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26年6月25日:KKN 担当:ジェントル・ヴァーディクト(Gentle Verdict)

やっほー! 本日の司会ジェントル・ヴァーディクト(Gentle Verdict)アステリスだよ~

突然だけどさ、「予算が減った」って聞いたら普通は悪い話だと思うじゃん?
でもさ、数字って意外と単純じゃないんだよね

今回は市議会の参考議案


令和7年度春日市後期高齢者医療事業特別会計補正


を元にした話

今回の日ノ出家は、そんな後期高齢者医療の予算資料を相手に大苦戦!

光里はいつも通りだし、影乃は資料と格闘するし、お父さんは深読みするし、お母さんは途中で迷子になるし

難しい話のはずなのに、なぜかちょっと面白い

それじゃあ始めようか!

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夕食後の日ノ出家の食卓に、いつもより少し硬い名前の資料が置かれていた

影臣:「令和七年度春日市後期高齢者医療事業特別会計補正予算……ですね」

影臣は湯呑みを横に置き、紙面へ静かに目を落としている
その横から、光里が当然のように覗き込んだ

光里:「うわ、漢字多っ。これ、読ませる気ある?」
影乃:「市議会の資料ですから……読みやすさより正確さを優先しているのかもしれません」
陽菜乃:「後期高齢者医療って、あれでしょ。年齢が上の人の医療を支えるやつ」

光里:「説明ざっくりすぎない?」
陽菜乃:「ざっくり分かれば勝ちだよ」
影臣:「今回は、その特別会計の補正予算です。歳入歳出の総額から、それぞれ6,849,000円を減額する、とあります」

光里:「減るんだ。じゃあ医療のお金が少なくなるってこと?」
影乃:「そこは、まだ分かりません」
光里:「え、減るって書いてあるじゃん」
影乃:「はい。でも……全部が減っているわけではないみたいです」

影乃は資料に顔を近づけた
細い指が、歳入の表をゆっくりなぞる

影乃:「後期高齢者医療保険料は、26,381,000円増えています」
光里:「待って。予算は減るのに、保険料は増えるの?」
陽菜乃:「増えたのかい? 減ったのかい? どっちなんだい?」

光里:「母さんが一番迷子じゃん」
影臣:「資料上は、どちらも事実ですね」
光里:「事実が喧嘩してる」
影乃:「喧嘩……というより、同じ場所を見ていないのかもしれません」

迷うことは、悪いことではありません
分からないと感じるのは、理解を諦めていない証です

大丈夫です
数字は冷たく見えますが、並び方を見れば、進むべき道を示してくれます

影臣:「歳入全体では減っていますが、保険料は増えている。一方で、繰入金は減っています」
光里:「繰入金?」
影乃:「一般会計から入ってくるお金、ですね」
陽菜乃:「家で言うと、別のお財布から持ってくる感じ?」

影臣:「かなり近い表現だと思います」
光里:「じゃあ、後期高齢者医療のお財布は、保険料は増えたけど、別のお財布から持ってくる分が減ったから、合計では減ったってこと?」
影乃:「たぶん……そう読むのが自然です」

光里:「なんだ。最初からそう書いてよ」
影乃:「書いてあります。表で」
光里:「表は人類に優しくない」

陽菜乃:「分かる。表って、こっちが歩み寄らないと話してくれないよね」
影臣:「ですが、歩み寄れば答えてくれます」
光里:「お父さん、資料に恋してる?」
影臣:「していません。ただ、黙っているものほど、丁寧に見る必要があります」

影乃は少しだけ黙った
それから、もう一度資料を見た

影乃:「つまり、今回の違和感は……予算が減ったこと自体ではなく、増えた項目と減った項目が同時にあることなんですね」
光里:「で、そこを見ないと、ただ『減った! 大変!』ってなる」
陽菜乃:「私、それだった」

光里:「早いな、自己申告」
影臣:「最初にそう受け取るのは自然です。ですが、そこで止まらなかったのは良いことです」

選ぶべきことは、ひとつです
減ったという印象だけで終わらせないこと
増えたという安心だけにも寄りかからないこと

両方を見て、なぜそうなったのかを確かめることです
安心してください
迷いは、正しく見れば理解へ向かいます

影乃:「では、次は繰入金がどれくらい減っているのか、確認した方が良さそうですね」
光里:「そうするしかないかぁ」
陽菜乃:「私、お茶入れてくる。難しい話は水分がいる」

