新聞小説

 
 東山彰良先生の、悲しみのない世界という新聞小説で、真琴君っていうクズ野郎が出てくるんだけど、これがそれはもう、我らがメフィストなんだ。

 真琴君は病気がちで線の細い、臆病な少年だったんだけど、思春期に闇落ちして、学校の素行の悪いグループにうまく取り入って頭角を表し、やがて取り巻き連中をつき従えてやりたい放題するようになる。
 同級生を集団で暴行する動画なんかをインスタグラムに投稿して、いいねを稼ぐことに心血を注いだり、パチンコ玉を学校の屋上から落として、下を歩かせた同級生に命中させて、本当に貫通するのかどうか実験したり。
 真琴君は顔がいいから、ターゲットに定めた女の子の前で、少し咳き込んで辛そうな表情をすれば、女の子はもう、このひとには私がいなければダメなんだと信じ込んでしまう。その際、少しはだけた首元から、幼少期に心臓の手術で負った傷跡が見えるようにしておくのもポイントらしい。

 真琴君には愚直で心優しい年子の兄がいて、どういう経緯かはその部分を読み逃しちゃったから分からないんですが、中学卒業後に反社会的勢力の世界に足を突っ込んだ真琴君が、その兄を殺してしまって、現在真琴君は少年院に入ってる。
 で、この兄と幼馴染みだった主人公が、真琴君への復讐を心に誓っているっていうスタートだった。と思う。

 5年の月日が流れて、そろそろ出所を控えた真琴君から、主人公へ面会の申し出が来て、主人公は動揺する。

 兄と幼馴染みということは当然、真琴君とも幼馴染みである主人公のことを、真琴君はある程度慕っている。でも主人公は真琴君のせいで親友が死んだから、真琴君の存在が許せない。どのツラ下げて面会に呼び出したりしたのか全く解せないでいる。

 そんな真琴君との面会シーン。私の脳裏には、アクリル板の仕切りの向こうに現れる、我らがメフィストのアニメが再生されるんだ。数年ぶりに会う彼は背が伸びていて、顔立ちが大人びている。伏し目がちに入室してきた彼を見て、一瞬別人ではという疑念がよぎる…。

 数年に渡る少年院生活で、すっかり牙を抜かれ、まるで生気のない老人のように変わり果てていた真琴君は、主人公にある頼み事をする。
 主人公にしてみれば、ざまあ見ろというわけで、真琴君をさんざん罵り嘲笑って突っぱねる。
 しかしそれとは別の経緯で、主人公はある衝撃の事実を知ることとなる。次第に主人公の心境に変化が…

 ということで、私は来る日も来る日も、真琴君どうなった、真琴君幸せになって。いろいろやっちゃったみたいだけど、若いんだからまだまだなんとでもなるさ、真琴君頑張れ。真琴君の結末やいかに…!そう思って毎朝固唾を飲んで見守っていたんだけど…

 最近、ある懸念が頭をもたげてきている。この小説、もしかしてそろそろ終わるのか?…もう真琴君の登場はないままに…?
 ここ数日、主人公の心境がやけに晴れ晴れとしてきて、将来の展望とかの話になってきている…。これは大団円の予感…メフィスト抜きの大団円の予感が…する!

 嫌だ!メフィストの結末はあなたのご想像にお任せします、のパターンはもう勘弁してくれ!あれすっごく苦しいから。そのせいで私、去年の夏アニメ終わった時から丸一年泣いて暮らしてる。
 先生お願いします。最終話のエンドクレジットの歌の時、真琴君が恋人と再会して、安アパートで慎ましく暮らしてるシーンとかを、1秒でいいから。なにとぞ。
 真琴君幸せになって。メフィストの分も幸せになってよ。

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