Netflixドラマ『地獄に堕ちるわよ』|魅了され、裏切られ、恐れ、煌びやかな地獄を見る。
初めに言っておくと、私はこのドラマをあくまで「ドラマ」として見ました。
これから私は主人公である「細木数子」のことを「数子」と呼びますし、ドラマの内容について色々言いますけど、あくまでドラマの中の「細木数子」のことを言っているだけで、実際の細木数子さんのことではありませんのでご了承ください!
ということで、細木数子の波乱万丈な人生を描いたNetflixドラマ『地獄に堕ちるわよ』の話。
この作品の冒頭には「この物語は事実に基づいた虚構である」とテロップが出ます。
そう、そもそもどんな題材にしろ、映画やドラマにした時点でどうしたって盛り上げるために脚色が入りますし、「事実をそのままを描く」なんてことはできません。
「大殺界」「地獄に堕ちるわよ!」の強烈ワードで一世を風靡した占い師・細木数子。テレビや出版界を席巻する一方、霊感商法や裏社会とのつながりをささやかれた彼女の素顔とは。
細木数子さんについての事実は公式サイトのこの紹介文が全てだと思いますし、私たちは何が本当で何が嘘かなんてわからないので、基本的にドラマは「フィクション」として楽しむのが正解だと思ってます。
なので、細木数子さんと戸田恵梨香が似てないなんていう声もありましたが、そういう点について私は全く気になりませんでした。
むしろ戸田恵梨香が演じる「細木数子」最高!美人で華があって、圧倒的で、打算的で、高圧的で、強くて、頂点で高笑いしてる感じが最高でした!
※この先は物語に触れますので、まだご覧になっていない方は是非見てから読んでいただければと思います!
見終わってまず思い出したのは、大地主の御曹司・三田です。
……三田よ、私はお前に言いたいことがある。
おまえが数子を幸せにしてやってりゃあ平和だったのに!!!
私は怒ってる。
私はお前を応援してたんだよ。数子に一目惚れして、おどおどしながら連日店に通っていたお前を、純粋そうなお前を私は応援してたよ。
数子がお前のプロポーズを受けた時、私は嬉しかった。数子はお前を好きって言うよりもお前の家の資産やお前がこれからやろうとしてる事業に興味があったんだろうけど、それでもいいじゃんと思った。
数子ならお前がやろうとしてるホテル事業も成功させてくれそうだし、穏やかで優しいお前に愛されて、大事にされて、子供にも恵まれて、そうやって生活している内に数子もちょっとずつお前を好きになっていけたらいいな、なんて思ったよ。夢見たよ。
お前の母親(余貴美子)は相当やばかったけど、旦那の母親がやばいなんて話はよくあるし、そこはまぁいいんだよ。それくらいならきっと数子だって我慢できたよ。
問題は、1回数子と寝ただけで「この歳まで自分はドーテーだ」というコンプレックスをあっさり克服したどころか、あの憧れの数子はもう自分のもんだと勘違いも甚だしい態度取ってきた、三田、お前だよ!
久しぶりに見たよ、あんなドーテー拗らせてるやつ。寝るまではいつものお前だったのに、初めてなんですとモジモジしてたくらいだったのに、なんだあれ。1回寝ただけで、何お前人格変えてきてんだよ!
これまで「数子さん」「数子さん」って控えめに呼んでたのに、いきなり「数子」呼びした時は引いたよ。ちなみに言い方も絶妙に気持ちが悪かったぞ。お前、自分を一回外から見てみろよ、自分で自分に「……キモ!」ってなって、恥ずかしすぎて絶対消えたくなるぞ。
わかるよ。嬉しいのも浮かれるのもわかる。テンション上がっちゃってバカ丸出しみたいになっちゃうのも仕方ないかもしれない。あんなに憧れて、自分じゃとても釣り合わないような数子が自分の妻になったんだもんな。
でもさ、お前さすがにあれは見誤りすぎだよ。
お前は、あの華やかで自信満々な数子に惚れたんだろ?数子を家に閉じ込めて、自分の夜の相手ばっかさせて、そりゃあ無理だよ。
数子、銀座の女王やってたんだぞ?絶対商売好きじゃんか。お前と結婚したのだって、金があって、それでまた新しい商売ができると思ったからだろ。そんな女をあんな辛気臭い家に閉じ込めておけるわけねーじゃねえか。
私だって「数子、そんな家早く逃げ出せ!」って大声出したよ。
逃げられるわけないと思ってたんだろ?
田舎に嫁いできて、今更逃げれるわけないってあんなでかい態度取ってたんだろ?暫く閉じ込めておけば順応な女にでもなると思った?
……んなわけねーだろ、相手は数子だぞ!三田のばかやろう!!!
私も、数子はきっとすぐに逃げ出すだろうとは思ってましたが、まさかあそこまでするとは思わず、震えました。
三田と義母が外出先から帰宅すると家がもぬけの殻。
ーーうん、ここまではいい。
居間には親子丼、鶏の丸焼き、から揚げ、卵焼きなど数々の鶏料理。
ーーあ、数子、得意料理作ったのね?
