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26年7月17日:KSC 未来は今日の一歩から 担当:ヘリテージ・ループ(Heritage Loop)

皆さん、ようこそお越しくださいました
ヘリテージ・ループ(Heritage Loop)ジュノリハです

今日のお話は、FP資格の勉強がテーマです
でも、難しい言葉を覚えるだけのお話ではありません

家族が笑って、少し考えて、また笑う
その何気ない時間の中で、未来を見つめる方法が少しずつ形になっていきます

FPの六つのステップも、誰かの暮らしに寄り添うために生まれた流れです
一つひとつを物語と一緒に歩いていけば、きっと自然と心に残ると思います

それでは日ノ出家の、少し賑やかで、少し温かい一日をご覧ください

朝の日ノ出家
食卓には湯気の立つ味噌汁と焼き魚が並んでいた

陽菜乃:「ねぇみんな!」
光里:「お、朝から元気だね」
陽菜乃:「今日は人生設計するよ!」
光里:「……はい?」
影臣:「人生設計……ですか?」
影乃:「突然ですね」
陽菜乃:「いいじゃん。なんか面白そう!」
光里:「面白そうで始める話なの?」
陽菜乃:「人生なんて勢い!勢い!!」
光里:「その勢いで財布なくした人が言う?」
陽菜乃:「あれは事故!」
影臣:「先週でしたね」
陽菜乃:「細かいこと覚えてるなぁ」

食卓に笑いが広がる
笑い声はいつも通りだ
でも……少し違ったのは、そのあとだった

影臣:「人生設計……私は、少し興味があります」
光里:「お父さんが食いついた」
陽菜乃:「でしょ!でしょ!!」
影乃:「人生設計という言葉でしたら……FPに似た考え方があります」
陽菜乃:「FP?」
光里:「資格のやつ?」
影乃:「はい。ファイナンシャル・プランニングです」
陽菜乃:「おぉ、急に賢そう」
光里:「でも何するの?」
影乃:「将来の目標や生活について、一緒に整理して考えるものです」
陽菜乃:「整理かぁ」
光里:「家計簿みたいな?」
影乃:「それも一部ですが、それだけではありません」
影臣:「最初は何から始めるのでしょう」

影乃:「最初は……相手との信頼関係を作ることです」
光里:「いきなり計算じゃないんだ」
影乃:「はい。何を相談するのか、お互いの役割は何か。それを確認するところから始まります」
陽菜乃:「なるほどね」
光里:「確かに知らない人に財布の中身は話したくない」
影臣:「信頼が先ということですね」
影乃:「そう考えると自然だと思います」

答えを急ぐ人はいなかった
それも少し珍しかった

陽菜乃:「じゃあさ!」
光里:「出た」
陽菜乃:「今日から私たちも練習しよう!」
光里:「もう始まるの?」
陽菜乃:「まずはよろしくお願いします!」

陽菜乃が勢いよく両手を前に出した

光里:「家族なのに改めて?」
陽菜乃:「いいから!いいから!!」

光里は笑いながら手を重ねる
影臣も穏やかに手を添えた
少し遅れて、影乃も静かに加わる

影臣:「改めてよろしくお願いします」
影乃:「よろしくお願いします」
光里:「なんか照れるね」
陽菜乃:「こういうの大事!」

座る場所は昨日と同じ
朝ご飯も変わらない

でも今日は、食べる前に手が重なった

本人たちは気にしていない
少しだけ始まり方が変わった

その変化は、小さい

だから、まだ誰も気付いていなかった

朝食を終えた食卓には、四枚の紙と一本ずつのペンが置かれていた

陽菜乃:「はい! 次は将来の目標を書きまーす!」
光里:「急に授業っぽくなった」
影臣:「目標とは、どの程度先のことでしょうか?」
陽菜乃:「そのへんは自由!」
影乃:「自由すぎると、かえって書きにくいかもしれません」
陽菜乃:「じゃあ、欲しいものでもいいよ!」
光里:「新しいバッグ」
影乃:「早いですね」
光里:「こういうのは勢いでしょ」
陽菜乃:「さすが私の娘!」
影臣:「お二人とも、人生設計から少し離れていませんか?」
陽菜乃:「欲しいものも人生の一部だよ」
影臣:「否定はできませんね」

