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[企画参加作品]白紙 #風まかせ文芸部

私は今、光と音が煌めく舞台の袖にいる。
それも、衣装とメイクをして。

この衣装の演目は分かっている。
役名も、今見ている場面も、これから何が起こるのかも。
しかし、舞台の熱狂とは裏腹に、私は寒気に襲われていた。

どうしよう、セリフも振付も分からない。
頭が真っ白になり、この場にふさわしくない嫌な汗が流れる。

「緊張してる? 珍しいね」

馴染みのスタッフが声をかけてくれた。
暗い場所でも気づかれるくらい、私の顔色は悪いらしい。

「今日みんな気合い入ってるね。すごい」

言われて舞台の方を見る。
そこには汗を光らせ歌い踊る仲間の姿。
でも、いつもと違う。

え? 何これ?

私はさらにパニックになる。
こんな振付もこんな歌も、こんなセリフも知らない。

横にいるスタッフに助けを求めようかとも思うが、もう幕は開いているのにそんなことできるわけがない。

しかし、これだけは分かる。
次は私の出番だ。

何か、何か手掛かりは……

見回すと、足元に台本が落ちていた。
急いで手に取りページをめくる——が、そこには何もない。全て真っ白なのだ。

必死になって目を凝らし、最終ページまで手繰るが、一点のインクすらない。

一気に全身の血の気が引く。

「はい、行ってらっしゃい!」

馴染みのスタッフが背中を強めに2度叩く。
それはいつもの送り出しの合図。

もう仕方ない、やってやる!

混乱は諦めに変わり、私は勢いよく舞台に飛び出した。

壇上でライトを浴びた瞬間、聞き慣れた曲が流れてくる。
正しいのかは分からないが、私は力の限りに体を動かした。
それに合わせ、他の出演者たちも舞い踊る。

クライマックス。
私は渾身の力を込めて頭上に手を伸ばした!

勢いよく伸ばした手が掴んだのはスマホ。
お気に入りのミュージカルナンバーに合わせて、細かく振動している。

画面の日付と時間を確認し、満身創痍でアラームを止めて、大きくひとつ伸びをする。

悪夢は終わった。
今日はいい1日になりそうだ。


お読みいただきありがとうございます。
こちらの企画に参加させていただきました。
主催者様、いつもありがとうございます。



〜追記? 反芻? 蛇足?〜
 【あとがき】

何をやるべきなのか分からないシリーズ。この手の夢は本当に疲れます。

逃げてたり、戦ったりするものは途中で気付いて形成逆転もありうるのですが、白紙シリーズは現実との結びつきが濃い分、非常に厄介。

寝てる間くらいちゃんと休ませてくれ〜


最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできますことを楽しみにしています。

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足木元 望睦 読んでくださりありがとうございます。 応援いただけたら嬉しいです。