料理くらい数子にさせりゃあよかったんだよ。ん?それにしても鶏料理多すぎない?というか鶏料理しかない?
……まさか、まさか……
そこに三田の悲鳴。
戦慄の光景。
数子、強っ!!!!!
いやー、すごかった。
やること言うことが予想を超えてきて、完全に魅了されました。
そもそも最初から商才ありまくりでしたしね。
次から次へと事業を成功されてて、センスも思い切りも決断力もずば抜けてて尊敬しました。
で、プラスでこの鶏事件ですよ。
嫁いでたった1週間でこれ。
怒るのはわかる。家飛び出すのもわかる。
でも普通はここまではしない。ここまでするのが数子です。
この辺りまで見たところで、自分が「細木数子」という人間に魅了されていることに気づきます。
戦後の焼け野原で飢え、空腹から地面を這うミミズを食べ、貧しさから脱するため高校を中退して夜の街で働きはじめ、20歳そこそこでナイトクラブを次々と成功させて「銀座の女王」と呼ばれた数子。ドーテーを拗らせた挙句にすっかりキャラ変した三田をあっさり捨て、三田が子供の頃から飼っていた鶏を鶏料理にして去ってきた数子。
その強さと逞しさ、神がかった商才、貪欲に知識を吸収し、大きな決断をサラッとしてしまうところ。
そんな数子に魅了されているところで数子がまた男で失敗するからほんとに見てられない。
……数子、何でだ!
商売においてはあんなに冴え渡ってるのに、なんでこんなに数子は男を見る目がないんだよ!お前にないのは男運だけだよ!!!
と、杉本哲太演じるヤクザにいいようにされている数子を見ると、気持ちがずーんっと沈みます。おい、これもうどう考えても地獄じゃねーか。「地獄に堕ちるわよ」どころか数子が地獄に堕ちてるじゃんか。
それでも生田斗真演じるヤクザの堀田(この男もヤクザ……でも最初から最後までかっこよかった……)に救ってもらい、数子の人生は再び急激に向上していきます。
ここで展開されるのが三浦透子演じる島倉千代子との話です。
そして彼女との出来事を表と裏から見せられることで、私たちは自分たちが信じていたものが一気に崩れ落ちる瞬間に立ち合います。
数子本人の口から語られる半生。
波乱で壮絶で魅力的なその人生は、もしかしたら嘘まみれだったかもしれない。
島倉千代子を助けた数子。
千代子の歌を愛し、千代子と姉妹のように過ごした数子。
自分の店もある中で、千代子のマネージャーとして彼女を支えた数子。
頭の中でイメージされたそんな数子の力強くも優しい姿が、彼女の弟の証言によって一気に崩れ落ち、まるで自分が裏切られたような気持ちに陥ります。
最初から金儲けしか頭になく、全てをビジネスとして捉え、実際は千代子の歌なんてどうでもよく、ただただ千代子で儲けていただけの数子。
どちらが本当かなんて本人たち以外にはわかりません。
それでも、いつのまにか「お金」や「地位」に取り憑かれてしまっている数子を想像するのはあまりにも容易でした。
献身的に千代子を支える数子より、ここに金の匂いがすると目を光らせて、他人より自分を優先する数子の方が容易に想像できました。身体中の細胞が「こっちが本物の数子だ!」と叫ぶのです。
昭和最大の思想家である安永の懐に入る様はもはや狂気で恐怖。暴走する数子の圧倒的な欲望に、この「数子」はいつの間にはもう私の見てきた数子じゃなくなっているのかもしれないと思いました。お地蔵さんから盗んだ饅頭を妹と弟にあげていた、好きな男の夢を叶えようとした、自分の力で店を持って大きくした、必死に勉強した、自分に惚れている男のプロポーズを受け入れた、好きな男の夢を自分の夢にして大金をかけた、あの数子はきっともういない。
金も地位も全てを持っている現在の数子。
かつて自分がいた地獄に二度と戻らないように、地獄にいたことなど悟られないのように、全ての人に復讐し、全ての人を跪かせ、全ての頂点に立ち、誰から見ても満たされているかのように笑う。
けれど、全てを失った代わりに得たそれは、もうすぐ破滅の予感がひたひたとしている。
地獄は続いているのかもしれないと、ふと思いました。
堀田のおかげで地獄から抜け出せたと思ったし、数子自身も抜け出していると思っているかもしれないけれど、そこはもしかしたらまだ地獄なのかもしれない。地獄の中で、あの煌びやかな「幸せ」を手に入れたのかもしれない。

アプリでも信じられんくらい稼ぐという……
そして三田を思い出すのです。
おまえが数子を幸せにしてやってりゃあ数子は地獄に堕ちないですんだのに!!!
おしまい。
三浦透子さんの歌がうますぎてビビったんですけど、新海誠『天気の子』の主題歌を歌われたのが三浦透子さんなんですね!
ずっと「祝祭 (feat.三浦透子)」「グランドエスケープ (feat.三浦透子)」とそのお名前は確かに何度も見ていたのですが、俳優の三浦透子さんと全く繋がっていませんでした。
しかも歌声が全然違いますよね……すごすぎ。