光里は迷わず紙へ書き込んだ
陽菜乃も、その隣で大きな文字を書いている
影臣はペンを持ったまま止まり、影乃は白い紙を見つめていた

書ける人から書いた
正しい順番ではないかもしれない
でも、空白にはその人なりの理由が残る

光里:「お母さん、何て書いたの?」
陽菜乃:「毎日楽しく暮らす!」
光里:「雑だけど強い」
陽菜乃:「光里は?」
光里:「お金に困らない生活」
影乃:「少し現実的になりましたね」
光里:「バッグだけじゃ怒られそうだったから」
影臣:「誰も怒ってはいませんよ」
陽菜乃:「お父さんは?」
影臣:「家族が健康で、安心して暮らせることです」
光里:「模範解答だ」
影臣:「本心でもあります」
陽菜乃:「影乃は?」

影乃:「……まだです」
光里:「珍しいね。影乃なら十個くらい書きそうなのに」
影乃:「考えれば考えるほど、どこまでが本当に望んでいることなのか分からなくなってしまって」
陽菜乃:「じゃあ、今すぐ決めなくてもよくない?」
影乃:「それでよいのでしょうか?」
陽菜乃:「白紙も答えでしょ。まだ決まってないっていう」
影臣:「無理に形を整える必要はないと思います」
影乃:「……そうですね」

影乃は何も書かなかった
ただ、紙の右上に小さく日付だけを記した

目標は増えなかった
空白も埋まらなかった
それでも、何も残らなかったわけではない

影臣:「FPが情報を集める際は、金額だけを確認するのでしょうか?」
影乃:「いいえ。収入や資産のような数字で表せる情報だけではありません」
光里:「数字じゃない情報もあるの?」
影乃:「価値観や希望、家族への思いなどです」
陽菜乃:「じゃあ私の『毎日楽しく』もちゃんと情報?」
影乃:「はい。定性的情報に当たると思います」
陽菜乃:「ほら、雑じゃなかった!」
光里:「奇跡的にね」
影臣:「数字で表せるものは、定量的情報ということでしょうか?」
影乃:「はい。収入、支出、資産、負債などですね」
光里:「じゃあ、数字と気持ちを両方集めるんだ」
影乃:「そのうえで、財産の目標や生活上の目標を明確にします」

陽菜乃:「でも、影乃みたいに決まらない人もいるよね」
影乃:「そうですね」
影臣:「決まっていないことも含めて、話を聞くのでしょう」
影乃:「おそらく、それが必要なのだと思います」
光里:「じゃあ今日の成果、三人分と白紙一枚」
陽菜乃:「十分!十分!!」
影乃:「白紙を成果に含めるのですか?」
陽菜乃:「日付を書いたでしょ。昨日の白紙とは違うよ」

影乃は自分の紙を見た
返事はしなかった
けれど、その紙を捨てずにノートへ挟んだ

全部は決まらなかった
分からないものは、分からないままだった
ただ、残すことはできた

それで良かったのかもしれない

陽菜乃:「よし! 目標も書いたし終わり!」
影乃:「まだ途中です」
陽菜乃:「えっ?」
光里:「もう終わった気でいた」
影臣:「ここから先があるのですね」

影乃は四枚の紙を並べた
その横へ、白紙を一枚置く

光里:「その白紙いる?」
影乃:「必要です」
陽菜乃:「何も書いてないよ?」
影乃:「書いていないことも情報です」
光里:「なるほど……?」
影乃:「前回は目標を書くことが目的でした。でも今回は、その目標が今の生活で実現できるかを考えます」
影臣:「現状を分析する段階ですね」
影乃:「はい」

状況は変わった
目標を集める時間は終わった
次は、集めた理由を整理する段階だ

影乃:「FPでは、集めた情報を基に現在の状態を分析します」
陽菜乃:「何を分析するの?」
影乃:「主に四つです」
光里:「テストみたい」
影乃:「キャッシュフロー、バランスシート、保障や補償、それから税金です」
陽菜乃:「一気に難しくなった!」
光里:「もう頭から煙出そう」
影臣:「一つずつ整理すれば理解できるでしょう」

影乃はノートへ四つの項目を書いた

影乃:「例えば、キャッシュフローはお金の流れです」
陽菜乃:「入るお金と出るお金?」
影乃:「そうです」
光里:「それなら分かる」
影乃:「バランスシートは、今持っている資産と負債を整理します」
陽菜乃:「家とか貯金とか?」
影乃:「はい。反対に借入金なども確認します」
影臣:「現状を知るためですね」
影乃:「そうしないと、改善案が現実的か判断できません」

順番には意味がある
原因を知らずに解決策を作れば……再現できない

光里:「保障と補償って違うの?」
影乃:「保障は生命保険など、人を守る仕組みです。補償は損害保険のように損害を補う仕組みです」
陽菜乃:「字が似てるから同じだと思ってた」
光里:「私も」
影臣:「最後は税金ですか」
影乃:「はい。生活へ影響するため、確認が必要です」
陽菜乃:「つまり全部調べるんだ」
影乃:「調べる理由があります」
光里:「理由?」
影乃:「目標だけ見ても、実現できるとは限りません」
影臣:「現在地が分からなければ、目的地までの道は引けませんね」
影乃:「その通りです」
陽菜乃:「だから昨日すぐ計画を立てなかったんだ」
光里:「そういうことだったのか」