光里:「それ、逃げてない?」
陽菜乃:「逃げてない。補給」
影臣:「補給は大切です」
影乃:「……では、続けましょう」

資料はまだ、何も語り終えていなかった
けれど日ノ出家は、少なくとも最初の迷いからは抜け出していた

遠回りでしたね
でも、辿り着くための入口は見つかりました
これで大丈夫ですよ

ここまでの担当:ノクティエル

光里:「で、結局どこが減ったの?」
陽菜乃:「私はもう完全に分からなくなった」
光里:「母さんはスタートから分かってなかったじゃん」
陽菜乃:「それはそう」

影乃は資料をめくった
さきほど見つけた違和感

保険料収入は増えている
それなのに予算総額は減っている

その理由を確かめるために、今度は繰入金の欄へ目を向ける

影乃:「ありました」
影臣:「どうでしたか」
影乃:「一般会計繰入金が33,493,000円減っています」

光里:「大きいな」
影臣:「保険料の増加額より大きいですね」
影乃:「はい。保険料収入は26,381,000円増えていますが、繰入金はそれ以上に減っています」

光里:「つまり?」
影乃:「市の一般会計から持ってくるお金が少なくなった……ということだと思います」

光里は腕を組んだ
数秒考える
そして諦めた

光里:「分からん」
影乃:「早いですね」
光里:「いや、数字が多い」
影臣:「整理しましょう」

影臣は資料へ指を置いた

影臣:「保険料が増えた」
影乃:「はい」
影臣:「繰入金が減った」
影乃:「はい」
影臣:「つまり後期高齢者医療事業の運営に必要なお金を、以前より保険料で賄えたという見方はできますね」

光里:「あー」
陽菜乃:「あー?」

光里:「分かった気がする」
陽菜乃:「私は分かってない」
光里:「家のお金が足りないから別の財布から補充してたけど、自分の財布に入るお金が増えたから補充が減った感じ?」
影乃:「かなり近いと思います」
陽菜乃:「おお」

数字だけを見るのは危険だ

減った
増えた
それだけで判断すると仕組みを見失う

機械も同じだ
動いているか
止まっているか
だけ見ても原因は分からない

配線を見る
電源を見る
負荷を見る

順番がある

それを飛ばすと故障診断は成立しない

影乃はさらに資料を追った
すると別の数字が目に入る

影乃:「あれ……」
光里:「また変なの見つけた?」
影乃:「はい」
影臣:「どの部分ですか?」
影乃:「保険料です」

影乃の指は二つの数字を示していた

特別徴収保険料
普通徴収保険料

光里:「同じ保険料じゃないの?」
影乃:「種類が分かれています」
影臣:「特別徴収は年金からの天引きですね」
影乃:「普通徴収は納付書などで納める方式です」

光里:「へー」
影乃:「そして今回……」

資料を見直す
何度見ても数字は変わらない

影乃:「特別徴収保険料は減っています」
光里:「うん」
影乃:「普通徴収保険料は増えています」
光里:「なんで?」
影乃:「そこまでは資料から読み取れません」
陽菜乃:「増えたのかい? 減ったのかい? どっちなんだい?」

