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「他の工務店で建てたい」が招いた資金ショート。担当者も頭を抱えた結末

「板挟み」。不動産仲介の現場では、そう感じる場面に遭遇することがあります。何度となく土地探しのお手伝いをしてきた工務店から紹介されたお客様。資金計画も土地選びも順調に進み、土地購入契約をした直後、事態は暗転しました。「建物は他の会社で建てたい」。

今回は、建物請負契約を数日後に控えた(はずだった・・)お客様と私に起こった、仲介実務のリアルな裏側です。

1. 順風満帆だったプロジェクト

今回の実例は、20年来の付き合いがある工務店の社長から、「土地探しから力になってほしい」とT様をご紹介いただいたのが始まりでした。

これまで何度も土地探しを共にし、多くのお客様を新居へとサポートしてきました。今回も、工務店側と密に連携し、建築費を含めた総予算を算出。ライフプランに基づいた資金計画を立て、住宅ローンの選定まで、滞りなく、むしろ早すぎるくらいのペースで進んでいました。

100%ではないものの、優先順位を満たした条件の土地が見つかり、建物プランも決定。土地の売買契約を締結し、すべてが順調に回っている――そう見えていました。

2. 青天の霹靂と、社長の意外な言葉

ところが土地契約直後、T様から思いも寄らない申し出がありました。
「やはり建物は、別の会社で建てたい」と。

SNSで目にした他社のデザインに心が動いてしまったとのこと。紹介元である工務店への不義理、そして私に対しても大きな申し訳なさを感じている様子でした。私は真っ先に工務店の社長に報告しました。私はその工務店の社員ではありませんが、土地探し中にTさんと一番多く接していたのは、私でした。建物の営業を託されていたわけではありませんが、やはり、責任を感じていました。

しかし、社長の反応は私の予想とは全く異なるものでした。

「私の進め方に問題があったのかもしれないです。お客様に他社を意識させてしまったのは、私の責任でしょうね。仕事を紹介したつもりが、かえって負担を増やしてしまって申し訳ない」

そして、社長はこう続けられました。 「Toshikiさんは不動産業者だけどFPであり、ハウスメーカーでの勤務経験もある。建築営業の裏表も、お金のプロとしての視点も持っている。本来なら不動産コンサルの領域だから、仲介手数料だけでは割に合わない仕事になるかもしれない。でも、T様が不安を解消して、予定通り家を建てられるように、協力してあげてもらえませんか」と。

3. FPと建築の知識経験が生きた「予算ショート危機回避」

社長の言葉に、私は背筋が伸びる思いでした。なかなか言えることではありません。なじられることも覚悟していましたが、「器の大きさってこういう事か」と感心してしまいました。

しかし、現実は甘くありません。 数週間後、意気揚々と新しい工務店に乗り換えたT様から、沈んだ声で相談がありました。「出してもらった見積もりが、当初の予算を数百万円もオーバーしてしまったんです」

デザインの華やかさはあるものの、大切な「ライフプランとの整合性」が置き去りにされていました。「資金ショート」の危機です。

私はFP(ファイナンシャルプランナー)として、再びT様のライフプラン表と向き合いました。教育費、老後資金、そして今回の建築費。それらが人生のグラフをどう変えるのかを可視化しました。同時に、建築営業時代の経験を総動員して、見積書の項目を精査しました。

「この設備は本当に必要か」「この工法でなければならない理由は何か」 建築営業の裏側を知っているからこそ、見積もりの『甘さ』や『削りどころ』が見えてきます。

4. 納得感のある結末への伴走

当初の工務店に戻る道も検討しましたが、社長は「再依頼は受けない。一度切れた縁を無理に繋いでも、良い家は建たないから」という考え方をされていました。

そして、乗り換えようとした工務店も予算内でおさめようとすると、Tさんのイメージとかけ離れた建物になってしまう・・

そこで、私は、T様と共に改めて予算内で信頼できる別の工務店探しに奔走しました。

最終的に、予算内に収まる納得のいく会社と出会い、無事に土地の決済も完了しました。手続きの節目ごとに社長へ報告を入れると、その都度「お疲れ様でした。大変だったね」と温かい言葉をかけてくれました。

5. 結び:家づくりで本当に必要な“味方”とは

家づくりには、迷うことも、間違えることもあるかもしれません。だからこそ、迷ったときに本音をぶつけられ、数字と建築の両面から守ってくれる“味方”をそばに置くことを土地探し、工務店選びと同じように考えることが重要です。

そして、世の中がどんなに進歩しても、今のところ、やはり「人との信頼関係は最重要」です。当然、人間関係には衝突も起こりますが、修復不可能なところまで行く前にできることもあるはずです。

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