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三谷幸喜『オリエント急行殺人事件』|これぞ復讐ものの最高峰!悲しいのにコミカル、本格派なのにポップな異色作


三谷幸喜のスペシャルドラマ『オリエント急行殺人事件』(2015)を配信で見ました。


皆さま、覚えていらっしゃるでしょうか?
2015年1月、フジテレビの開局55周年特別企画として2夜連続で放送されたスペシャルドラマです。もちろん、当時リアルタイムでちゃんと見ました。
あれから10年。何故急に三谷幸喜の『オリエント急行殺人事件』を見たのかと言いますと、まず映画『ブラック•ショーマン』の番宣で福山雅治を見ているうちに『ガリレオ』を見たくなって配信で全話視聴→見終わったら「古畑任三郎」シリーズがおススメに表示されて全話視聴→見終わったらこの『オリエント急行殺人事件』がおススメに表示され、「おお、これすごい面白かったよな」と思い出して視聴、の流れです。


主演の野村萬斎をはじめ、
松嶋菜々子、
二宮和也、
杏、
玉木宏、
沢村一樹、
吉瀬美智子、
石丸幹二、
池松壮亮、
黒木華、
八木亜希子、
青木さやか、
藤本隆宏、
小林隆、
高橋克実、
笹野高史、
富司純子、
草笛光子、
西田敏行、
佐藤浩一、
という恐ろしいまでの豪華出演者。


内容もめちゃくちゃ面白い!
この時のフジテレビすごいです。本気というか底力というか、こんなすごいの作ってやったぜ!というエネルギーが満ち溢れてる。
これ映画館でお金払って見なくて良いの?と聞きたくなるくらい素晴らしい作品です。

本格派なのにポップで、悲しいのにコミカル。
原作に則った第1夜と、
三谷幸喜らしさ溢れる、事件までの日々を描いたオリジナルの第2夜。
この塩梅が最高なんですよ!一見クールで、完璧に見えた犯人たち、演じている分その人たちの個性が見えなかった第1夜からの、完全犯罪を楽しそうに企てる、みんなの個性が溢れた第2夜。
剛力家の事件での悲しみ、怒りも丁寧に描きつつ、一度はバラバラになった登場人物たちが再び集結し、完全犯罪に向けて動いていく日々を見ていると「……頑張れーーーー!!!!」という気持ちでいっぱいになってしまう。


普通の復讐ものって、どうしたって暗いんですよ。
そりゃあ暗いですよ。当たり前です。
ごくごく平凡に生きてきた優しい人が、その人を殺したいと思うくらいにその人を憎み、その人を自分の手で殺すことを決意するんですから、重苦しい空気が流れているのが普通です。


でも三谷幸喜の『オリエント急行殺人事件』は違います。完全犯罪をして1人も逮捕者を出さない、しかも他の人には迷惑をかけない、という理念のもと、佐藤浩一に復讐したい人たちが集まり、悲しみを共有しつつ、ついにその日がきたことを喜び、興奮し、焦りから予定にないことをしてしまったり、ハプニングを乗り越えたりしながら、全員が協力してやり遂げるところが爽快。


復讐の話なのにどうしてこんなにもポップに、視聴者の「人を殺そうとしている人を応援していいのかな」という気持ちを最小限に抑えられるのかなと考えてみたんですけど、もはや犯人たちが佐藤浩一を「人間じゃない」と捉えているからじゃないでしょうか。
剛力家と剛力家に関係する彼らにとって、佐藤浩一は「愛する人たちを奪った敵」であり、人間ではないんです。
佐藤浩一は倒すべきボスキャラで、
佐藤浩一を殺すことと、人を殺すということがイコールになっていないような雰囲気。
それは計画の中心人物である富司純子が、他の人に迷惑はかからないようにしたい、他の人を傷つけてはいけない、と繰り返す姿にも、彼女の根本は崩れていないのだと思わされます。


心優しい人、聡明な人、立場がある人、そんな人たちが集結し、楽しそうに完全犯罪の計画を立てている様子は、もはやゲームのボスキャラを倒そうとするお正月の親族の集まりのような和やかさすらありました。


それでも!
復讐までの日々をどれだけポップにしようと、それでも普通、ラストは暗くなります。
そもそも復讐自体が正義ではないので、復讐に手を染めたが最後、よほど真っ当な流れを無視しない限りハッピーエンドはあり得ません。
どんなにそいつが憎くても、殺してしまったら殺した本人は自殺か逮捕か不運な事故等で死ぬかの大体どれかです。
ここでまたムカつくのは、復讐相手はめちゃくちゃ胸糞悪いことをしてきたにも関わらず、復讐されるまでは実に呑気に楽しく生きてるとこなんですよ。
自分の過去の罪を反省して、自分を責めながら懸命に生きているなら、私だって復讐する側を応援しません。でも、『オリエント急行殺人事件』の佐藤浩一もそうなんですけど、復讐もののドラマや映画に出てくる奴の大体が、何も反省してない大馬鹿クズ野郎なんです。なのに元々は普通に生活していた優しい人が殺人に手を染め、その先に逮捕や自殺、復讐を失敗したとして辛い日々が待っていると思うと本当に悔しい。


劇中でも、もはやここまで完璧な計画を立てたのに野村萬斎が真相に迫るところでは「萬斎もうやめてー!見逃してあげてー!!!!」と、犯人たちを庇ってやりたくなります。
そう、こんな名探偵がいて事件の真相を暴いてしまったら、普通はもう全員逮捕です。あんな男のために、彼らが刑務所に入れられてしまう。佐藤浩一は捕まらなかったのに、なんという理不尽。


でも皆さま、安心してください。
ご存知の通り、『オリエント急行殺人事件』は捕まらないのです!


いやー、新しい。
原作はめちゃくちゃ古い作品なんですけど、今見ても「新しい!!!」ってなります。
復讐もので、ちゃんと殺して、主役の探偵にトリックを見破られて、それでもお咎めなしってありですか?


ありです!全然あり!!!
復讐ものでこんなに清々しく、笑って終われる作品ってすごい!犯人たちを追い詰めていく癖強の野村萬斎を嫌いになりかけましたが、ラストで好感度爆上がり。
それ許しちゃうのね……!完全に真相がわかって、それでもこの結末でOKなのね?!という思いは多少ありますが、それでも第2夜の雰囲気と彼ら13人の人柄を全て見せてくれたからこそ、「そうだよね!これでいいよね!」という気持ちになります。


野村萬斎のポアロ、癖強すぎ!!!


復讐ものの中で最高峰の形を見せてくれた気がする三谷幸喜の『オリエント急行殺人事件』。
原作に敬意を表して制作された第1夜と、その事件の裏側に発想を膨らませた三谷幸喜オリジナルの第2夜が組み合わさった化学反応に、今見ても胸が高鳴る作品でした。


おしまい。

同じシリーズ(原作:アガサ・クリスティー)の『黒井戸殺し』『死との約束』も再び視聴しました。『黒井戸殺し』も大泉洋のキャラクターも相まって良きです。



『オリエント急行殺人事件』はこちらも好きです。普段あまり洋画は見ませんが、公開当時映画館に見に行きました!


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