『次郎長意外伝 大暴れ三太郎笠』(1957年3月5日・東宝・青柳信雄)
昨夜はシリーズ第2作『次郎長意外伝 大暴れ三太郎笠』(1957年3月5日・東宝・青柳信雄)をスクリーン投影。
前作『灰神楽の三太郎』と同時撮影され、正続二部作として一本勘定で製作されたシスターピクチャーである。好評を受けて、シリーズ第3作では87分のフィーチャー作品へと発展していくことになる。
今回も、正岡容作、相模太郎口演の浪曲「灰神楽三太郎」をベースにしているので、映画は相模太郎の名調子から始まる。

ちなみに相模太郎は、初代東家愛楽門下として修業を積み、1931年に二代目東家愛楽を襲名。1935年、ポリドールとの専属契約を機に「相模太郎」と改名した。正岡容作の「灰神楽三太郎道中記」を口演して大ヒットを飛ばし、一躍人気浪曲師となる。昭和30年代にはラジオ東京「浪曲天狗道場」の審判役としても親しまれ、「ちょいと待ったぁ!」の掛け声は子どもたちの流行語にもなった。
脚本は前作に引き続き、キノトール、小野田勇のコンビ。
今回の新キャラクターで何より楽しいのが、森繁久彌、三木のり平とともに「虻蜂座」を結成していた千葉信男演じる「イビキ狂四郎」。柴田錬三郎原作、鶴田浩二主演の「眠狂四郎」をもじったネーミングからして可笑しい。
東宝『次郎長三国志』では憎々しい悪役・保下田の久六を演じていた千葉信男が、ここでは持ち前のとぼけた味を存分に発揮している。
さらに、次郎長の兄弟分でありながら、どこか姑息な親分・けんちんの豚十を森川信が好演。由貴路(越路吹雪)が追い続ける仇・十時軍右衛門を有島一郎が演じ、得意のアチャラカ芸で笑わせる。
前作では軍右衛門が「三太郎そっくり」という設定から騒動が巻き起こったが、今回はクライマックスで三木のり平と有島一郎による珍妙な対決が待っている。
もちろん、森繁久彌の森の石松の幽霊も健在。
由利徹、八波むと志、南利明による脱線トリオのペテン師三人組も再登場し、今回は三太郎たちが立ち寄った旅芝居の一座へ紛れ込み、旅役者になりすまして大騒ぎ。脱線トリオならではのコントがたっぷり楽しめる。
物語は、清水港で次郎長一家の世話になっている由貴路が、次郎長(小堀明男)の計らいで、仇・十時軍右衛門を討つため、灰神楽の三太郎(三木のり平)と旅に出るところから始まる。
追分三五郎(本郷秀雄)たちに見送られて旅立ったものの、道中では由貴路と思っていた相手が、いつの間にか三太郎に岡惚れしているまりりん亭のお紋(中田康子)に入れ替わっていたりと、最初から珍騒動の連続。
そこへ怪しげな浪人・イビキ狂四郎が現れ、三太郎と立ち回りを演じる。
由貴路の居場所を知っているという狂四郎を頼って旅籠へ向かうが、実は狂四郎は食い詰め浪人で、旅籠の客引きをしていただけというオチも実にくだらなくて可笑しい。
その旅籠を牛耳っていたのが、悪名高いけんちんの豚十一家。
悪事が次郎長の耳に入れば面倒なことになると考えた豚十は、用心棒たちに三太郎を始末するよう命じるが、そこから先はアチャラカ喜劇ならではのギャグまたギャグ、偶然また偶然が重なる大騒動へとなだれ込んでいく。
旅芝居一座のお京役には、『ゴジラ』(1954年)で知られる河内桃子が出演し、越路吹雪は洒脱なシャンソンを披露。有島一郎の珍演も加わって、東宝レビュー喜劇の魅力が存分に味わえる。
東宝『次郎長三国志』のスピンオフというより、「虻蜂座」版『次郎長三国志』と呼びたくなる一本。三木のり平、森繁久彌、千葉信男を中心としたアチャラカ芸が、シリーズ本編とはまた違った楽しさを生み出している。こうした”外伝”が成立するところにも、東宝「次郎長ユニバース」の懐の深さを感じる。

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