『次郎長三国志 第一部 次郎長売出す』(1952年12月4日・東宝・マキノ雅弘)
2026年6月、全作が廉価版DVDとしてリリースされる『次郎長三国志 第一部 次郎長売出す』(1952年12月4日・東宝・マキノ雅弘)。

村上元三の大衆時代劇小説を、お馴染み広沢虎造の浪曲に乗せて展開する、まさに娯楽映画のショーケースのような傑作「次郎長映画」シリーズの第一作である。助監督は岡本喜八郎。つまり岡本喜八監督!
清水港の米屋の倅・清水長五郎(小堀明男)は、居酒屋での喧嘩をきっかけに、ほとぼりを冷ますため草鞋を脱いで旅に出る。愛しい恋人・お蝶(若山セツ子)との別れのシーンが実にいい。とにかく若山セツ子が可愛い。
旅先や清水港へ戻る道中で、鼻っ柱の強い桶屋の鬼吉(田崎潤)、最初は敵方の名代だった関東綱五郎(森健二)らが次々と子分になっていく。さらに、侍から渡世人となる大政(河津清三郎)と妻・ぬい(広瀬嘉子)の別れ、河原で昼寝をしている最中に喧嘩へ巻き込まれ、そのまま仲間となる法印大五郎(田中春男)など、お馴染みのキャラクターたちが絶妙なタイミングで登場する。
この感覚は、マーベルやDC映画でヒーローたちが集結してくる時の高揚感に近い。しかも当時の観客にとっては、浪曲や講談、さらには過去の映画作品を通じて、彼らはすでに馴染み深い存在だった。だから余計な説明は一切いらない。登場した瞬間にキャラクターが立ち上がり、それぞれの個性が全開になる。コスチュームなどなくても、スターと役柄だけで成立してしまうのである。
やがて長五郎は、叔父にあたる和田島の太左衛門(小川虎之助)と、津向の文吉(清川荘司)の間で起きた大喧嘩の仲裁に命がけで乗り出す。その大胆な裁きが見事に成功したことで、長五郎は一躍「清水の次郎長」として名を売ることになる。
そして何より楽しいのが、広沢虎造本人が、次郎長の幼馴染・江尻の大熊(四代目澤村國太郎)の子分、張子の虎吉として登場すること。ストーリーテラーとして、あの名調子をたっぷり聴かせてくれる。
クライマックスの大喧嘩では、次郎長一家の「わっしょい、わっしょい」の掛け声とともに、観る側のテンションも一気に上がる。これぞ娯楽映画の醍醐味!

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