他に何か方法はあるだろうか。

行き着いた答えがiPhoneに搭載されている「ライブキャプション」だった。

耳が聞こえない祖父とのコミュニケーション

筆者の祖父は幼い頃の感染症が原因で聴覚に障がいがあり、音がほとんど聴こえていない。そのため、普段の会話は手話か筆談だ。それらは健常者同士の会話に比べたら手間はかかるが、私たちにとってはそれが当たり前の日常であり、大きな不自由を感じることはなかった。

しかし、家族で唯一手話を習得している祖母が入院したことで、状況が少し変わってしまった。

7月、祖母が手術のため長期間入院することになり、3連休の間に筆者を含め家族で身の回りのお世話をするために祖父のところへ行くことになった。

普段の祖父を含めた私たち家族のコミュニケーションスタイルは、健常者はいつも通りに会話をし、会話の 『間』で祖母が手話を用いて通訳を行う、といった感じだ。(この『間』も、聴覚障害者を交えた会話で自然発生するもので、放送事故と表現するようなものと性質が異なる)

しかし、筆者含め私たちの中には手話を使える人はいない。また、祖母のように『間』で通訳することにも慣れていないので置いてけぼりにしてしまうと感じた。

そこで活用したのがiPhoneの「ライブキャプション(リアルタイム文字起こし)」機能だ。

ライブキャプションの実力と問題

この機能は、iOS 26など2025年秋のアップデートで日本語でも利用可能になった機能で、iPhoneやiPadなどにアクセシビリティ機能として標準で装備され、追加のアプリを入れる必要はない。筆者自身、この機能自体は知っていたが使ったことはなかった。

使い方は簡単で、「設定」から「アクセシビリティ」、聴覚の項目にある「ライブキャプション」を選択して、オンにするだけだ。表示される文字の大きさや色も自由にカスタマイズできる。

2日間使ってみた結果、「意外にしっかり文字起こしをしてくれた。」というのが率直な感想だ。オンデバイスで処理をしている影響もあってか、タイムラグもほとんどなく、精度も音声入力と同じレベルのように感じられた。祖父も「これすごいな、何を話してるかわかるわ」と話していた。

iPhone Airに表示されたライブキャプションの画面。「練わさびがさなんか
もうちゃうから辛い
んな辛い。おい卵に
煮るめっちゃわさび
辛い」「本当に辛い本当にわさびは辛いでしたけどびっくりしたんど
こに晩御飯お見舞い
お見舞いお見舞いに行ってこれなんかお
ばあちゃんから別に」と表示されている。
ライブキャプションを使用した際の画面(イメージ)
文字のサイズや太さ、背景/文字色は自由に変更できる

一方で固有名詞に弱かったり、iPhone本体のマイクを使うがゆえ、環境に左右されて精度が落ちるという問題もあった。しかし、これらは音声入力機能でも同様であり、使う前から想像できたごく一般的な問題だ。

しかし、耳が聴こえない祖父と使うことで想像していなかった問題点が見えた。

それは「誰が喋っているか分からない」ということだ。

これには2つの要因があると思われる。

ひとつ目は、「ただの文字起こし」だということだ。
現在のライブキャプション機能はiPhoneが拾った音声をただ文字起こしするもの。そのため複数人で会話していても、1つの文章にまとまってしまい「誰が」それを喋っているのかが判別がつかないのだ。

iPhoneのライブキャプション画面のイメージ。赤い円の中にマイクのアイコンがあり、その下に「仕方ないなんで生物の人じゃないでしょ親は科学の人。物どっちでもないよ。いや虫がねっていう。あんたたちが好きなだけでしょ。アリの穴にずっと棒を突っ込んで学校から帰ってこないとか。 2人で2つの穴から水を攻めをするとか、散々やられていましたね。ですよ。」と表示されている。
実際には3人で行われている会話だが、まとめて表示されてしまうので誰がどの部分を喋っているかが非常に分かりずらい(イメージ)

ふたつ目は、「相手の顔を見れない」ということだ。
私たちは普段、目と耳の両方を使って「誰が話しているか」を判断している。しかし祖父は、視覚を用いて「口が開いている人=喋っている人」という基準でそれを判断している。iPhoneにしろ、iPadにしろ、それらはテーブルなど定位置に置かれているため、目線が常に下を向いてしまう。そのため、「何を喋っているか」はわかるが「誰が喋っているのか」は内容から想像するしかないのだ。

