[企画参加作品]思い出 #風まかせ文芸部
片田舎の居酒屋。
卒業20周年と、担任の定年祝いで開催された年末の同窓会。
当たり前のようにみんな歳をとり、太ったり痩せたりしているけれど、どことなく当時の面影を残している。
近況報告や思い出話に花が咲く中、向かいに座っていた担任が、おもむろに卒業アルバムを出してきた。
「みんな歳とったけど、やっぱり変わらないねぇ〜」
「やだー、先生もじゃん!」
「ねえ、見せて見せて!」
あれ?
「懐かしいな」
「こうやって見ると、やっぱりお前変わんねーわ」
「お、これ修学旅行じゃね? そういやこん時こいつがさぁ——」
周りが楽しく話す中、俺の中では何かぞわぞわとしたものが湧き上がってきた。
あるはずのものが無い? いや、無いはずのものがあるのか?
ページをめくるたび、不安にも似た違和感は徐々にその存在を大きくしていく。
「おい、大丈夫か?」
「あれ? 何か顔色悪くね?」
昔から仲の良かったヤナと健二が両サイドから俺の顔を覗きこんできた。
「いや、大丈夫なんだけど、なんか……このアルバム変じゃないか?」
「え? どこが?」
「どこがって言われても困るんだけど、何だろ? あるはずのものが無くて、無いはずのものがある感じ?」
「なんだそれ! ぜんぜん分かんねーよ」
笑いながら酒を飲み、写真を見ては覚えているエピソードをそれぞれが披露して、また笑う。
何の変哲もない同窓会のひとときだが、それでも俺の中にある違和感は着実に膨らんでいった。
何か違う。なんだ?
1枚の写真に目が止まる。
遠足で行った山の写真。
そこには俺たち3人を中心に、班のメンバーみんなで弁当を食べている姿が映っていた。
「なぁ、これ……」
「ああ、懐かしいな。この後急に雨降ってきてな」
「そうそう、んでみんな慌てて雨具出したけど、オレ持ってなくて——」
違う、そんな話をしたいんじゃない。
雨は降った。そして、急いで片付けて下山することになった。
でも、そうじゃない——
「なぁ……」
俺は隣に座っている親友の方を向いた。
「お前、誰だ?」
一瞬の沈黙。
「は? お前何言ってんの?」
「おいおい、やっぱ飲みすぎたんじゃないか?」
2人に見えた一瞬の動揺。
そう、違和感の原因はこいつらだ。
だって、この写真の後、俺たちは……
「チッ、つまんねえな」
向かいに座っていた担任がつぶやいた。
いや、こいつは……誰だ?
一瞬にして居酒屋の騒がしさが消え、耳が痛くなるほどの静寂が襲う。
和やかだった空気が凍てつき、全員の視線が俺に突き刺さる。
「ねぇ、オレだヨぉ〜;#けンジダよ〜」
「あソボウよ〜@¥**オ話しヨう°″€よ〜」
今し方まで話していた見知った顔が、みるみるうちに溶けていく。
「ヒィッ‼︎」
喉の奥で声にならない声を発し、俺は背中を強打する勢いで後ずさった。
「ねェ"//アァァぁそ……」
「そ@>ぼウ∴√よォ〜」
「あぁァアアア**そソそソソ/#」
ドロドロになりながら、クラスメイトだと思っていたものたちが俺を取り囲む。
最後に見えたのは、正面の男の異形の笑みだった。
お読みいただきありがとうございます。
こちらの企画に参加させていただきました。
主催者様、いつもありがとうございます。
〜追記? 反芻? 蛇足?〜
【あとがき】
高校の友人たちと集まると、必ずと言っていいほどやるゲームがあります。
その名も「クラス名簿を埋めよう!」ゲーム
1クラス42〜43人を、だいたいいつも2〜3人で埋めていくんですが、すんなりと埋まったためしがないですね。
同じメンバーで2年間過ごしているはずなんですけど。
思い返せば、卒業してから3年経った頃にはもう危なかったかと……
答えが分からない時は、卒アルを持っている友人に電話してまで答え合わせをし、その場はスッキリするのですが、次の時にはもうダメなんです。
毎回電話する友人よ。大変申し訳ない。
これから更に記憶力が怪しくなっていくのかと思うと、恐怖すら感じますね。
青魚いっぱい食べよう……
最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできますことを楽しみにしています。
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださりありがとうございます。
応援いただけたら嬉しいです。