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【僕は狂ったさくらが好きです】第5章 「終わる前提……じゃない」

第5章テーマは、自己概念脅威活性(Self-Concept Threat Activation)
自己概念脅威活性は【人は「自分はこういう人間だ」という自己イメージ(自己概念)を持っています。それが揺らぐと強い心理反応が起き、活性化とは、その自己概念を揺らす問いを投げること】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第5章 「終わる前提……じゃない」をイメージ楽曲と共にお楽しみ下さい


↓第5章のイメージ楽曲↓

前回のあらすじ

最近、さくらはよく隣にいる

約束はしていない
でも放課後になると、自然と一緒に下校している

今日も並ぶ
前より距離が近い

今度は袖を掴まれない
掴まなくても、離れない

信号が赤になった時

「ねえ湊」

少し間

「私さ……」

言葉を探す顔

「もし今、誰かに告白されたら……」

僕は答えない

「どうすると思う?」

試す声
でも以前みたいに鋭くない

「断るだろ」

さくらが止まる

「なんで?」
「恋を終わらせたくないから」

風が止まる

「は?」
「どういう意味」
「そのまま」

さくらは笑おうとする

「私が今、誰か好きみたいに言わないでよ」
「違うの?」
「違う……」

言い切らない
青になる
歩き出す

「ねえ……湊はさ」
「本当に恋は終わらないと思ってるの?」
「思ってない」

即答

さくらが振り向く

「え?」
「恋が終わる時は確かにある」

少し間

「でも、終わる前提で恋は始めない」

さくらの歩幅が乱れる

「それ……どう違うの?」
「覚悟の向き」
「何それ、難しい」

僕は肩をすくめる

「終わる準備するか、続ける準備するかの違い」
「準備って言うな」
「好きだろ準備」

さくらがむっとする

「好きじゃないよ」
「失恋対策ノート作ってたの誰だっけ?」
「……あれは統計」
「すごいグラフだった」
「やめて」

さくらが顔をしかめる
少し赤い

「私……さ」

声が低い

「失恋するの、怖い」

初めてはっきり言う
僕はすぐに返さない

「怖くないふりしてただけ……かも」

さくらは地面を見る

「最高とか言ってたけど……」

小さく笑う

「ほんとは……すごく怖い」

僕は言う

「それでいいだろ」
「よくない」
「なんで?」
「怖いって思ったら、弱いじゃん」
「弱いとダメなの?」

さくらが顔を上げる
何も言わない

「さくらの喪失感ってさ」
「傷つかないって意味じゃなかっただろ」

さくらの呼吸が少し浅くなる

「守ってただけ」
「……何を」
「自分の心を」

沈黙
横断歩道の白線が目に入る
僕は一歩だけ距離を詰める

触れない
でも逃げ道の少ない距離

「湊……はさ」

小さな声

「恋は終わらないって、言い切れる?」

試しじゃない
確認でもない
覚悟の前の問い

「いや、言い切れないよ」

さくらが目を見開く

「え?」
「終わるかもしれない」

少し間

「でも、終わる前提では絶対に好きにならない」

さくらは視線を落とす
長い沈黙
それから、小さく笑う

「……ずるい」

今回は、防御の笑いじゃない

「私の前提……全部崩れる」

僕は答えない

ただ、もう半歩詰める
触れない
でも、離れない

「……ねえ」

さくらの呼吸が浅い

「私、今……」

言葉が止まる
ほとんど答えは……出ている
でも、まだ告白はしない

信号がまた赤になる
僕たちは、並んだまま止まる

終わる前提じゃない時間が、少しだけ長く続いている

「私、今……」

その言葉の続きは、すぐには出なかった
風の音だけがある

僕はさくらを見る
逃げる素振りはない
強がる顔でもない

ただ、少しだけ呼吸が浅い

「ねえ、湊」
「うん」
「もし……さ」

少し息を吸う

「私が、湊と付き合って……」

言いながら、視線が泳ぐ

「そのあと、別れる状況になった後……」

そこで止まる
前なら、この先は決まっていた
でも今は、決まっていないようだ

「痛くなるから別れたくないって言ったら……どうする?」

僕は少し考える

「分からない」

さくらが目を見開く

「え」
「そのときの……僕次第」
「ずるい」
「でも……」

少し間

「最高って言わなくていい」
「痛いなら、痛いでいい」

沈黙

さくらの指先が、わずかに震える
僕は一歩近づく
今度は、触れる

指先が、彼女の手に触れる

もう……逃げない

「さくら」

名前を呼ぶ

「僕は、終わる前提では絶対相手を好きにならない」
「確かに恋は、終わるかもしれない」
「でも……それでも……」

はっきり言う

「さくらが好きだ」

風が止まる
さくらは俯く
長い沈黙

それから、小さく笑う

「……私さ」

目を上げる

「失恋の準備なんてしないよ?」

涙はない
でも、冗談でもない

「耐えないで好きになるの、初めてだから」

少し間

「ずるいよね……湊」

声が柔らかい

「私も……」

ほんの少し、握る力が強くなる

「好き」

その言葉は、静かだった
でも、逃げではなかった。
しばらく、手を繋いだまま立っている

さくらが、急に顔を上げる

「でも……さ」

いたずらっぽい目

「三ヶ月後に恋が終わる状況になったらどうする?」

最後の癖
僕は即答する

「僕は君を振らない」
「絶対?」
「絶対だ」

さくらはじっと僕を見る
数秒
それから、満足そうに笑う

「……合格」

そして、少しだけ顔を赤くして言う

「耐えないで好きになるの……悪くないかもね」

夕暮れの帰り道

隣にいる距離は、前と同じくらいだ
でも……今までとは意味が違う
さくらはもう、傷つく準備の話をしない

代わりに、こんなことを言う

「ねえ」
「今日ってさ、まだ終わらないよね?」
「帰るだけだろ」
「そうじゃなくて」

少し黙る

「この感じ……最高❤」

僕は答えない
ただ、歩幅を合わせる

確かに恋は終わるものかもしれない
でも、終わる前提じゃない
そう僕は思う

しばらくして、さくらがふと笑う

「あ、そうだ」
「もし振られたらさ」

僕は眉を上げる

「言わないからね、最高って」
「言わせない」
「何それ」

笑いながら、手をぎゅっと握る

家の前

手を離す

でも、さっきまでの温度は残っている

「湊」
「うん」
「これからも……よろしくね」
「努力する」
「努力かよ」

笑う
ドアが閉まる
静かな夕暮れ

告白は終わり、僕たちは付き合うようになった

「僕、相沢 湊には、好きな人がいる」

その子は家が隣同士で、兄妹当然に育った
朝は同じ時間に家を出て、帰り道も自然と並ぶ

彼女は狂い桜のようだけど……僕はそんな狂ったさくらが好きです

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