それでも、私がこの現場に残った理由|Vol.6
Vol.5で、
「人はなぜ動けないのか」についてお話ししました。
環境を整えることで、
現場は少しずつ変わっていきました。
それでも——
私がここに残っている理由は、
それだけではありませんでした。
正直に言うと、
私はもう、
看護師に戻るつもりはありませんでした。
小学生の頃から、
看護師になるのが夢でした。
人の世話をすることが好きで、
自然とその道を目指していました。
でも、家庭の事情で、
一度はその夢を手放しました。
もう一度この道を選んだのは、
自分自身が
緊急手術を受けたことがきっかけでした。
「この仕事に就きたい」
そう思い、
働きながら資格を取りました。
そして40代のとき、
この先は看護の道で生きていこうと決め、
もう一度、看護学校に通いました。
でも——
2020年、コロナが広がり、
医療現場は大きく変わりました。
医療従事者だけが我慢を強いられる現実。
不安の中で働き続ける日々。
気づけば、
あんなに好きだった仕事から、
少しずつ気持ちが離れていきました。
そして私は、
別の道を歩こうと決めました。
そんなときでした。
「人が足りなくて困ってる」
お世話になっていた先輩からの連絡。
迷いました。
もう戻らないと決めた場所。
それでも——
「病院を閉める寸前なの」
その言葉を、
聞かなかったことにはできませんでした。
そして私は、
もう一度、現場に戻ることを選びました。
でもそのときはまだ、
看護師としての気持ちが
戻っていたわけではありませんでした。
そんな中、
ある患者さんとの出会い。
新しい命の誕生を、
心から楽しみにしていたご夫婦。
穏やかで、
とても仲の良いお二人でした。
でもある日、
その命の成長が、
突然止まってしまいました。
診察室で、
静かに涙を流す患者さん。
私は、
何と声をかけたらいいのか、
分かりませんでした。
どんな言葉も、
軽くなってしまう気がして。
それでも——
ただ、そばにいたいと思いました。
手術が決まり、
不安を抱えた患者さんとご主人に、
できる限り丁寧に説明をしました。
そして——
「一緒にがんばりましょう」
その言葉が、
どれだけ届いていたのかは分かりません。
手術が終わり、
患者さんは、
静かに帰る準備をされていました。
病院を後にする前に、
ふとこちらを見て——
「ありがとうございました」
その一言を聞いたとき、
胸の奥で、
何かが小さく、でも確かに動いた気がしました。
消えかけていたものが、
完全に戻ったわけではない。
でも——
もう一度、向き合ってみようと思えた瞬間でした。
誰かの人生の、
とても大切な場面に立ち会うこと。
言葉にならない想いのそばに、
ただ居続けること。
それが、
この仕事なのかもしれないと、
そのとき、
静かに感じていました。
環境を整えることも、
現場を変えることも、
すべては——
目の前の患者さんのためにある。
そして同時に、
誰にも頼れず、
1人で踏ん張っている誰かのためにも。
私は、
この場所に残ることを選びました。
では、実際に——
どのように現場を整えていったのか。
誰でもできる形で、
具体的にお伝えしていきます。
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