『次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港』(1953年6月23日・東宝・マキノ雅弘)
『次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港』(1953年6月23日・東宝・マキノ雅弘)。第四部ともなると、シリーズとして完全に脂が乗ってくる。レギュラー陣のキャラクターが観客の中にしっかり定着しているので、一挙手一投足が楽しい。いよいよ宿敵・黒駒勝蔵(石黒達也)一家も本格的に動き始め、物語は新たな局面を迎える。

二年に及ぶ旅を終えた清水の次郎長(小堀明男)は、妻のお蝶(若山セツ子)の待つ清水港へ帰還し、本格的に一家を構えることとなる。
冒頭から楽しい。家財道具を運ぶ子分たちの「わっしょい、わっしょい」の掛け声。夏祭りと引っ越し祝いが重なり、清水の町全体が祝祭空間となっている。この賑やかさこそマキノ雅弘映画の醍醐味である。
祝いの宴席に、大量の魚を担いだ三保の豚松(加東大介)が現れ、「子分にしてくれ」と次郎長に懇願する。
しかし次郎長は、「地元の堅気は子分にしない」と頑として受け入れない。ここに次郎長という人物の矜持が見える。任侠者でありながら、土地の堅気を巻き込みたくないという親分としての哲学が垣間見えて実にいい。
一方、兄貴分の大熊親分(四代目澤村國太郎)からは、甲州・黒駒一家の不穏な動きが伝えられる。清水の大政(河津清三郎)、投げ節お仲(久慈あさみ)、桶屋の鬼吉(田崎潤)、関東綱五郎(森健二)らは事態を収めるため甲州へ向かう。
四代目澤村國太郎が加東大介の実兄であり、さらに長門裕之・津川雅彦兄弟の父であることを知っていると、この顔合わせだけでも妙に嬉しくなってくる。
さらに森の石松(森繁久彌)と追分三五郎(小泉博)が、ようやく次郎長一家へ合流する。しかし二人は手ぶらでは来ない。旅先で行き倒れていた力士・八尾ヶ岳(千葉信男)一行を連れてきて、「なんとかしてくれ」と次郎長に頼み込む。
千葉信男は、三木鶏郎の「冗談グループ」に在籍、この頃、森繁久彌もNHK「日曜娯楽版」に出演。千葉信男とは、やはり「冗談グループ」の三木のり平も加えて「虻蜂座」を結成、コメディ舞台を共にしていた。
そこで次郎長は、八尾ヶ岳たちのために清水港で相撲興行を開き、さらに全国の大親分を招いた花会を催すことを決意する。任侠映画なら諸国の親分が集う花会こそ最大の見せ場になりそうなものだが、マキノ雅弘は違う。むしろ八尾ヶ岳一行の相撲興行を物語の中心に据え、観客を楽しませる。この感覚が実に面白い。
三五郎は相変わらずのお調子者で、「八尾ヶ岳を投げ飛ばしたら十両やる!」などと勝手な口上を述べて大騒ぎを引き起こす。腕自慢の豚松が挑戦して、案の定、大変なことになる。
さらに三五郎は、黒駒一家の代貸・大岩(鴨田清)の妹・おもと(花房一美)との恋愛沙汰を引きずっており、そのことから一家全体を巻き込む騒動へと発展していく。こうして清水の次郎長一家と甲州の黒駒勝蔵一家との緊張関係が一気に高まり、大岩たちはついに清水へ殴り込んでくる。
そしてクライマックス。次郎長一家お馴染みの「わっしょい、わっしょい」が響き渡り、大喧嘩が始まる。この勢いのまま次作へ雪崩れ込む幕切れが実に気持ちいい。
しかも今回、投げ節お仲がやたらと格好いい。久慈あさみの颯爽とした存在感は、もはや単なるヒロインではなく、次郎長一家の重要戦力である。
今回もまた、トラブルメーカーの三五郎と、その相棒を制御できない石松が物語をかき回す。若き日の小泉博と森繁久彌の生き生きとしたコンビネーションが何とも魅力的で、観ているだけで楽しくなってくる。
まさにシリーズ絶頂期へ向かう助走編。次郎長一家という「チーム」が完成し、いよいよ黒駒一家との本格対決へ向かう高揚感に満ちた一本である。
ここまで来ると、もはや次郎長一家の日常を見ているだけで楽しい。マキノ雅弘は任侠映画を撮っているのではない。魅力的な仲間たちが集う“祝祭の映画”を撮っているのである。

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