まだ、思い出にできない夜のために
「もう終わったことだよ」
そう言われても、心はまだ、そこにいない。
名前を見ただけで、胸の奥が少しだけ縮む夜がある。
ふいに流れてきた曲に、指先が止まることもある。
思い出にしてしまえば楽なのに、できないまま、今日も一日が終わる。
無理もないと思う。
だって、あの恋は、ちゃんと大切だったから。
思い出って、意志で作るものじゃない。
時間が勝手に置いていくものでもない。
心が「もう触っても痛くない」と感じたとき、
はじめて、静かに棚にしまわれるものなんだと思う。
まだ思い出にできないのは、
まだ心が、その人の温度を覚えているから。
楽しかったことも、言えなかった言葉も、
全部まとめて、今も胸の中で息をしているから。
心理学では、気持ちが追いつかないまま別れたとき、
心は「保留」の状態になると言われている。
終わったと頭でわかっていても、
感情は、まだ途中のまま。
だから、忘れられない自分を責めなくていい。
前に進めない夜があってもいい。
立ち止まることは、戻ることとは違う。
今はただ、
「まだ思い出にできないんだね」って、
自分にそっと声をかけてあげてほしい。
ちゃんと好きだった。
ちゃんと傷ついた。
それだけで、十分だから。
いつか、ふとした瞬間に、
胸がきゅっとならなくなる日が来る。
そのとき、あの恋は、
無理に整理しなくても、自然に思い出になる。
今夜はまだ、その途中。
それでいい。
▼もし少しでも心が楽になったらスキやフォローがほんの少しの支えになります。しんどい恋を抱えた人が「少し休める場所」になるような文章を、これからも書いていきます。
