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[企画参加作品]牛丼×金髪×デッキ #せりふ三題噺

「金髪の牛がいたんだよ」
「はぁ?」

食券をカウンターに出しながら、同僚の井上が唐突に言った。

「牛ってさあ、たてがみ無いじゃん? でも、そいつは馬みたいな立派なたてがみしててさ、しかも金髪なの。で、それを風になびかせながら草食べてんのよ。あ、おばちゃん! オレの汁だくで!」
「はいよ。牛丼汁だくネギ多めでーーー!!」
「でさぁ」
「いや、ちょっと待て」

流石に情報量が多い。

「てか、なんで今その話?」
「いや、牛丼で思い出しただけ」

こっちはなんの捻りもないのかよ。

「でさ、その牛、当たり前だけど下向いて草食べるわけよね。そうすると、立て髪がこう顔にかかってきて邪魔そうに首振るの」

もうダメだな。これは一旦黙って聞こう。

「それがさあ、ラーメン食べるのにゴム忘れた子みたいで、なんか面白くてさ。
で、気づいちゃったわけ。だから牛にはたてがみがないんだ! って。オレ天才じゃね?」

先に出てきたネギまみれの牛丼と味噌汁をお盆に乗せながら、キラキラとした目で井上が俺の方を見る。

「いや、馬だって草食うよ。下向いて」

自分が注文した物をお盆の上に乗せ終えて振り向くと、すぐ目の前に驚愕の表情で固まる井上の顔があり、俺は思わずよろついた。

「あぶねっ」
「え、そうじゃん。馬も食べるわ、草。
なんだよー、めっちゃすごい自然の摂理? に気づいたと思ったのにいー」

2人で空いている席に座り食事を始めるも、井上は先ほどのショックから立ち直れていないようで、しょもしょもと味噌汁を啜っている。

井上の突飛な発想は今に始まったことではない。
最初のうちは斜め上にぐんぐんと伸び続ける思考力に振り回されもしたが、仕事上有利に働くこともあるので、俺も先輩も敢えて止めないことにした。
まあ、役立つのはごくたまになんだが……

「それよりお前、今日のデッキちゃんとできてんだろうな?」

ただ、今は大事な商談を控えているのでこいつを野放しにしたままではいられない。
ここらで方向修正しておこう。

「あったりまえだろ。先輩にもOKもらったから完璧だよ。カ・ン・ペ・キ」
「ならさっさと食え。今のままじゃ遅刻だ」
「げ、もうそんな時間か」
「だいたい、商談前にそんなネギだく食うか? スメハラでお断りなんてシャレにならんからな。ちゃんと歯磨きして、ブレスケアしてくれよ」
「わあっへる」

「っ。てかさぁ……」
一気にかき込んだ牛丼を飲み込み、井上節がまた始まった。
今度はなんだ?

「金髪の牛ってめっちゃ縁起よくね? この商談行ける気がするわ」

出た。根拠のない自信。
まぁ、これもこいつの強みではあるな。

「よっしゃ! オレのデッキが火を吹くぜ!!」

変なポーズを決めながら勢いよく立ち上がる井上に続いて、俺は静かに席を立った。

——さて、行くか。


お読みいただきありがとうございます。
こちらの企画に参加させていただきました。
主催者様、いつもありがとうございます。


〜追記? 反芻? 蛇足?〜
あとがき

作中のデッキ。どんなものかご存知ですか?
自分は営業職ではないので使わないですが、ビジネス用語ではパワーポイントで組まれたプレゼン資料をさすそうです。
個人的にはデッキといわれるとポ⚪︎モンカードか、遊⚪︎王が最優先で浮上してきますね。
あとは船の甲板かなぁ。
デッキ。案外いろいろありますね。


最後までお読みいただきありがとうございました。
またお会いできますことを楽しみにしています。

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足木元 望睦 読んでくださりありがとうございます。 応援いただけたら嬉しいです。