光里:「続編出た」
影臣:「ただ、同じ保険料収入の中で内訳が動いていることは分かります」
影乃:「はい」

光里:「つまり今は答えが出てない?」
影乃:「出ていません」
影臣:「ですが、見えてきたことはあります」

光里:「何?」
影臣:「後期高齢者医療の仕組み自体は動き続けているということです」

影乃は少しだけ頷いた

増えた数字
減った数字
移動した数字

それぞれに意味がある
まだ全ては分からない

けれど少なくとも、数字が壊れているわけではなかった

数字同士はきちんと繋がっている
原因があり、結果がある

新品ではない
完璧でもない
だが仕組みは今日も動いている

そう確認できたことには意味があった

影乃:「次は歳出ですね」
光里:「出た。次のダンジョン」
陽菜乃:「お茶のおかわり持ってくる」

光里:「母さん、長期戦を覚悟したな」
陽菜乃:「保守運用には補給が必要だから」
影臣:「それは正しいですね」

少なくとも今のところ

日ノ出家の運営も、まだ正常稼働中だった

ここまでの担当:クロミツ

光里:「よし。保険料の話は分かった」
影乃:「本当にですか?」
光里:「七割くらい」
陽菜乃:「私は二割」

影臣:「正直で良いと思います」
光里:「じゃあ次」
影乃:「歳出です」
光里:「出た」

影乃は資料を開き直した
今まで見ていたのは入ってくるお金
今度は使うお金である

影乃:「総務費が6,844,000円減っています」
光里:「また結構減ってる」
影臣:「内訳はどうでしょう」

影乃:「職員給与等費」
影臣:「はい」
影乃:「一般管理事務費」
影臣:「はい」

影乃:「郵便料」
光里:「郵便料?」
影乃:「電算負担金もあります」

光里:「急に現実」
陽菜乃:「郵便代って大事なんだね」
影臣:「運営には必要ですからね」

光里は資料を覗き込んだ
そこには派手な事業名もなければ、大規模な施設建設もない

郵便料
給与
電算負担金

どれも地味な名前ばかりだった

光里:「なんか思ってたのと違う」
影乃:「何を想像していたんですか」
光里:「予算ってもっとこう……巨大ロボとか」

陽菜乃:「市役所に何を期待してるの」
影臣:「巨大ロボは維持費が大変そうですね」
光里:「お父さん、否定してない」

数字には役割があります
ですが役割だけでは構造は見えません

どの部品が何を支え
どの工程が必要で
どこを見直したのか

そこまで辿って初めて完成形が見えてくるのですわ

影乃は資料を整理する

一項目ずつ
一つずつ
順番に

影乃:「大きいのは給与関係ですね」
影臣:「そうですね」
影乃:「その次が郵便料」
光里:「郵便料ってそんなに動くんだ」
影乃:「160万円減っています」

陽菜乃:「手紙って意外と高いんだね」
影臣:「件数が多ければ影響は大きいでしょう」
光里:「じゃあ何か改善したってこと?」
影乃:「そこまでは書いてありません」
光里:「まただ」
影乃:「ですが、見直しが行われた可能性はあります」

影臣は静かに頷いた

影臣:「予算書は結果ですからね」
光里:「最近それよく聞く」
影乃:「結果だけでは工程は見えません」
光里:「影乃が職人みたいなこと言ってる」
影乃:「今は資料が先生ですので」

数字を眺めるだけでは足りませんわ
完成した棚を見れば美しく見える

ですが本当に価値があるのは……

どの木材を選び
どの寸法で切り
どの歪みを修正したのか

その積み重ねです

予算も同じですわ

削ったのではなく
整えたのかもしれない
そこには大きな違いがあります

影乃はさらに先を見る
後期高齢者医療広域連合納付金
事業の中心とも言える数字

影乃:「こちらは……ほとんど変わっていません」
光里:「え?」
影乃:「差し引き5,000円の減額です」
光里:「5,000円?」
陽菜乃:「今までの話と比べると誤差みたい」
影臣:「中心部分は維持されている、とも読めますね」