前回は目標を書いた
今回は現在地を確認した
順番を入れ替えると、判断は曖昧になる

だからFPには手順がある

影乃:「分析が終われば、改善方法を考えます」
陽菜乃:「いよいよ作戦会議!」
影乃:「はい。問題点を改善するためのプランを作成します」
光里:「昨日の紙がここで使われるんだ」
影臣:「書けなかった紙も含めてですね」
影乃:「はい。目標が決まっていないことも、提案を考える材料になります」
陽菜乃:「白紙も無駄じゃなかった」
光里:「お母さんの一言、当たってたじゃん」
陽菜乃:「たまにはね!」

影臣は四枚の紙を静かに重ねた
影乃も、その上へノートを閉じる

まだ提案は作られていない

けれど、何を基に考えればよいのかは見えてきていた

結果だけを見れば、紙が増えただけだ
だが、前回集めた情報と今回の分析は一本につながった

原因が見えれば、次に考えるべきことも決まる

最初から兆候はあったのだ

陽菜乃:「よーし! 計画も考えたし、これで完成!」
影乃:「まだ終わりではありません」
陽菜乃:「またあるの?」
光里:「今回は終わらないねぇ」
影臣:「次は実行ですね」
影乃:「はい。作ったプランは実際に行動へ移します」
陽菜乃:「よし! じゃあ今からやる!」
光里:「早っ」
影乃:「ただし、FP自身がお金を預かったり、勝手に契約したりはできません」
陽菜乃:「あ、やってくれるわけじゃないんだ」
影臣:「あくまで実行を支援する立場なのですね」
影乃:「はい。法律やルールを守りながら、相談した方が実行できるように援助します」
光里:「なるほど。全部やってくれる人じゃないんだ」
影乃:「そこは大切なところですね」

知ることと、やることは少し違う
でも、その違いに気付けたなら、一歩前へ進めるよね

陽菜乃:「じゃあ私、まず家計簿つけてみようかな」

光里と影乃が同時に顔を上げた

光里:「……続く?」
陽菜乃:「うっ」
影臣:「挑戦することは良いことです」
陽菜乃:「お父さんだけ優しい!」
光里:「私は三日目を予想」
陽菜乃:「失礼だなぁ!」
影乃:「私は……五日くらいは続くと思います」
陽菜乃:「影乃まで微妙な応援!」

四人で笑い合う
陽菜乃は少し照れくさそうに笑った

陽菜乃:「でもね、前は『面倒だからいいや』って思ってたんだ」
光里:「うん」
陽菜乃:「今はちょっとだけ、『やってみようかな』って思えた」
影臣:「それだけでも十分だと思います」

結果はまだない
でも、気持ちは前とは少し違っていた
挑戦は、始めようと思った瞬間から始まるのかもしれないね

影乃:「それと、もう一つあります」
陽菜乃:「まだあるの?」
影乃:「最後は定期的な見直しです」
光里:「えっ、一回作ったら終わりじゃないの?」
影乃:「生活は変わります。家族も、収入も、社会の制度も変わることがあります」
影臣:「だから、その時々で確認するのですね」
影乃:「はい。同じプランが、ずっと最適とは限りません」
陽菜乃:「じゃあ家計簿が三日で終わっても……」
光里:「終わる前提?」
陽菜乃:「いや、もしもの話!」

影乃:「また始めればいいと思います」
影臣:「続けることも大切ですが、やめてしまった後に戻れることも大切ですね」
陽菜乃:「……それなら私にもできそう」
光里:「じゃあ私も、お金の使い方を少し見直してみる」
影乃:「私は、まだ白紙だった目標を少しずつ考えてみます」
影臣:「私も家族と話す時間を増やしたいですね」
陽菜乃:「なんか、みんな始めるじゃん!」
光里:「お母さんが始めたんでしょ」
陽菜乃:「そうだった!」

また笑い声が食卓に広がる

完璧じゃなくていい
全部できなくてもいい
昨日より少しだけ前を向けたなら、それは立派な変化だよ

誰かが勇気を出すと、その一歩は少しずつ周りへ広がっていく

今日の日ノ出家も、大きくは変わっていない

でも明日には、昨日できなかったことが、一つくらいできるようになっているかもしれないね

物語は以上です
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