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【師匠は女形・弟子は筋肉女子】第3章 「恋するな、って言われたら」

第3章テーマは、カリギュラ効果(Caligula Effect)
カリギュラ効果は【「ダメ」と禁止されると、かえってその対象に興味や関心が高まってしまう心理現象】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第3章 「恋するな、って言われたら」をイメージ楽曲と共にお楽しみ下さい

前回のあらすじ

「“禁止”すると、かえって気になる――そういうことなんですね!」

演劇部の稽古終わり。私はノートに何やらぐるぐる書き込みながら、澄人先輩の言葉に深くうなずいていた

今日のテーマは“恋の抑制”。先輩は後輩男子に「この話、誰にも言っちゃダメよ」と微笑みかけた直後、相手が赤面していた

「……ダメって言われたから、気になっちゃったのかも」

私は、手を止めて呟いた

(つまり、“ダメ”って言えば、相手はこっちを意識する。恋って、奥が深い……!)

翌日。私は自分の席で、ついに“ある作戦”を実行することにした

1時間目が終わった直後。私は教室の前に立ち、クラス全体に向かって大声で宣言した

「えーっ、今日から、男子との恋愛は禁止です!!」

「……は?」

「理由は言えません! でも絶対、誰も私に恋しないでください! これは命令です!」

クラスが凍りついた

「え……えっ!? 自意識過剰なの!?」
「何の宣言!? 新手のギャグ!?」
「誰も高梨に告る予定ないけど……逆に気になる……」

……手応えあり

「これは実験だ。“禁止”されると、逆に恋しちゃうって……心理的に、あるらしいぞ……!」

私は一人ニヤリと笑いながら、教室の隅に戻った
すぐに数名の男子がざわついている。中にはチラチラとこちらを見てくる者もいる

(……作戦、成功か!?)

昼休み。私はさらなる効果を狙って、追加の行動に出た

「……あ、今私のこと見ました? それ、禁止です」

クラスの男子に向かって、意味深に言う
彼は戸惑いながら「いや、見てないけど……」とつぶやいたが、明らかに意識し始めている

その直後――

バンッ!

私は机を叩き、隣の女子を振り向かせた

「ごめん、ちょっとテンション上がってきた」

「怖いんだけど!? 何の修行してんの!?」

午後の授業中も、“禁止ワード”をさりげなくばらまいていった

「ねえ、ノート見せて」
「ダメ。禁止だから」
「……え、なんで?」

「私の手、触らないでね」
「いや、触ってないけど!? 触れる位置にすらいないけど!?」

「視線合わせちゃダメだからね」
「……こっちが困惑してるよ……」

(……完璧。みんな混乱してる。でも、そこが狙いだ)

澄人先輩の言葉がよみがえる

『“禁止”されると、人は本能的に逆らいたくなるの』

(……つまり、今私は逆に“恋される体勢”を完全に整えている!)

自信に満ちあふれていた私は、放課後、演劇部の部室で澄人先輩に報告を始めた

「……で、全男子に『禁止』って言ったら、なんかざわついてて……これ、たぶん全員、私のこと好きになってますね!」

「……ふふ、それはすごい戦果ね」

澄人先輩は静かに紅茶を口に運びながら、私の熱弁を聞いていた

「でもね、梓。あなたが“禁止”って言ってる間は……」

「間は?」

「誰かがあなたに“触れる”ことも、“見つめる”ことも、“好きだ”と伝えることも――全部、遠ざけてるのと同じよ?」

「え……?」

紅茶を持つ先輩の指先が、一瞬だけさびしそうに見えた
私は、自分で撒いた“禁止”という言葉が、ほんの少し、距離を作ってしまっていたことに気づく

(あれ……もしかして私、間違ってる……?)

けれど私は、それ以上言葉を出せなかった

だって――
ほんの一瞬、先輩が誰かと話す姿を見たとき、自分でもおかしいくらい、胸がモヤモヤしたのだから

(……禁止って、もしかして“自分”にも効いてる?)

私は静かに自問しながら、部室のドアをそっと閉めた

次の日の朝。私は正面玄関で深呼吸しながら、自分を叱咤していた

「……今日も“禁止”で攻めるぞ、私!」

勢いよく教室に入った瞬間、隣の席の男子があくびをした

「……それ、禁止です」

「いや、俺あくびしただけだけど!?」

さらに、後ろの席の男子がペンを落とす

「それも……禁止」

「何が!? ペン落としただけなんだけど!?」

「拾わせて“ドキッ”とさせようとか、そういうの、禁止!!」

「考えすぎだよ!!!」

すでに“禁止キャラ”として恐れられている気もするが、気にしない

この作戦は、“誰かに恋される”ためのものなのだから

ただ――
昨日からずっと、心の中でもうひとつの声が囁いている

(私、本当にこれでいいのかな……?)

禁止禁止とうるさく言いながら、実は誰かの視線を探している自分がいた

昼休み。私は購買でパンを買い、ベンチに座ってもそもそと食べていた
と、その時

「隣、いいかしら?」

優雅な声。紅茶の香り。振り向けば、澄人先輩

「……はい。禁止じゃないです、どうぞ」

「ふふ、厳しいルールが少し緩んだようね」

「いや、今日から“昼食時は恋愛禁止除外”ってことにしたんで……一時的に」

「それって、“恋してほしい時間帯”ってこと?」

「ち、違います! ご飯に集中するためです!」

心臓がばくばくしているのが、自分でもわかる
視線を合わせたらアウトな気がして、私はパンを見つめ続けた

「……梓、あなたって、“好きにならないで!”って言っておきながら……すごく、“好きにさせたがってる”のよね」

紅茶を口にしながら、澄人先輩がふいに言った

「そ、そんなことないですって! 私はただ、“禁止すれば気になる”っていう理論を……!」

「じゃあ、私が言ったらどうする?」

「えっ?」

「高梨梓さん。あなたのこと、好きになっちゃダメよ」

その瞬間、パンを丸のみしかけてむせた

「げほっ、げほっ、な、何言って……!」

「“禁止”されると、気になってしまうんでしょ?」

先輩の微笑が、完全に“いつもの演技”と違っていた

(……やばい、これは……)

言葉が出ない。心臓が変なリズムで動いてる

私は立ち上がり、逃げるように教室へ戻った
でも、教室の扉を開ける前で、立ち止まってしまった

(“好きになっちゃダメ”って、言われたのに……)

なんで、こんなにドキドキしてるんだろう

自分が一番、禁止できてないじゃん

放課後、部室

「……先輩。ちょっとだけ、いいですか」

私の声はいつもより小さかった

「ふふ、なぁに? また“禁止”したいことでも?」

「いえ、あの……禁止、やめます」

「まぁ」

「なんか、苦しかったし。自分にウソつくのって、向いてないなって」

私は拳を握って、自分の言葉を絞り出すように続けた

「あと……私、先輩に禁止されると、なんか、ほんとにダメになりそうで……!」

「ダメになっちゃうの、私のせい?」

「たぶん……先輩、ズルいです」

「ズルくていいのよ。あなたが“本当の気持ち”に気づくなら」

その言葉と同時に、澄人先輩の指先が、私の頬にふれた

禁止されてたものが、全て許されたような、そんなやさしい温度だった

「……好きになっても、いいですか」

「ダメって言っても、もう止められないでしょう?」

私は、目を閉じた

その日、私の“禁止令”は、完全に解除された

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↓第3章オマケを動画にて公開 気になる方はcheck↓


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