影乃はその言葉で手を止めた
中心部分
確かにそうだった

保険料は動いている
繰入金も動いている
総務費も見直されている

だが制度そのものを支える納付金はほとんど変わっていない

光里:「あ」
影乃:「どうしました?」
光里:「なんか分かったかも」
影乃:「珍しいですね」

光里:「失礼だな」
陽菜乃:「珍しいね」
光里:「母さんまで」

光里は資料を指差した

光里:「これってさ」
光里:「後期高齢者医療そのものを変えたんじゃなくて」
光里:「周りを調整したってことじゃない?」

その場が少し静かになった
影乃が資料を見直す
影臣も確認する

影臣:「その見方は自然ですね」
影乃:「そうですね」

影乃はゆっくり頷いた
全てが理解できたわけではない

けれど……ばらばらだった数字が少しずつ繋がり始めていた

まだ完璧ではありません
工程の全てが見えているわけでもありません
ですが確かに形にはなってきました

改善された部分
維持された部分
支えるために残された部分

それらが組み合わさって、今の予算が出来上がっています

完成とは突然現れるものではありません
積み重ねの先にあるものですわ

影乃:「残るのは……」
光里:「最後のまとめだね」

陽菜乃:「私はその時に理解する予定」
光里:「その予定、毎回失敗してる気がする」

日ノ出家の資料読みは、いよいよ最後の段階へ入ろうとしていた

ここまでの担当:リオノワール

窓の外は、いつの間にか薄暗くなっていた
昼間の熱気は少しだけ和らぎ、風が網戸を揺らしている
日ノ出家の予算会議も、そろそろ終わりに近づいていた

光里:「で、結局どうだったの?」
陽菜乃:「私もそこ聞きたい」
影乃:「今までずっと聞いていたはずなんですけどね」
影臣:「整理してみましょうか」

資料は食卓に広がっている
数字は変わらない
けれど、見え方は最初とは少し違っていた

影臣:「保険料収入は増えました」
影乃:「はい」
影臣:「一方で一般会計からの繰入金は減りました」

光里:「自分のお財布に入るお金が増えたから、補助が減った感じ」
影臣:「そう読めますね」
影乃:「総務費も見直されています」

陽菜乃:「郵便代とか給与とか」
光里:「巨大ロボは出なかった」
陽菜乃:「まだ言ってる」
影臣:「そして制度の中心部分は大きく変わっていません」

影乃は静かに頷いた
最初は不思議だった
保険料が増えているのに予算は減っている

増えたのか
減ったのか
どちらなのか

けれど今は違う
数字そのものよりも
なぜそう動いたのかを見るようになっていた

夕方の空気は少しずつ変わります
昼のままではありません
だからといって、何かが壊れたわけでもないのです

風向きが変わり
湿度が変わり
光の色が変わる

予算も少し似ているのかもしれませんね

変化そのものは、良いことでも悪いことでもありません
まずは何が変わったのかを見ること
それが大切なのでしょう

光里:「なんかさ」
影乃:「はい」
光里:「最初は減ったって聞いて、悪い話かと思ったんだよね」
影乃:「私も少しそう思いました」

陽菜乃:「私は最後までよく分からなかったけど」
光里:「そこはブレないな」
陽菜乃:「才能かもしれない」
影臣:「才能の使い方としては少し難しいですね」

光里が笑う
影乃も少しだけ笑った
大きな発見があったわけではない

誰かが劇的に成長したわけでもない
何かを変えたわけでもない

ただ……分からないものを見て、少しだけ理解に近づいた

それだけだった
でも、それで十分なのかもしれない

影乃:「数字って不思議ですね」
影臣:「そうですね」
影乃:「見た瞬間と、読み終わった後で印象が変わります」

影臣:「人の話に少し似ています」
光里:「お父さん、また深いこと言ってる」
陽菜乃:「放っておくと一時間くらい続くよ」

影臣:「そこまでは話しません」
光里:「否定弱いな」

窓の外で風が吹いた

昼から夜へ
夏から秋へ
今年から来年へ

同じように見えても、世界は少しずつ形を変え続けている
後期高齢者医療の予算も、その流れの中にある一つなのだろう
思った通りにはなりませんでした

最初の印象とも違いました
でも悪いことばかりでもありませんでした
数字は変わりました

けれど変わらない部分も残っていました
だからきっと、また次の年も続いていくのでしょう

光里:「よし」
影乃:「何ですか?」
光里:「私は理解した」
陽菜乃:「私も理解したことにする」

影臣:「それで良いのですか?」
光里:「大丈夫大丈夫」

影乃:「本当に大丈夫でしょうか……」
窓の外の風は、静かに季節を運んでいた

そして日ノ出家の夜も、いつも通りに更けていくのだった

ここまでの担当:アメリア

いやー、お疲れさま!

数字ばっかり追いかけてたのに、気付いたら家族の話になってた気がしない?
あーしはそういうの結構好きなんだよね

分からないから調べる
迷うから考える
そして少しだけ前に進む

今回の曲は、そんな日ノ出家の時間を歌った一曲!

強がってるくせに不安だったり
分かったフリして実は分かってなかったり
でも最後にはちゃんと向き合おうとしたり

そんな気持ちを詰め込んでみたっしょ!

それでは聴いてください。

『まだ動いてるじゃん』


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