『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』(1953年6月3日・東宝・マキノ雅弘)
『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』(1953年6月3日・東宝・マキノ雅弘)。第三作にして、このシリーズの面白さが凝縮されている。

第二部のあと、森の石松(森繁久彌)は次郎長(小堀明男)から「子分にならないか」と誘われますが、それを断って気ままな旅を続けていた。
旅の途中、石松は大親分・黒駒勝蔵一家の代貸・大岩(鴨田清)に追われている男、追分三五郎(小泉博)をひょんなことから助けることに。
小泉博の三五郎は、まるでサラリーマン映画の二枚目のような現代的な色男。女とみれば手当たり次第に口説き、惚れさせても惚れない、のがポリシーのC調野郎。小泉博はこの三五郎役で、一気にスターの仲間入り。
その三五郎は大岩の妹・おもと(花房一美)とワケありの関係になり、大岩の逆鱗に触れて、逃げて回っていた。これがきっかけで、お人好しの石松と、口八丁手八丁でお調子者の三五郎の凸凹コンビが誕生。
この第三部は、のちにクレージー映画『無責任清水港」(1966)で細部にわたって換骨奪胎されて、植木等の三五郎と谷啓の石松で、さまざまなエピソードがリフレインされる。
さて、本作では何と言っても、久慈あさみの流れの賭博師・投げ節お仲の登場がハイライト。森繁久彌と久慈あさみは、『チャッカリ夫人とウッカリ夫人』(1952年・新東宝)ですでに共演しているが、ここでの名コンビぶりが、のちの社長シリーズの森繁社長と夫人へと発展していく。
喧嘩でケガをした三五郎は、石松の財布を頼りに、宿場に落ち着く。宿の離れで「手遊び=博打」をして、投げ節お仲の鮮やかな手捌きに惚れ込むが、まんまとイカサマに引っかかって、二人は素寒貧となる。
ところが、お仲が殊勝にもイカサマを詫びて、金を返しにやってきて、二人はご機嫌。とくに石松は、お仲に一目惚れして、三五郎から恋愛指南。吃音で口下手の石松に「目は口ほどにモノを言う」からと、目で口説けとアドバイス。
ああ、これは『男はつらいよ』(1969年)で御前様のお嬢さんに惚れた寅さんに、博が「目で口説くのが一番」と恋愛指南するシーンの原点であります。森繁久彌から渥美清へ。喜劇人の「お目々アタック」の系譜は続いて行くわけであります。
一方、清水次郎長と大政(河津清三郎)たちの子分一行は、次の宿場の賭場で遊んで、お仲のイカサマに遭遇。曲がったことが嫌いな次郎長が、やんわりとお仲を諭す感じがいい。しかし、そこへ役人たちが取り締まりで乗り込み、次郎長一家は牢屋送りに。
この辺りが「次郎長三国志」のシチュエーションコメディとしての面白いところ。牢屋には、睨みをきかせた牢名主(小杉義男)がふんぞり返り、病気の老人が虐げられていた。これには次郎長一家も黙ってられない。最初はカタギのふりをして、おとなしくしていた次郎長と大政の目配せで、子分たちが一気に行動を起こす。ここで、今作の「わっしょい、わっしょい」となり、次郎長一家が大暴れして、牢名主たちを屈服させる。そのカタルシス!
というわけで「次郎長と石松」それぞれのエピソードが交互に展開しながら、いよいよ、石松&三五郎コンビと次郎長一家がリンクしていく。
レギュラー陣の出番は少なくとも、それぞれのキャラが立っているので、目の表情、佇まい、動きだけで、全員が活躍している印象となる。まさに「次郎長アベンジャーズ」である。
とにもかくにも森繁久彌と久慈あさみがいい。居酒屋でしこたま酔った二人が掛け合いで粋な唄を歌う。広沢虎造の浪曲に、森繁と久慈あさみのデュエット。歌が効果的に機能していて、観客のテンションを高めてくれる。娯楽映画の醍醐味、ここにあり!
第三部にして、シリーズの主役は次郎長だけではなくなった。新しいスター・森繁久彌が、石松とともにスクリーンの中心へ躍り出る。その瞬間の輝きが、この映画には刻まれている。

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