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【ネタバレ感想】『光る君へ』第33回「式部誕生」

NHKの今年2024年の大河ドラマ『光る君へ』、いろんなおもしろさが詰まっていますが、どんなところに注目して観ていますか?

今まで大河ドラマでほとんど描かなかった藤原氏中心の平安時代を描いているところ。
『源氏物語』などの絵巻もので見た、平安時代の暮らしや、十二単などの装束がドラマで見られるところ。
雅やかかと思いきや、意外に現代風で、共感できて、時にコミカルでもある台詞回し。
時に重々しく、時に軽やかに、時にロックのリズムを響かせながら、シーンを彩る多彩なBGM。
主演の吉高由里子さん、柄本佑さんの、目が離せない演技。

いろいろ楽しいんですが、私が大いに興味を持っているのが、「文学という創作行為」が、このドラマでどのように描かれるかというところです。

人はなぜ、文章(物語)を書くのか。
なぜ、文章(物語)を書きたいという思いがわくのか。
ひらめきや熱意はどこからやってくるのか。
それを紙の上に文字で表現して、伝わることで何が生まれるのか。

歴史的・文化的・普遍的なこの行為を、『光る君へ』ではどんな物語として描いて見せてくれるのかなあ? というのが、現在とても楽しみなところです。

「……無理!」

前回、まひろは中宮彰子に仕える女房として出仕が決まりました。
何やら不穏な雰囲気いっぱいでしたが……よかった、いきなりここからパワハラ・イジメ満載のハードな職場ものにドラマのジャンルが変わるようなありませんでした。ほっ。

「藤式部(とうしきぶ)」という名前をもらい、これが今回のサブタイトルになります。「紫式部」になるのはまだ先のようです。

とはいえ、気になっていたのは、環境が変わり、落ち着いて創作・執筆に集中できなくなることです。
こちらは、案の定でした。

周りが忙しく立ち働く中で、ひとり物語の執筆が仕事といっても、気が休まらないし、理解も得にくい。
枕が変わって、簾の向こうに人の気配いっぱいの環境で、落ち着いて眠れもしない。(ワンカットで女房たちの寝相を見せたカット、おもしろかったですね)
お勤めの時間が決まっているから、夜更かしもできないし、朝は定時に起きないといけない!

対人関係のトラブルがなくたって、集中して執筆できる環境とはいえません。

このへんは、私が個人でマイペースに仕事をするのに慣れているせいか、なんだか共感して見てしまって、まひろが「……無理!」といったところでは、ちょっと笑ってしまいました。

「物語は、書きたい気持ちのときに書かねば勢いを失います。私は今すぐ書きたいのでございます」

懸命に道長に訴えるまひろの言葉にも、うんうんとうなずいてしまいました。

現代のように、少しずつキーボードを叩いては見直して、また手を入れられるわけではない、筆と墨と紙の時代は、アウトプットの前の頭の中での作業に、どれほど集中力が必要だったかと思います。

こういう困難がとても丁寧に描かれているのは、この話を書いている脚本家も同様に、言葉でイメージを撚り合わせて世界を紡ぎ出していくのが仕事だからなのだろうとも感じられます。

心の中には、表に出てこないたくさんの言葉がある

今回もうひとつとても印象的だったのは、まひろと中宮彰子の会話でした。

これまで、自分の考えを言わず、表情も出さず、父の道長にすら何を考えているのかさっぱりわからなかった彰子。
でもまひろは、彰子が敦康親王(定子が産んだ皇子)に見せる笑顔を見て、思われているのとは違う面があるのでは? と感じたようです。

なぜか彰子もまひろには、ほかの女房に言わないようなことをもらします。
「私は、冬が好き。空の色も好き。私が好きなのは青。空のような」
「帝がお読みになるもの、私も読みたい。帝がお気に召された物語を知りたい」

自分の意志を伝えることに意味がない、がんじがらめの生まれと人生の中で封じていた思いが、女房としては変わり者のまひろと出会って、ふとこぼれ出たのでしょうか。

まひろもまた、それによって彰子に興味を持ちます。

まひろ(道長に)「中宮さまのお心の中には、表に出てこないお言葉が、たくさん潜んでおるのやもしれません。中宮さまと、もっとお話ししたいと存じました」

藤原公任、藤原斉信の二人に「あれ?」と思わせ、彰子の心を少し開いて、「地味でつまらぬ女」「暗い」「めんどくさい」「変わり者」と言われてきたまひろが、注目を集めてきましたね。
道長も前回から、まひろに対する認識を新たにしたようです。
この先がまだまだ楽しみです。

扇の絵

物語の続きを仕上げて、道長の思惑通り、一条天皇にも無事、中宮のところにお運びいただけました。

「これからも、よろしく頼む」
まひろに道長から渡された褒美は、箱に入った絵扇。
それを開くと、男童、女童が描かれた絵が現れました。

それはちょうど、出会ったころの三郎とまひろのような。
そして片隅に、自由に飛び立っていく鳥も書かれていました。

ここがね。グッと来ましたね!

筆で一文字一文字綴られた物語が、長編小説なのを、私たちはすでに知っています。まだまだ序の口。それをこれからどう書き続けていくのか。
そして、フィクションである物語が、いかにして一条天皇や中宮彰子、貴族たち、女房達の心に響いていくのか。

そうやって、言葉と文章の力に注目させたところで、絵が登場する。

ここには、何の言葉も書かれていないけれど、道長の思いが感じられる。
メッセージが伝わります。
言葉じゃないもので、伝わるものがある。
視覚から、共通の思い出から伝わるものの、なんと雄弁なことか。

男女の恋愛関係を越えて、あの幼い日の出会いから重ねてきてつながった思いが、道長とまひろをつないでいる。一緒に道を切り開こうとしている。
そんな感じでしょうか。

まひろの目に浮かんだ涙が、見る側の心にも熱く感じられました。
いい感じに感情を揺さぶってくれますね。まひろのも、視聴者のも!

最後、騒乱の気配で今回の話は終わりました。
再出仕したまひろにも、何か影響があるのか? そして物語を書き続けることはできるのか? 毎回引きにドキドキさせてくれますね。

STAFF・CAST

『光る君へ』(2024年)NHK 大河ドラマ
脚本/大石静
音楽/冬野ユミ
ナレーター /伊東敏恵
出演/ 吉高由里子、柄本佑

STORY

大河ドラマ「光る君へ」(2024年)。主人公は紫式部(吉高由里子)。 平安時代に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた女性。彼女は藤原道長(柄本佑)への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で、光源氏=光る君のストーリーを紡いでゆく。変わりゆく世を、変わらぬ愛を胸に懸命に生きた女性の物語。(NHK公式サイトより)

大河ドラマ「光る君へ」 - NHK


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