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[企画参加作品]鍋の具は #シロクマ文芸部

鍋の具は溶けないものに限る。

あの冬、この決まりを破った恐怖を、我々は身をもって味わったのである……

時は1999年。
恐怖の大王が来るとか来ないとかの予言を見事にスルーし、世の中がミレニアムに浮かれている頃。
我々6人は山のコテージに集まった。

1人、2〜3品の鍋の具材を携えて……

どうしてわざわざ鍋パーティーのために、山奥のコテージを一棟借り切ったのか。
聡明な読者の皆さんはもうお気づきのことだろう。

そう、今宵開催されるのは普通の鍋パーティーではない。
昭和世代の一種の憧れと言っても過言ではない、あの伝説の鍋パーティー。

『闇鍋』だ。

常識人の我々は、開催されるパーティーが『闇鍋』という時点で、食べ物以外入れないなど、いくつかの決めごとを作った。

もちろん皆その注意事項に従ったし、自分も食べなければならないというリスクが、『闇鍋』に対する大胆な一歩を踏みとどまらせたのだった。

日中のアクティビティも終え、迎えた日暮。
満点の星空の下、パーティーの幕が切って落とされた。

ルールは簡単。
各自熱処理が必要なものは事前に調理し、隠し持って自席につく。
基本の鍋はできているので、暗闇の中で蓋を開け、それぞれが持ってきた具材のうち1品を鍋に投入。そして順繰りに皿に取ってゆき、食べる。ただそれだけ。

1巡目。
うん、さすが常識人の集まり。
ふやけた菓子や、やたらと歯応えのいい何かは入っているものの、素の鍋の味を害するものはない。

2巡目。
先ほどよりも果物が増えた。
中でも我々を苦しめたのはミカン。
どうやら1巡目ですでに投入されていたものもあったようで、爆発寸前の果実を引き当てた者は、熱々の果汁に悶絶した。

残るは最後の1巡。

もう具材を入れ切った者もおり、これまでの傾向からしても、今回のイベントは楽しい思い出として終わるであろうと気を抜いた3巡目。

我々は失念していた。
こういうイベントに全力投球する者がいたことを……

「まだ具材ある人ー」

闇鍋マスターの問いかけに、数人が答える。
皆が粛々と具材を入れる中、そいつは声を上げた。

「ちょっと心配だから、入れたらすぐ取って」
「え? 食べられる物なんでしょ?」
「うん、でも早く取って欲しいから、入れ終わったら合図する」
「分かった」

大福でも入れたかな?
そんな予想を立てながら、投入完了の合図を待つ。

「入れた! いいよ!」
「おけ。混ぜる」
「え! 混ぜるの⁉︎」
「だってなんか怖いし、一箇所に固まってたら嫌だから」

闇鍋マスターが鍋をぐるぐるとかき混ぜた途端、鍋料理とは思えない香りが立ち上った。

「何このニオイ」

メンバー内に動揺が走る。

「いいから早く取って!」

あまりの語気の強さに、参加者たちは慌てて各自の皿に鍋の中身を取り分けた。が、時すでに遅く、全ての具材がそいつの投入した『何か』によって汚染されていた。

甘く、フルーティーな味わい。
冬のコテージを一気に南国の風で汚染し、具材を全て自分色に染め上げた恐怖の食材。

その名も

『マンゴープリン』


それからというもの、我々の中で『マンゴープリン』は忌語として扱われ、あの冬の出来事は20年以上経った今もまだ、食べ切った後の謎の悪寒と、いくら換気しても消えない甘ったるい香りの恐怖と共に語られている……


お読みいただきありがとうございます。
こちらの企画に参加させていただきました。
主催者様、いつもありがとうございます。


〜追記? 反芻? 蛇足?〜
【あとがき】

闇鍋マスター
「マンゴープリン入れたのだ〜れだ?」


「はい‼︎」

※こちらの作品は実話を元にしたフィクションです。


最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできますことを楽しみにしております。

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足木元 望睦 読んでくださりありがとうございます。 応援いただけたら嬉しいです。