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『喜劇駅前大学』(1965年・東京映画・佐伯幸三)

「駅前シリーズ」第13作!

 昭和40(1965)年10月31日封切りのシリーズ第13作。同時上映はクレイジーキャッツ結成10周年記念映画『大冒険』(古澤憲吾)。こちらにも森繁久彌さんが出演。強力な喜劇二本立てで大ヒットした。舞台は、静岡県三島にある東大ならぬ東台大学。映画説明者・漫談家の牧野周一さんのナレーションで、二十五年前、森繁・伴淳・のり平の三人の大学受験の回想シーンから始まる。

 試験当日、丹波篠山出身の苦学生・森田徳之助(森繁)、山形蔵王から来た伴野孫作(伴淳)、6回目の受験に挑戦する三井三平(のり平)の挙動不審に、坂井教授(フランキー)が教育的指導をする。おかしいのは、孫作のガールフレンドの女学生が景子(淡島千景)であること。シリーズ初の伴淳とお景ちゃんのカップル!

 それから二十五年、新幹線のショットに続いて、東台大学の門を、新人の体育教師・坂井次郎(フランキー堺)が万感の思いでくぐる。東台大学のロケーションは、日本大学三島キャンパス。次郎は、かつての坂井教授の息子。三平は大学の守衛(自称・東台守)、森田は大学教授、孫作は駅前デパートの社長となっている。景子は孫作の女房になっていて、三平は妻・藤子(淡路恵子)に雀荘をやらせている。

 オリンピックの興奮冷めやらぬ次郎は、陸上部の監督となり、大張り切り。高校生の娘・みどり(島かおり)の裏口入学を考えている孫作は、そんな次郎を下宿させる。森繁は、真面目一筋、不器用だけど教育熱心な教授を、いつものように好演。独身の徳之助は、大学の医務室の女医・染子(池内淳子)に思慕を寄せている。染子は、景子の姪で、実家に住む妹・山村由美(大空真弓)に亡夫との息子を預けている。染子の実家は、三保半島の三保(清水)灯台のほど近くにある。

 シリーズもスタートして七年、長瀬喜伴のシナリオは、駅前チームの個性を生かすべく、良い意味で「いつもの駅前」の展開で、相変わらずの脱線の連続。今回は、フランキーのコメディアンとしての溌剌したハリキリ・ボーイぶりがおかしい。体育教師だけに、縦横無尽に走ったり、飛んだり跳ねたり。それもあって、コメディとしても視覚ギャグも多く、いつになくテンポも良く、スピーディで楽しめる。

 朝になると、伴野の娘・みどりを連れて猛烈トレーニング。その癖があるので、深夜の電話のベルを目覚ましと思って、布団から立ち上がり、元気溌剌「♪朝だ夜明けだ〜」と歌い出す。そのおかしさ。徳之助が授業をしていると、教室の窓に、登山スタイルの次郎と生徒がザイルを引っ張って登ってくる。「アイガー北壁を登る練習」と釈明(笑)ここからは、トランポリン、自動車、さまざまな部活動に励む次郎のシークエンスが続く。子供の頃、テレビで観て、このシーンがおかしくて仕方がなかった。とにかく『駅前学園』は、久々にフランキーさんの身体を張ったギャグが堪能できる。

 次郎が学生と、入学希望者を引率して三保で合宿を行う。「青春学園シリーズ」のような快活さだが、夏木陽介主演、東宝テレビ部制作「青春とはなんだ」(1965年)がスタートしたのは、この映画の公開一週間前の10月24日。この年の7月に日活では、石原裕次郎主演で『青春とはなんだ』を公開。いずれも、前年の東京五輪による、来るべき「メキシコ五輪」に向けてのスポーツ・ブームの産物。

 タイアップで登場する三保園ホテルの支配人は、染子たちの父・山村(山茶花究)。元船乗りで、立っていると時折、体が前後に揺れ出す。「どうも、私は船の暮らしが長かったもので」と山村、それに釣られて徳之助もユラユラするのがおかしい。今回は、山茶花究がコメディ・リリーフとして笑いを誘う。次郎と由美の仮祝言の席の段取りを取るシーンが、アチャラカ映画の呼吸で、フランキーの抜群の動きとともに、笑わせてくれる。

 また、仮祝言の作法は万事「おじさんの真似をすればいい」と言ったので、おじさんが座ったままで、ゆらゆら揺れると、次郎由美、景子とみんなゆらゆら。染子の後任の女医・メリー宮本にイーデス・ハンソンさん。前作『駅前医院』に続いて二度目のゲスト出演。また、経済評論家・三鬼陽之助がワンシーン出演している。学生役でこの年、プロレス界に入ったサンダー杉山が、本名の杉山恒治名義で出演。

 松井八郎の音楽は、大正生まれで昭和初期の流行歌「君恋し」(作詞・時雨音羽 作曲・佐々紅華)を、主人公たちの青春時代の曲としてB G Mに多用。観客のノスタルジーを適度に刺激したことだろう。

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佐藤利明(娯楽映画研究家・オトナの歌謡曲プロデューサー)の娯楽映画研究所 よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。