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【noteでBLあとがき】この主人公にはジャーマンスープレックスが必要だ。

「あー……今回は、やめてこうかな、と思います」

 俺は衝撃を受けた。
 必殺技を受けた感じだ。足下が崩れる感じがして、座っていなかったらたぶん膝から崩れ落ちていた。

「な、なんでですか、サンタさん……あの、理由を、理由を教えてください!」

 3度目のデートの予定を立てていた時、通話でサンタさんが俺の誘いを断ったからだ。
 その日暇だって言ってたじゃないですか。
 乗り気だったじゃないですか。
 なんで白けたトーンになったんですか。
 『その今回は』は『今後もずっとお前とは会わない』の意味じゃないですか。

「な、何か……気に障ることしましたか? 僕に直せるところがあれば、直すので……あの、どうか」
「あ、違うんですよ、そんなシリアスな話じゃなくてですね」
 シリアスな話じゃないならなんだ。すでに俺は泣きそうだ。

「初めて会った時に、俺のコンタクトケースがなくなったじゃないですか。そのあと、サクマさんはうっかり自分の荷物にケースが紛れていたから返すって言って、遊びに誘ってくれたじゃないですか。で、今回は、サクマさんの忘れ物のパスケースを俺が返すために会う」

 耳元のヘッドホンから、サンタさんの申し訳なさそうな声がする。
「それって、ちょっと故意を感じるというか……もし、人と合う口実にそういうことをやっているのであれば、年長者として止めなきゃいけない行為かな、と思いまして」
「そ、それは……あの……!!」
「あ、やっぱりそうなんですね。よくないですよ、その癖。パスケースは、何かの形で送りますから」
「ま、待ってください、あの、僕は、僕は……ああーーっ!?」

 動揺のあまり、通話を切ってしまった。早くつなぎ直さないと!! ああ、PCが固まった!!
 まずいまずいまずいまずいまずい。
 邪魔なマスクをむしり取り、ヘッドホンを投げ捨てて。再起動をかける。更新が入ってしまった。
 とにかく今は早く、謝らなければならない!
 スマホでアプリを開き、通話ボタンを押した。
 出てくれ、出てくれ、出てくれ、出てくれ、出てくれ!!

 2コールの後にサンタさんの驚いた顔が画面に映る。
「あの、本当に、すみませんでしたっ!! ご、御迷惑をおかけして、すみません、許してください……!!」
「あ、え、その……」
「すみません、出来心だったんです。今後はやりません、絶対に、だから、まだフレンドでいてください!!」

「……わかりました」
 その言葉が聞けた瞬間、涙がこぼれた。

「……そんなに怒ったとかではないんです。俺もそういう悪戯しちゃったことはありますし、特にサクマさんくらいの時は。だから、同じ失敗はしてほしくないなと思って」
 この世に舞い降りた天使かよ……。
「……本当にごめんなさい。誘う口実が欲しかったんです。反省しています。パスケースなんてどうでもいいんです。ただ、また会ってくれますか?」
「……もちろんです。勇気を出して誘ってくれて、ありがとうございます」

 よかった。
 スマホを片手に机に突っ伏した俺に、声がかかる。
「ところで、あの……サクマさん。顔が、声が……」
 え。
「……ビデオ通話になってますよ……」
 ……しまった。
「……もう少し、説明してもらうことがありそうなんですが、いかがでしょうか……」
「はい! あ、じゃあ、その説明のために会うのはどうでしょうか! 事務所、事務所も案内しますから!」
「……ちょっと考えさせてください……」

 ちがうんです、これは、順番が少し前後してしまっただけで!
 俺は本当に、あなたのことが好きなんです!





 という後日談を書いたところで、こちらの企画に参加させていただきました!

https://note.com/triple_combo/n/n6f0b161170a1


 『なみ/推しの筋肉を愛でていたい』さんの短編BL投稿企画。
 17話!(リンクが間違っていました)まだ全部は読めておりません。少しずつ読もう。
 実は今回は、参加を見送る予定でした。前作が失恋と離別の話だったので、明るい恋の話にしたかった、という想いがありまして。
 今回のお題は『地獄』『ドタキャン』『オタク×オタク』……暗い話になりそうだな、と思いまして。


 気づいたらやべー犯罪者が大分の地に降り立っていた……。

 な、なんだお前は。受けちゃんのコンタクトケースを隠すのは相当な悪事だし、普通に犯罪行為だぞ……。
 私は普段、あまり堂々と悪事を行うキャラは書かないでいまして、少なくともこんな気軽に他人の物を隠すキャラは初めてです。
 なんでこんなキャラが生まれたのかな、と、自分の内面を推理したのですが、たぶんこれ、木原音瀬作品の影響かな……。

 BL小説作家(一般作品も書かれています)木原音瀬作品は、とにかく登場人物がヤバいことで有名で、展開も過酷極まります。
 ハッピーエンドで終わる作品もありますが、ハッピーエンドに至るまでの道中が一筋縄ではいきません。しかも、悪が栄えて終わる話や善人が深い傷を負って終わるなんとも後味の悪い作品も多いです。
 なのですが、書き込まれた心理描写がとても心に刺さって、人間の醜さ弱さに心を揺さぶられて、ドキドキしながら読んでしまう。そんな作風の方です。

 で、最近読んだのがこちら。

 コンビニエンス感覚で罪を犯す人たちの短編集です。非BLです。
 これ自体はすごく面白かった! という本ではなかったのですが、なんというかこういうどす黒い何かを持ちながら、罪を罪とも思っていないようなキャラクターを書きたかったのかな……。

 と、責任転嫁も済んだところで、今回の攻めくんはやっぱりジャーマンスープレックスを受けるように。

 私の中で、木原音瀬作品のイチオシはこちら!

 傲慢で卑屈な主人公の家の冷蔵庫に死体が入っていて、さらにその隠ぺいのために男を誘惑するという、詰み状態からスタートする物語です。
 彼らはどんなエンディングを迎えるのか。
 BL作品なので濡れ場がっつりですが、気になった方はぜひご自身の目で確かめてみてください!