【君が星に願うなら、僕は君に願う】第2章 「はいを積み上げる、無音の会話」
第2章テーマは、イエス誘導法(Yes-Set technique)
イエス誘導法は【「はい」と答えやすい質問を続けることで、相手を肯定的な気分に誘導する方法】です
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第2章 「はいを積み上げる、無音の会話」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
「今日の空気、澄んでるよね?」
一誠は、まだほのかの隣に並んで座ると同時に声をかけた
ほのかは、いつものように無表情のまま、小さく首を縦に動かす
「やっぱり、そう思うよな! それに、星は毎日違う顔をしてるよね?」
また頷く
「夏はやっぱり、星が一番輝いてるよな?」
さらに小さく、コクリ
一誠は頷きをもらうたび、ノートに「Yes」マークを勢いよく書き込み、そのページはあっという間に「✓」で埋め尽くされていく
「よし、これで三つ目の“はい”だ…」
自分の中で何かのゲームのように数を数えながら、達成感に浸る
その横でほのかは、地面に落ちた小さな葉を拾い、星のように見える小さな穴を見つめていた
「葉っぱも、星のかけらに見えるね」
と、ほのかがぼそりとつぶやく
「そうだよな! やっぱり星は特別だよな!」
自信満々に返す一誠に、ほのかは微妙な間を置いて、また頷く
「ほら、やっぱり同意してくれるじゃないか…!」
一誠の心拍は、時計の秒針より早くなっていた
普段なら想定外の変動に慌てるはずが、今日はそれすら嬉しく思える
「君は…いや、君も…交番の短冊を見て、願いごとを書きたくなるよね?」
「……」
しばしの沈黙
「ね? 書きたいよね?」
また沈黙が続くが、ほのかはやがて、ほんの少しだけ、首を縦に動かした
「ほら! やっぱりな!」
一誠の瞳がさらに輝きを増す
しかし、その光は少し狂気を帯び始めていた
「これは予定通り…いや、それ以上だ!」
ノートに「大成功」の文字を書き、ページを閉じる音に妙な満足感が漂う
ほのかはそんな一誠を横目に見つめ、「空に雲が増えてきた」と小さく言った
一誠は聞こえないふりをして、再び質問の準備を始める
「明日もこの時間に会えるよね?」
また頷きがもらえた瞬間、一誠は一気に息を吸い込む
「よし…これで四連勝…!」
夕暮れの公園に、質問を繰り返す男と、頷き続ける少女のシルエットだけが、滑稽なくらい真剣に浮かんでいた
「ところで、君も思うだろ? 交番の笹、もっと装飾が必要だよね?」
一誠の声が、夜風に混ざって高鳴る
ほのかは少し考える素振りを見せ、相変わらず小さくコクリと頷いた
「やっぱりな! これはもう確信に近い…!」
一誠はノートを開き、チェックマークを一つ、二つ、三つ…と増やしていく
もはやノートは質問と「Yes」だらけの謎の暗号文のようだ
「短冊をもっと追加して、さらに星飾りを増やすのは、絶対にいいことだよな?」
ほのかはまた無表情に、ゆっくりと頷く
「……ふふっ、完璧だ」
一誠はポケットから色とりどりの短冊を取り出し、ひとつずつ並べ始める。
「これが、一誠式・共感ステップ法…!」
自分だけに通じる技名を口の中で呟く
一枚ずつ並べながら、一誠は急に顔を上げる
「君も一緒に並べたいよな?」
一瞬、ほのかの目が薄く瞬き、小さく頷く
「はい! よし、作業スタートだ!」
一誠は小学生の工作発表会のようなテンションで、短冊を空中に舞わせる
ほのかは、その中から一枚を無言で拾い、静かに手に取った
「ほら、そうそう! やっぱり協力的だな!」
一誠の目が、まるで七夕の星のように輝いている
ほのかは拾った短冊を見つめたまま、「風が強くなるよ」とだけ呟く
一誠は聞き流し、満面の笑みで次の質問を放つ
「じゃあ、来週の七夕、また会えるよね?」
いつも通りの頷き
「そうだよな! 予定通り、予定通り!」
一誠は、今にも踊り出しそうな勢いで短冊を笹に結び始める
その姿は、交番の前で一人狂喜する変質者にしか見えない
「これで君との信頼度は…120%だ!」
時計を見て頷く一誠。しかし、その秒針はわずかに遅れを始めていた
ふと、ほのかが空を見上げたまま口を開く
「3日後、あなたは自分を嫌いになるよ」
「……え?」
一誠の手が止まる
「な、なにを…それは、どういう意味だ?」
ほのかは答えず、風に揺れる笹の葉音だけが夜に響いた
「はは、冗談だよな? なあ?」
笑いながらも、ノートをぎゅっと握りしめる一誠
「……わからないなら、いいよ」
ほのかはそれだけ言うと、短冊を一枚手にしたまま、また無言で立ち去ろうとする
「待って! まだ質問が…!」
必死に呼び止めようとするが、ほのかはただ、淡い光に溶けるように歩みを進める
夜空の星々が一誠を見下ろす中、チェックだらけのノートがパラリと風にめくられた
そのページには、小さく「予定通り」とだけ書かれていた
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↓最後に、第2章のイメージ楽曲とトリックアートの解説をお楽しみ下さい↓
