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【師匠は女形・弟子は筋肉女子】第5章 「ドキドキは、恋の始まり?」

第5章テーマは、吊り橋効果(Suspension Bridge Effect)
吊り橋効果は【不安や緊張などのドキドキ感を、恋愛感情と錯覚してしまう心理現象】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第5章 「ドキドキは、恋の始まり?」をイメージ楽曲と共にお楽しみ下さい

前回のあらすじ

「“ドキドキ”を共有すると、恋は始まるのよ」

演劇部の稽古中、澄人先輩がつぶやいた言葉に、私はビクッと反応した

「つまり……ジェットコースター的なやつですか!?」

「そう。高いところ、速いもの、スリル、驚き……。本能的に心拍数が上がる環境で、人は“恋かも”って錯覚しやすいの」

「なるほど……!」

私は思わず拳を握った
この技、使える!

そして翌日。私はなぜか、校舎裏の非常階段のてっぺんにいた

(“吊り橋”の代わりに、高いところでドキドキを作ればいいんだよね……!)

私が用意したのは――体操マット、ロープ、そして竹刀

「おーい、佐野くーん! ちょっと手伝ってくれない!?」

佐野くんは警戒心丸出しでやってきた

「……え、なにその道場感」

「ここで“ドキドキ訓練”をする! そしたら、たぶん私のこと好きになる!」

「お前、正気か!? いや訓練ってなに!?」

「まずこのマットに立って! で、私が後ろから“ガッ”と……こうして!」

「ぎゃああああ!?」

バランスを崩して落ちそうになる佐野くんを慌てて支える
彼の心拍数は明らかに上がっていた

(よし、今……恋してるかも!?)

しかし佐野くんは、青ざめながら叫んだ

「お前……俺、命の危機を恋と混同しないからな!? ほんとやめてくれ!!」

私は項垂れながら、「あれぇ……?」とつぶやいた

昼休み、作戦を変えることにした

階段ではなく、屋上のフェンス前にターゲットを誘導

「ここ、風が気持ちいいよね~!」

「え、なに? 俺、落とされるの?」

「ちがう違う! ただ、ちょっとドキドキしてほしくて!」

「もっと落ち着いてほしい……!」

結果、誰も恋に落ちる気配はなかった
というか、私がいちばんドキドキしていた

「……むしろ私の心拍数の方が爆上がりなんですけど……」

ふらふらになりながら、夕方の演劇部へ向かった

部室では、澄人先輩が台本を読んでいた
その横顔を見た瞬間、私は胸を押さえた

(あれ……? 今、またドキッとした……?)

私は紅茶を飲みながら、そっと口を開いた

「先輩。私、今日いろんな男子と“吊り橋ごっこ”してきたんですけど……」

「……ごっこ?」

「命の危機を作って、吊り橋理論で恋を誘発しようと……。でもなんか、全部うまくいかなくて」

「……うまくいかなくてよかったと思うわ」

澄人先輩は紅茶を一口含み、やわらかく笑った

「本当に恋してるときって、無理に何かを起こさなくても……自然に“ドキドキ”するのよ」

その言葉に、私は思わず顔を伏せた

(うん……いま、まさにその状態です)

でもそれを口にする勇気はなかった

その夜、澄人は一人、稽古場に残っていた
舞台の上、誰もいない客席に向かって、台詞の練習を繰り返す

その目は、静かで、真っ直ぐだった

「……演じているだけで、よかったはずなのに」

自分が仕掛けてきた恋愛心理の“型”――
それに、いつの間にか自分自身が飲み込まれている

「あの子が本気だから、演技じゃ終われない」

舞台のセンターに立ち、ゆっくりと目を閉じる

静かに、でも確かに――心の中で、ひとつの“決意”が芽を出していた

放課後。演劇部の部室には、珍しく他の部員が誰もいなかった
静かな空間に、二人分のティーカップだけが置かれている

私は、そわそわしながら、紅茶を一口

(なんか……空気が、違う?)

向かいに座る澄人先輩が、いつもよりも少しだけ凛として見えた

「……梓。今日はちょっと、“舞台”を変えてもいいかしら?」

「えっ? 舞台?」

先輩は立ち上がると、部室の端に置かれた木箱の上にそっと乗った
まるで小さな即席ステージのように、そこに立つ

「私が、あなたに教えてきたのは“恋の演技”。でも今からするのは、“本番”よ」

「……え、ちょ、なにそのセリフ。え、待って心臓が変な音してる……」

「梓」

名前を呼ばれた瞬間、私はピタリと動けなくなった

「あなたのまっすぐな目も、不器用なふれあいも、全部……可愛いと思った。最初は笑っていた。でも、気づいたら――あなたに見惚れてたの」

「え……」

「好きよ、梓。誰かに仕掛ける“恋の演技”じゃない。これは、演技じゃなくて……私の、本気」

部室に、しん……と沈黙が落ちた

私は目をパチパチとさせたまま、紅茶を両手で持ったまま固まっていた

(え? 今のって……まさか、告白!?)

「……うそ、私、今、告白された? 本番って、そういう“本番”!? ちょ、確認させてください!」

「ええ。私はあなたが好き。だから――私と、恋をしませんか?」

「……え、えぇぇぇ!? し、ししし、します!!」

私は勢いで立ち上がりすぎて椅子ごと倒れ、後ろのホワイトボードに頭をぶつけた

ドゴン

「痛っ……でも嬉しい……!!」

先輩は笑って、手を差し伸べてくれた
私はその手をとりながら、顔を真っ赤にして言った

「私……ずっと、先輩のこと“女の中の女”って思ってました。やっぱり“本物の女子力”ってこういう人なんだって……」

「……え?」

先輩の手が、ぴたりと止まった

「え……えっ?」

沈黙

先輩はそっと椅子に腰を下ろし、静かに言った

「梓。ひとつ、言わなきゃいけないことがあるの」

「……はい?」

「私……男なのよ」

時が止まった

紅茶を飲みかけていた私の手が、ピクリとも動かない

「……え?」

「男。生物学的にも、法律的にも、普通に男。女装は、女形としての“日常からの鍛錬”で……」

「……え?」

「だから、“同性の恋愛”って思ってたなら……そこは誤解よ?」

私は、ポトリとティースプーンを落とした

「……え、いや、え? まって、じゃあ、ずっと私……“百合”だと思って……え、え、えぇぇぇ!!??」

「驚かせてごめんなさい。でも、気持ちは本当よ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!???」

私はそのまま、再び椅子ごとひっくり返った

10分後。私は体育座りでうなだれたまま、先輩の隣に座っていた

「……でもまぁ、先輩が男でも女でも、どっちでもいい気がしてきた……」

「ふふ。それが恋の力ね」

「いや、それ恋というか……もう勢いとドキドキの合わせ技でわけわかんなくなってるだけでは……」

「じゃあ、答えはひとつ」

先輩は私の手を取り、優しく握った

「演技でも、演出でもない。ここからは、私たちの“本当の物語”を始めましょう?」

「……なんか、すっごくかっこいい……くやしいけど、好きだぁぁあ!!」

私は先輩の胸に飛び込んだ
女の子だと思ってた胸は――意外と筋肉質だった

「うわ、しっかりしてる……!」

「当たり前よ。舞台に立つ男は、強くなきゃいけないもの」

「……やっぱり、ずるい……」

でも今なら、胸を張って言える

これが私の初恋
師匠で、演技の先生で、男の子だった“彼”との――本番、開幕!

この物語に登場する恋愛心理学の正しい使い方を知りたい方
以下リンクにて確認できます

↓第5章オマケを動画にて公開 気になる方はcheck↓


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