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『喜劇駅前怪談』(1964年・東京映画・佐伯幸三)

 昭和39(1964)年6月11日公開のシリーズ第8作。同時上映は『日本一のホラ吹き男』(古澤憲吾)。昭和39(1964)年6月11日公開のシリーズ第8作。同時上映は『日本一のホラ吹き男』(古澤憲吾)。『駅前怪談』でもバーでは「東京五輪音頭」が流れ、御座敷のシーンで三味線の「学生節」のメロディが聞こえてきて、酔客たちが歌っている。同じ曲が2曲、併映作で流れていたことになる。

 舞台は、山梨県勝沼駅(今は、勝沼ぶどう駅)界隈。勝沼駅に久しぶりに降り立ったみどり(淡路恵子)に「乗ってけ」と、声をかけるのが幼なじみの坂井次郎(フランキー堺)。運送屋の次郎は、葬式道具を乗せたトラックにみどりを乗せて、牧歌的な風景を走る。『駅前怪談』らしい滑り出し。みどりのおばあちゃん・おくま(沢村貞子)は拝み屋で、いつもと違ってコントのおばあさんみたいで、おどろおどろしい。おくまは「信玄隠しの湯」の権利を持っているので、みんなそれを狙っている。
 
 次郎は猫を轢いてしまい、そのことをおくま婆さんに指摘されて、お化けが出ないかとビクビクしている。そこへ猫の鳴き声。なんのことはないみどりの飼い猫。このギャグがリフレインで、次郎が仏壇で猫を轢いてしまったことを悔いてると「次郎、次郎」の声。ぎょっとなると、みどりが飼い猫を呼んでいる。くだんの猫は「次郎」と言う名前のオチ。

 森田徳之助(森繁久彌)は役場の助役。観光客誘致に頭を悩ませている。伴野孫作(伴淳三郎)は駅前食堂の親父。「信玄隠しの湯」をめぐって観光会社が乗り込んできて、村は騒然とする。「東京五輪音頭」が流れるバーには北あけみさん、旭ルリのホステスがいて、怪気炎を上げているのが、「女を呼べ」と助平丸出しの怪しい作家・三井三平(三木のり平)。孫作が管理している貸別荘に滞在中。「白い紙にチョロチョロと書いて1万円」の触れ込みのインチキぶり。風采の上がらない姿に、森繁がポツリと「上海浪人・・・」とアドリブでつぶやくのがおかしい。

 徳之助の女房・圭子(淡島千景)、孫作の女房・京子(乙羽信子)、芸者・染太郎(池内淳子)の駅前女優陣に、次郎の恋人・由美はいつもの大空真弓ではなく、島かおりがシリーズ初出演。松竹で番匠義彰監督『渦』(1961年)、伴淳とフランキーの『ちんじゃらじゃら物語』(1962年)が縁で、フリーとなり駅前シリーズに参加した。森繁さんが可愛がっていた旭ルリに加えて、東宝からは北あけみ。

 さらには「社長シリーズ」で森繁社長夫人・久慈あさみが、バーのマダム役でシリーズ初参戦。加東大介さんも区長役で出演しているので、三木のり平、森繁、フランキーと「社長シリーズ」陣勢揃い。出てないのは小林桂樹だけ。「駅前」と「社長」シリーズは、キャストがほぼ同じなのに、テイストが違う。「駅前」が「ローカリズムあふれる商店の喜劇」に対して「社長」は「都会的な会社のコメディ」であること。そのローカリズムは、伴淳のイメージによるところが大きい。小林桂樹は都会的だし。

さて、貸し別荘の風呂に入って「船頭小唄」を歌うのり平。手伝いの女の子・山東昭子の「なんの歌?」「これは森繁久彌の歌だ」と楽屋オチ。基本的には「色と欲」で、様々な登場人物たちが出たり入ったり。次郎の縁談と温泉の権利を巡っての騒動と他愛もない話がのんびりと展開される。むしろ森繁、フランキーが、やたらと「〜ずら」を連発しながら会話をしていくうちに「〜ずら」がエスカレートしていくアドリブ的な笑い。フランキーの珍妙な動きなどで、当時の劇場は湧いていた。

 キャメラマンの岡崎宏三氏に伺った話。当時、東宝傍系の東京映画としては「コストのかかる文芸映画よりも、駅前シリーズがヒットして、その収益で文芸作品を撮ることができた」。なので、たわいのない話でも、キャストの豪華さで、当時の観客は満足していた。次々とお馴染みの顔が出てくるだけで「面白い映画」だった。まさに映画黄金時代ならでは。

 さて『駅前怪談』らしくなってくるのは、バーでのり平が創作怪談を話していると、北あけみさんたちが、のり平の泊まっている宿にまつわる心中とその惨劇について語り驚かす。もちろん与太話だけど、のり平のリアクションがオーバーでおかしい。心中はなかったけど首吊りはあったとか、首吊りはなかったけど裏の井戸で飛び込みがあったとか、みんなでのり平を脅かす。のり平は、大人なのに夜トイレも行けなくなるほど怖がってばかり。それがどんどんエスカレートしていく。

「駅前」の笑いは、こうした「小手先」のものばかり(笑)それに次郎の「猫」をめぐるエピソード。それに追い討ちをかけるのが、東京でダンサー(本当は「裸座」というストリップ)をしているみどりのダンスシーン。キャットウーマンスタイルで美脚をあらわに踊るシーンがインサートされる。S K D出身の淡路恵子のダンスシーンは、映画でも久しぶり。

 淡島千景さんは「私は、お化けが怖いので、怪談映画などはお断りしてきたので、『駅前怪談』は一度お断りしたんです。コワイから」とインタビューで語ってくれた。で、結局出演したけど「コワイ話、苦手なのよ」と(笑)

 クライマックス。のり平が滞在している貸別荘の持ち主(松村達雄)がやってくると言うので、持ち主に内緒で貸していた伴淳は、のり平に出てって貰いたいが、のり平が難癖をつける。で、みんなでお化け騒動を起こして追い出す。のり平のリアクションのおかしさが楽しめる(それだけだけど・笑)。

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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所 よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。