また、これによって祖父がコミュニケーションに入って来れないという問題も発生した。

これまでは、会話→手話通訳→会話 という流れだったので、祖父の言いたいことを拾うタイミングが必然的に存在していた。しかし通訳も発生せず、目を通じたコミュニケーションができないため、祖父の言いたいことを拾うタイミングが発生しない。祖父もキャプションを目で追っていることで、会話の内容や文脈を読み取ろうとするが、絶え間なく文字が起こされるため、そこに必死になってしまう。言いたいことがあっても、自分が目を離しているうちに会話が変わってしまうし「ただ文字でラジオを聴いているだけ」のような状態になってしまったのだ。

また、すこし違う角度での問題として、「都合の悪い話も文字起こしされてしまう」という問題も発生した。

これは健常者側の都合なのだが、子育てにしろ介護にしろ、「本人には伝えなくていいこと」があるはずだ。もちろんその人の悪口を言っているわけではないが、我々家族は「祖父は耳が聞こえていない」ということを踏まえて何十年も会話してきた。故に基本的に手話を介さなければ、本人には伝えなくていい情報はシャットアウトできた。しかし、ライブキャプションは、そんなことはお構いなしに拾った音声を文字起こしする。これは慣れと、文字起こしの精度で解決することかも知れないが、今の所、健常者にとっては最も不便なポイントだろう。

これらの問題で「誰が喋っているか分からない」という問題のうち、「相手の顔を見れない」ということについては、ひとつ解決策を思いついた。

それが、Apple Vision Proだ。

Apple Vision Proで試す

Apple Vision Proとは、Appleが販売する空間コンピューティングデバイス(一般的にはAR・VRヘッドセットに近いカテゴリーの製品)だ。

課題を感じた翌日にApple 梅田を訪れ、Apple Vision Proのデモ内でライブキャプションを試してみた。一度体験した人は想像しやすいと思うが、Apple Vision Proはアプリウィンドウを空間上の自由な場所に設置することができる。

実際にデモで試させてもらった結果、相手の顔を見ながら何を言っているか理解するという面では非常に優れていると感じた。デモでは1対1のため複数人での会話でどうなるかまでは分からなかったが、話者の近くにキャプションを配置できるため、1対1では相手の表情と字幕を同時に見ることができた。複数人での会話については検証できていないものの、ウィンドウの配置次第では改善の可能性があると感じた。

Apple Vision Proユーザーの視点から表示されている、visionOSのライブキャプション。
Apple Vision Proでライブキャプションを使った際のイメージ(ソース: Apple)

しかしながら現行のApple Vision Proは重量があり、長時間装着すると暑さや目の疲れも感じるし、屋外での使用も想定されていない。今年85歳になる祖父が日常的に使うには、まだハードルが高いと感じた。それでも、相手の顔を見ながら字幕を確認できるという体験は、iPhoneでは得られなかったものだった。将来、より軽量なグラス型デバイスとして実現すれば、聴覚障害者とのコミュニケーションは大きく変わる可能性があると感じた。

Designed by Appleのグラス型デバイスへの期待

これらの体験を踏まえて、Appleが出すであろう「グラス型デバイス」についての推測と期待を述べたい。

2026年は上半期だけでもGoogleやMetaなどの大手からテックベンチャーまで多くの企業がグラス型デバイスを発表/発売し、「グラス型デバイス元年」のような年になりそうだ。しかしAppleは開発してはいると思われるが、未だ噂の域に留まっている。

Appleがグラス型デバイスを出す場合、体験としてはApple Vision Proと似たようなもので単体で動作すると思われる。(iPhoneと接続してiPhoneのディスプレイが表示されるようなものではないということ)

また、新しい機能はもちろんだが、今回のことを踏まえるとアクセシビリティについても大きな期待を抱いている。AppleがApple Vision Proを発売した時、すでに数多くのアクセシビリティ機能を搭載していた。そして現在もアクセシビリティ機能は毎年増え続けている。また、MacやiPhoneでもApple Intelligence(AI)を用いたアクセシビリティ機能も増えている。

さらに、2026年9月にCEOへ就任するジョン・ターナスは、大学時代の卒業制作で、四肢麻痺の人が頭の動きによって操作できる食事支援用の機械アームを開発している。Appleも公式発表の中で、ターナスが「Apple製品はすべての人のためにあるべきだ」という考えのもと、アクセシビリティ分野の革新を推進してきたと紹介している。こうした経歴からも、Appleがアクセシビリティを重視する姿勢は、今後も続くだろう。

Appleがスマートグラスを出す頃には、祖父は90歳くらいになっているかもしれない。認知症の症状もあり、新しいことをおぼえるのもなかなか厳しくなっているが、発売されたらまっ先に手に取って、祖父とのコミュニケーションを楽しみたいと思う。

Tora | とらのすけ
*執筆にあたり、添削等にAIを使用しています。

*おことわり
本記事における聴覚障害やそれに関連する見解等は、筆者の経験に基づくものです。障害の度合いには個人差があり、すべてに当てはまるものではありません。

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